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畫題
水車は
川向にあつて
其古めかしい
處、
木立の
繁みに
半ば
被はれて
居る
案排、
蔦葛が
這ひ
纏ふて
居る
具合、
少年心にも
面白い
畫題と
心得て
居たのである。
畫題は『
自然の
心』と謂ツて、ちらし
髪の
素裸の
若い
婦が、
新緑の
雑木林に
圍はれた
泉の
傍に立ツて、自分の
影の
水面に映ツてゐるのを
瞶ツてゐるところだ。
出品の
製作は
皆な
自宅で
書くのだから、
何人も
誰が
何を
書くのか
知らない、
又互に
祕密にして
居た
殊に
志村と
自分は
互の
畫題を
最も
祕密にして
知らさないやうにして
居た。