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畫板
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ゑばん
時は
夏の
最中自分はたゞ
畫板を
提げたといふばかり、
何を
書いて
見る
氣にもならん、
獨りぶら/\と
野末に
出た。
曾て
志村と
共に
能く
寫生に
出た
野末に。
彼は
頭を
上げては
水車を
見、
又畫板に
向ふ、そして
折り/\
左も
愉快らしい
微笑を
頬に
浮べて
居た
彼が
微笑する
毎に、
自分も
我知らず
微笑せざるを
得なかつた。
宅の
物置に
曾て
自分が
持あるいた
畫板が
有つたの
見つけ、
同時に
志村のことを
思ひだしたので、
早速人に
聞いて
見ると、
驚くまいことか、
彼は十七の
歳病死したとのことである。