ひと)” の例文
ただ今当学校裁縫科の教師たる岡崎総吉と申すひとこそ下田において松陰を宿泊せしめたる旅亭の主人の子なれば、多少承知致しおらんと。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
噂によれば葉之助というひとは、内藤殿のご家中でも昼行灯と異名を取った迂濶うかつ者だということであるが、それが正しく事実ならさような人間を
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「妙なはなしだな。みたところ、さほど金に恬淡てんたんたるひとのようにも思われぬが——」若松屋惣七は、眉を寄せてつづけた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし世の中には分って呉れるひともあるだろうと思うが、人間というものは如何にそれが間違いのないことであろうとも、その場の気持によっては
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こうしたひょんなことになっても、前にもいった通りお神さんは、嬢さまの年をったというだけのおひとだったから何をどう取りなしてくれるでもなかった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ハテ品川しながは益田孝君ますだかうくんさ、一あたまが三じやくのびたといふがたちまふくろく益田君ますだくんと人のあたまにるとはじつ見上みあげたひとです、こと大茶人だいちやじん書巻しよくわんを愛してゐられます
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
乳母 はて、おわかかた母御樣はゝごさまこのやしき内室おかたさまぢゃがな、よいおひとで、御發明ごはつめいな、御貞節ごていせつな。わしは、いま貴下こなたはなしてござらしゃったぢゃうさまをそだてました。
霜兵衛さんだけは感心なえらひとだ。自分の真情は既に嬢様に献げたから、自分は生涯妻を娶らず、永く独身ひとりみで清く送つて嬢様の安寧幸福を神に祈ると云つておるさうだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
瓶破柴田かめわりしばた、鬼柴田ともいわれたひとが、遅れ通しで、ここ何事にも後輩の足下にすべてを先んぜられてしまい、清洲会議でも、足下には一目も二目もおいていたというではないか。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんだかおぬしのお客はわしの知ってるひとのような気がするがな。へ、へ。」
とてもこらえてはおられまいと、師匠も、大方、今日まで、わたくしの江戸下りを、止めていてくれたのでございましょうが、今度、一緒にれて来てくれましたはあのひとも大方、もうわたくしに
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
かのおひと好しと天才との中間にある、得ママの知れない輩なのである。
我が生活 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
明れば享保九年正月三日竹本政太夫たけもとまさだいふの方にては例年の通り淨瑠璃じやうるりかたそめなりとて門弟もんてい中打集まり一しほ賑々にぎ/\しくひと出入でいりも多かりける其頃西の丸の老中安藤對馬守殿あんどうつしまのかみどのの家來に味岡あぢをか勇右衞門と云ふひとありしが政太夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
深川の顔役で香具師やしのほうもやっている木場の甚てえ親分とな、ちょっくらほかのかかり合いで相識しりあいになったのだが、このひとがいってすすめてくださるのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
つまりこりゃ軍人さんだって花も実もあるおひとでなければ、まことの軍人とはいわれない、強いばかりが武士じゃないと下世話によくいうあれと同じでしょう。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
……(婦人連に對ひ)あァ、はァ、姫御前ひめごぜたち! 舞踏をどるをいやぢゃと被言おしゃひとがあるか? 品取ひんどって舞踏をどらッしゃらぬひとは、誓文せいもん肉刺まめ出來できてゐるンぢゃらう。
粥河圖書は年齢としごろ二十六七で、色の白い人品じんぴんひとで、尤も大禄を取った方は自然品格が違います。
ところでその後だんだん調べられたが、その係官の中に杉浦予審判事というたいへん親切そうなひとがいてね、その仁が乃公の聞きもしないことを、べらべら話をしてくれたよ。
不思議なる空間断層 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なるほど、うわさの如く、諸葛亮しょかつりょうは疑い深いひとだ……」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奉行のうちに加わって橋詰から目睹もくとしていた岩沢右兵衛介うひょうえのすけというひとの言に、わが近くに高山豊後守ぶんごのかみなる老士ありしが、この両人を見て、いまだ勝負なき以前
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
乳母 はれ、いおひとや、ほんに其通そのとほまうしましょわいな。ほんに、ま、何樣どのやうよろこばッしゃらう。
愛嬌あいきやうもありなか/\大腹おほつぱらひとです、布袋和尚ほていをしやうえんがあるのは住居すまゐ悉皆みなてらです、こと彼程あれほどるまでには、跣足はだしで流れ川をわたやうあやふい事も度々たび/\ツたとさ、遊ぶ時には大袋おほぶくろひろげる事もあり
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「しかし一体貴下というひとは昼間は何処で何うして暮しているんです」
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
よっくわかったひとだから決してむりなことは言やしないが……マア気のすすまない座敷はドンドン断わって、保養に来たつもりでせいぜいきれいにして遊んでいなせえ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ごく吝嗇しわひと御座ございまして、旦
吝嗇家 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
何という堅いひとだろう。今どき珍しい美しい話だ。その娘さんが見え次第、小僧を馬喰町へ走らせることに相談して、兼久の店では、それから毎日きょうか明日かと女の来るのを待っていた。
父御ててごの相良寛十郎というひとは、見たところ、どういう人であったかな」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)