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ふりがな文庫
“
他人
(
ひと
)” の例文
他人
(
ひと
)
のを見てもわかりそうなものだが、自分のは見えないから立派にしているつもりらしい。冬なぞは
嘸
(
さぞ
)
寒いだろうと同情に堪えぬ。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
他人
(
ひと
)
のためには一挙手一投足の労を費やすことなくとも、天下の人々は、争うて彼に対しさらにさらに多くの親切を尽くしつつある。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
私も貴方のことを
他人
(
ひと
)
に言ふ必要は無いのです。必要は無いのですが——どうも其では何となく物足りないやうな
心地
(
こゝろもち
)
が致しまして。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
そりゃ
他人
(
ひと
)
の災難だから、そちら様は痛くも
痒
(
かゆ
)
くもないだろうけれど、芸人が気が腐ったひには慾にも
得
(
とく
)
にも舞台には立てませんよ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「家は自分のものだつて。」重役は自分の大きな鼻を
他人
(
ひと
)
の持ちものだと言つて、指でこつぴどく
捩
(
ね
)
ぢ曲げられたやうにびつくりした。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
「何んにも出来ん者が、
他人
(
ひと
)
と一と並に休みよってどうなるもんでえ!…………休むひまに、道具の名前一つでも覚えるようにせい!」
まかないの棒
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「大将、ちょっとちょっと、
他人
(
ひと
)
にいっちゃあいけませんよ、
極
(
ご
)
く
内
(
ない
)
ですよ、これです、素敵に面白いのです、五十銭奮発して下さい」
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そうなると、そのあいだに競争を生ずるのも自然の道理で、なにか珍奇の品を持ち出して
他人
(
ひと
)
を驚かせようと企てるようにもなる。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし、この儘、この鳥を
他人
(
ひと
)
に渡してしまうのも惜しいような気がしたので、自分で
飼
(
かっ
)
てみたくなった。吉太は私の顔を見ていたが
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「失態も
糸瓜
(
へちま
)
もない。世間の
奴
(
やつ
)
らが何と言ったって……二人の幸福は二人で作る、二人の幸福は二人で作る、
他人
(
ひと
)
の世話にはならない」
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
だから※は
他人
(
ひと
)
の金を右から左へ持って行っただけで、三分にして年三割六分、全く
無償
(
ただ
)
で二割六分(二割六分!)も儲けているのだ。
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
二人の運命を想いやる時には、いつでも羞かしい我の影がつき
纏
(
まと
)
うて、
他人
(
ひと
)
の
幸福
(
さいわい
)
を
呪
(
のろ
)
うようなあさましい根性も
萌
(
きざ
)
すのであった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
競馬に加わる若い者はその妙齢な娘の前で手柄を見せようと争った。
他人
(
ひと
)
の
妾
(
めかけ
)
に目星をつけて何になると皮肉をいうものもあった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
常陸介と山尾とは、疫病の原因を知っているため、かえって疫病が恐ろしく
他人
(
ひと
)
にも増して神社仏閣へ熱心に
参詣
(
さんけい
)
するのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
他人
(
ひと
)
の功徳によりて(但し或る約束の下に)しかすと、これらは皆自ら擇ぶ
眞
(
まこと
)
の力のあらざる先に解放たれし靈なればなり 四三—四五
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
十七の
秋
(
あき
)
に
見
(
み
)
たおつぎの
姿
(
すがた
)
がお
品
(
しな
)
に
能
(
よ
)
くも
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
たことを
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しては、
他人
(
ひと
)
の
噂
(
うはさ
)
も
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
て
時々
(
とき/″\
)
は
逢
(
あ
)
つても
見
(
み
)
たい
心持
(
こゝろもち
)
がした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
みわはみそのを伴れて片野の歌留多会に現れたが、母も娘も好く似た横風で
他人
(
ひと
)
を見降す根生曲りの上に、陰気で誰とも折合はなかつた。
淡雪
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
見ると与八彼自身の子供とは思われないのです。そうかといって、
他人
(
ひと
)
の子供をあれほどまでに大事にするのも変なものだとは思われる。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
他人
(
ひと
)
に同情するなどというのは、けっして
容易
(
たやす
)
いわざでないということを。いい加減な同情などは、これからつつしまなくては。
キャラコさん:03 蘆と木笛
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
七「へえ一枚二十五両ッ……これが一枚あれば家内にぐず/″\いわれる訳はないが、二枚並んでゝも
他人
(
ひと
)
の宝を見たって仕方がないな」
梅若七兵衛
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
これと申しますのも、
嚢
(
さき
)
に申しました通り、
他人
(
ひと
)
様から御覧下されば、何も有せざるに似たれどもすべての物を有するのでございまする。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
もう正月の雑誌に出す物など
他人
(
ひと
)
よりは十日も早く手まわしよくかたづけてしまって、
懐中
(
ふところ
)
にはまた札の束がふえたと思われて
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
他人
(
ひと
)
様だってそンな親切なお方があるンだのに、手前エはどうだ。血のつながった甥じゃアないかよ。ええ? それをさア、姉きへ意地を
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
こんな事なら、わしゃ言うとかにゃならぬことや、仕ておかにゃならんことが沢山沢山あったに——おじいさん、どこまで
他人
(
ひと
)
を
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
今のいままで僕は、
他人
(
ひと
)
を欺き自己を欺き、そしてそのため苦しみ悩んで来たんだが、勿論こんな苦悩なんて安価な下劣なものにすぎん。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
とどのつまり
他人
(
ひと
)
を誑らかしたり、罪に
誘
(
ひ
)
き入れたり、愚弄したりする、あの人間の敵が、あべこべに、まんまと翻弄されたわけである。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「たがいに苦しめ合ったり苦しんだりしてる。
他人
(
ひと
)
を助けようとすれば
疑
(
うたぐ
)
られる。
厭
(
いや
)
になっちまう。どいつも皆人間じゃない。」
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
でまたその
紙片
(
かみぎれ
)
を取り出して、自分のようで
他人
(
ひと
)
のような、長いようで短かいような、出るようで
這入
(
はい
)
るようなという句を
飽
(
あ
)
かず
眺
(
なが
)
めた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
乞
(
こ
)
うて其上に山田と計て死骸をば
泣々
(
なき/\
)
寺へ
葬
(
はうむ
)
りけり
不題
(
こゝにまた
)
其頃の北町奉行は大岡越前守
忠相
(
たゞすけ
)
というて
英敏
(
えいびん
)
活斷
(
くわつだん
)
他人
(
ひと
)
に
勝
(
まさ
)
り善惡
邪正
(
じやせい
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それや、欠伸なんか、あたしの前でしたつてなんとも思やしないけど、
他人
(
ひと
)
がゐる時に、そばではらはらするやうなことを平気でするのよ。
驟雨(一幕)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
他人
(
ひと
)
が自分の用事をしてくれるために、できるだけ自分で自分の用事を運ぶことが、自分の生命の真の要求であることがわからなくなって
おさなごを発見せよ
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
「お母さんくらい可笑しな人はないわ。自分のことはそっちのけにして、いつも
他人
(
ひと
)
のことばかり心配しているんですもの。」
変な男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「ずるいや、あなたは。
他人
(
ひと
)
にばっかり話をさせて。いやじゃありませんか。少しはあなたのことも話して聞かせるもんです」
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
他人
(
ひと
)
はとまれお
前
(
まへ
)
さまばかりは
高
(
たか
)
が
心
(
こゝろ
)
御存
(
ごぞん
)
じと
思
(
おも
)
ふたは
空
(
そら
)
だのめか
情
(
なさけ
)
ないお
詞
(
ことば
)
お
前
(
まへ
)
さまと
縁
(
えん
)
きれて
生存
(
ながら
)
へる
私
(
わたし
)
と
思召
(
おぼしめ
)
すか
恨
(
うら
)
みを
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「笑いおるな、そろそろ参るぞ。よいか。ここにひとり、
白髪
(
しらが
)
あたまの、
他人
(
ひと
)
の頭痛を苦に病むことを
稼業
(
しょうばい
)
にしておるおやじがおると思え」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
他人
(
ひと
)
の思わくとか、今までの習慣とか、少し意地悪い言い方になるが、潜在的利己心とかいうものが、いつでも頭の何処かにあるようである。
抗議する義務
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
他人
(
ひと
)
のうわさをすれば必ず『
彼奴
(
きゃつ
)
は
常識
(
コンモンセンス
)
が乏しい』とか、『あれは事務家だえらいところがある』など評し、
以前
(
もと
)
の話が出ると赤い顔をして
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
青年エリフまたヨブに説く所ありしも効果
少
(
すくな
)
く、ここに
己
(
おのれ
)
の力も
他人
(
ひと
)
の力もヨブを救う
能
(
あた
)
わざるに至って、エホバの声
遂
(
つい
)
に大風の中に聞える。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
自由のこころをもった人は、
他人
(
ひと
)
の自由な心の動きに対して、感じやすいものです。思いやりと、判断とが早いものです。
美しく豊な生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
子供は彼をパパと呼んで、いつも一緒に野良へ出ては、彼の
傍
(
そば
)
で嬉々として遊んでいた。
他人
(
ひと
)
の子だったら、それほど愛情がうつるわけはない。
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
変に気が詰まって、
他人
(
ひと
)
の内へ
泊
(
とまり
)
にでも行ったようで、窮屈で、つまらなくッて、思ってみればその時分から旦那が嫌いだったかも知れないよ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、私が、自分の食べあらした皿を眺めて
他人
(
ひと
)
ごとのように感心していると、むこうの
卓子
(
テーブル
)
から
見識
(
みし
)
らぬ日本紳士が立ってきて
慇懃
(
いんぎん
)
に礼をした。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
若し分かつたと言つたら、吉右衛門は——嘘を
吐
(
つ
)
いたのである。あの文章は
他人
(
ひと
)
に分かる筈がない。なぜなら、私にさへよく分からないのだから。
吉右衛門の第一印象
(新字旧仮名)
/
小宮豊隆
(著)
「自分の手垢で汚したのかもしれないが、その時はなんだか
他人
(
ひと
)
も自分のやうに『日本橋』に思ひをかけてゐるやうに思はれて爲方がなかつた。」
貝殻追放:011 購書美談
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
かの女は
他人
(
ひと
)
のことばかりに思いやりが良くて、自分の息子には一向無関心らしい老紳士が、
粗
(
あら
)
っぽく思えて
興醒
(
きょうざ
)
めた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
未だ二三人あったと覚えているが、随分
妙智麒麟
(
みょうちきりん
)
な奴じゃないか、
他人
(
ひと
)
ばかり結婚させて、自分は
些
(
ち
)
っとも結婚しない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
愛情
(
あいじょう
)
の
伴
(
ともな
)
わぬ
冷
(
つめ
)
たい
夫婦
(
ふうふ
)
の
間柄
(
あいだがら
)
……
他人
(
ひと
)
さまのことは
存
(
ぞん
)
じませぬが、
私
(
わたくし
)
にとりて、それは、
世
(
よ
)
にも
浅
(
あさ
)
ましい、つまらないものでございました……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
自然薯でも、
田螺
(
たにし
)
でも、
鰌
(
どじょう
)
でも、終始
他人
(
ひと
)
の山林田畑からとって来ては金に
換
(
か
)
え、
飯
(
めし
)
に換え、酒に換える。門松すら
剪
(
き
)
って売ると云う評判がある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「また郵便局で
他人
(
ひと
)
の手紙讀んだんやなア、あの郵便局は閑やよつて、何んでも讀みやはるさかい、安心が出けん。」
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ただ
他人
(
ひと
)
の不幸をよろこぶ心から、パーシウスがもしもゴーゴン達との勝負で何かひどい目に遇っていたら、うれしがったような人間ばかりでした。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
他
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
“他人”で始まる語句
他人事
他人様
他人手
他人目
他人眼
他人行儀
他人樣
他人前
他人中
他人任