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其口
芋蟲と
愛ちやんとは
互に
暫く
默つて
睨ツ
競をして
居ましたが、
終に
芋蟲が
其口から
煙管を
離して、
舌ッたるいやうな
眠さうな
聲で
君曰く、「
我を
愛するかな、
其口を
忘れて
我を
念ふ」と。
彌子色衰へて
愛弛び、
罪を
君に
得るや、
君曰く、「
是れ
嘗て
矯つて
吾が
車に
駕し、
又嘗て
我に
食はすに
其(一〇八)餘桃を
以てせり」
嬉しさうに
絶えず
戯れたり
吠えたりして、
呼吸苦しい
所爲か、ゼイ/\
云ひながら、
其口からは
舌を
垂れ、
又其大きな
眼を
半ば
閉ぢてゐました。