ひと)” の例文
けだし道衍の秉忠に於けるは、岳飛がくひ関張かんちょうひとしからんとし、諸葛亮しょかつりょうが管楽に擬したるが如く、思慕してしこうして倣模ほうもせるところありしなるべし。詩に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日光を遮断しやだんする鉄塀はひとしく彼女をも我より離隔して、かりの通ふべき空もなし、夢てふもの世にたのむべきものならば、我は彼女と相談あひかたる時なきにあらず、然れどもその夢もはかなや
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
理由もなく何か満ち足りない感じがいつもしていたし、世間からの呪詛じゅそや、子供たちの悩みも思われて、彼の神経はいつも刃物をもって追いけられているにもひとしい不安におびえていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
病なき人の道に入ることのかたきは、富めるものゝ道に入り難きにひとしからむ。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)