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畫板
彼は
熱心に
書いて
居る
草の
上に
腰から
上が
出て、
其立てた
膝に
畫板が
寄掛けてある、そして
川柳の
影が
後から
彼の
全身を
被ひ
それでも
感心なことには、
畫板に
向うと
最早志村もいま/\しい
奴など
思ふ
心は
消えて
書く
方に
全く
心を
奪られてしまつた。
時は
夏の
最中自分はたゞ
畫板を
提げたといふばかり、
何を
書いて
見る
氣にもならん、
獨りぶら/\と
野末に
出た。
曾て
志村と
共に
能く
寫生に
出た
野末に。
彼は
頭を
上げては
水車を
見、
又畫板に
向ふ、そして
折り/\
左も
愉快らしい
微笑を
頬に
浮べて
居た
彼が
微笑する
毎に、
自分も
我知らず
微笑せざるを
得なかつた。