“人(ひと)” の例文
南洋(なんよう)のあまり世界(せかい)の人(ひと)たちには知(し)られていない島(しま)に住(す)んでいる二人(ふたり)の土人(どじん)が、難船(なんせん)から救(すく)われて、ある港(みなと)に着(つ)いたときでありました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その花(はな)は、のめずり倒(たお)れた老人(ろうじん)の死体(したい)を、笑(わら)つて見(み)おろしているという形(かたち)で、いささか人(ひと)をぞつとさせるような妖気(ようき)を漂(ただよ)わしている。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
味方は十分の勝利を得べきなりと申しけるに、浅井半助とて武勇人(ひと)に許されしものながら、先年久政の勘当をうけて小谷を追出され
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「今日(こんにち)は、」と、聲(こゑ)を掛(か)けたが、フト引戻(ひきもど)さるゝやうにして覗(のぞ)いて見(み)た、心着(こゝろづ)くと、自分(じぶん)が挨拶(あいさつ)したつもりの婦人(をんな)はこの人(ひと)ではない。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
與(よ)四郎(らう)心(こゝろ)をつけて物事(ものごと)を見(み)るに、さながら戀(こひ)に心(こゝろ)をうばゝれて空虚(うつろ)に成(なり)し人(ひと)の如(ごと)く、お美尾(みを)お美尾(みを)と呼(よ)べば何(なに)えと答(こた)ゆる詞(ことば)の力(ちから)なさ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それが人(ひと)の言(い)うように規則的(きそくてき)に溢(あふ)れて来(こ)ようとは、信(しん)じられもしなかった。故(ゆえ)もない不安(ふあん)はまだ続(つづ)いていて、絶(た)えず彼女(かのじょ)を脅(おびや)かした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
けれど斯(か)ふ言ふのが温泉場(をんせんば)へ行(ゆ)く人(ひと)、海水浴場(かいすゐよくぢやう)へ行(ゆ)く人(ひと)乃至(ないし)名所見物(めいしよけんぶつ)にでも出掛(でかけ)る人(ひと)の洒落(しやれ)た口調(くてう)であるキザな言葉(ことば)たるを失(うしな)はない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それと共(とも)に、人麿(ひとまろ)の歌(うた)だと傳(つた)へられてゐないもので、人(ひと)のために代(かは)つて作(つく)つた、この人(ひと)の歌(うた)も非常(ひじよう)にたくさんあるようにおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
さう云ふ人(ひと)に逢(あ)つて過(す)ごす時間が、本当の時間で、穴倉で光線の試験をして暮(くら)す月日(つきひ)は寧ろ人生に遠い閑生涯と云ふべきものである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、いつもなら、人(ひと)にいわれるまでもなく、まずこっちから愛嬌(あいきょう)を見(み)せるにきまっていたおせんが、きょうは何(な)んとしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「なに人(ひと)」とお政は莞爾(にっこり)した、何と云ッてもまだおぼだなと云いたそうで。「お前に構ッて貰(もら)いたいンで来なさるンじゃ有るまいシ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ところで、竹(たけ)の中(なか)から出(で)た子(こ)は、育(そだ)て方(かた)がよかつたと見(み)えて、ずん/\大(おほ)きくなつて、三月(みつき)ばかりたつうちに一人前(いちにんまへ)の人(ひと)になりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
人(ひと)と人(ひと)との間(あひだ)に少(すこ)しでも隙間(すきま)が出来(でき)ると見(み)ると歩(ある)いてゐるものがすぐ其跡(そのあと)に割込(わりこ)んで河水(かはみづ)の流(なが)れと、それに映(うつ)る灯影(ほかげ)を眺(なが)めるのである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風、永井壮吉(著)
鞍上(あんじょう)人(ひと)なく、鞍下(あんか)に馬なく、青葉ゆらぐ台町馬場の芝草燃ゆる大馬場を、投げ出された黒白取り取りの鞠(まり)のように駈け出しました。
(七九)閭巷(りよかう)の人(ひと)、行(おこなひ)を砥(と)ぎ名(な)を立(た)てんと欲(ほつ)する者(もの)は、(八〇)青雲(せいうん)の士(し)に附(つ)くに非(あら)ずんば、惡(いづく)んぞ能(よ)く(名ヲ)後世(こうせい)に施(し)かん哉(や)。
定(さだ)めてあの張作霖(ちやうさくりん)がそんな風(ふう)に相好(さうかう)を崩(くづ)してのけぞり返(かへ)つただらうと思(おも)ふと、その昔(むかし)馬賊(ばぞく)の荒武者(あらむしや)だつたといふ人(ひと)のよさも想像(さうざう)されて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
然(しか)しながら大地震(だいぢしん)になると、初期微動(しよきびどう)でも決(けつ)して微動(びどう)でなく、多(おほ)くの人(ひと)にとつては幾分(いくぶん)の脅威(きようい)を感(かん)ずるような大(おほ)いさの振動(しんどう)である。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其時(そのとき)貴方(あなた)は他(た)の人(ひと)に、解悟(かいご)に向(むか)ひなさいとか、眞正(しんせい)の幸福(かうふく)に向(むか)ひなさいとか云(い)ふ事(こと)の効力(かうりよく)が果(はた)して、何程(なにほど)と云(い)ふことが解(わか)りませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
乳母 はい、御機嫌(ごきげん)よう。……もし/\、あの人(ひと)は、ま、何(なん)といふ無作法(ぶさはふ)な若(わか)い衆(しゅ)でござるぞ? あくたいもくたいばかり言(い)うて。
この説(せつ)を敷衍(ふえん)して日本美術史(にほんびじゆつし)の劈頭(へきとう)にこれを高唱(かうしやう)したものであるが今日(こんにち)においても、なほこの説(せつ)を信(しん)ずる人(ひと)が少(すくな)くないかと思(おも)ふ。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
つまり、一休(いっきゅう)さんは、日(ひ)かげの身(み)となったわけで、そんなことから、大徳寺(だいとくじ)の華叟禅師(かそうぜんじ)のもとに弟子入(でしい)りし、仏門(ぶつもん)の人(ひと)となったわけです。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
なほ曙覽には、『いさぎよき神つ國風(くにぶり)けがさじとこころ碎くか神國(かみぐに)の人(ひと)』や、『天皇(すめらぎ)に身もたな知らず眞心をつくしまつるか我が國の道』
愛国歌小観 (旧字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
『二人(ふたり)だと思(おも)つても駄目(だめ)よ!と云(い)つて、一人(ひとり)だけ立派(りつぱ)な人(ひと)にするんでは滿(つま)らないわ!』と愛(あい)ちやんは可哀相(かあいさう)にもさう思(おも)ひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
火事(かじ)の時(とき)には防火樹(ぼうかじゆ)として非常(ひじよう)に役(やく)に立(た)ち家(いへ)も燒(や)かずに濟(す)み、時(とき)には人(ひと)の命(いのち)すら救(すく)はれることがあることも忘(わす)れてはなりません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
恥(はず)かしながら私(わたくし)は一時(じ)は神様(かみさま)も怨(うら)みました……人(ひと)を呪(のろ)いもいたしました……何卒(どうぞ)その頃(ころ)の物語(ものがた)り丈(だけ)は差控(さしひか)えさせて戴(いただ)きます……。
更(さら)に氣(き)を取直(とりなを)して、暗黒々(あんこく/\)の岩窟内(がんくつない)を照(てら)し見(み)ると、奧壁(おくかべ)近(ちか)くに當(あた)つて有(あ)る、有(あ)る、人(ひと)の骨(ほね)らしい物(もの)が泥土(でいど)に埋(う)まりながら横(よこた)はつて見(み)える。
おもふに、人(ひと)散(ちれ)ば演場(しばゐ)の蕭然(さみしくなる)を厭(いと)ふゆゑなるべし。いづくにか出(いづる)所あらんと尋(たづね)しに、此寺の四方垣(かき)をめぐらして出べきの隙(ひま)なし。
こんなことは、盗人(ぬすびと)のじぶんには、はじめてのことであります。人(ひと)に信用(しんよう)されるというのは、何(なん)といううれしいことでありましょう。……
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「やりましょう。どうせ、人(ひと)のよむものなら、横文字(よこもじ)であろうが、なんであろうが、やれないということはないでしょうから。」
しかし保(たもつ)さんは少時帆足の文を読むごとに心平(たいら)かなることを得なかったという。それは貞固の人(ひと)と為(な)りを愛していたからである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
第一人(ひと)の女房とこんなもん取り交(かわ)しといて、その女房の亭主の前いれいれいしいに見せつけながら、それに対する一言のいい訳もせんと
卍 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
然(しか)しいつの間(ま)にか人(ひと)が遠(とほ)くより見(み)るやうに成(な)つた。行(ゆ)き違(ちが)ふ女房等(にようばうら)は額(ひたひ)に照(て)ら(ママ)れて眠(ねむ)つて居(ゐ)る子(こ)を見(み)て痛々敷(いた/\しい)と思(おも)ふのであつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「人(ひと)を知(し)るは難(かた)くして易(やす)く、自(みずか)ら知(し)るは易(やす)くして難(かた)し、但(ただ)し当(まさ)にこれを夢寐(むび)に徴(ちょう)し以(もっ)て自(みずか)ら知(し)るべし、夢寐(むび)自(みずか)ら欺(あざむ)く能(あた)わず」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彦三郎御長屋中に怪敷(あやしき)人(ひと)有(ある)との事なれば此御家主へ相談は如何(いかゞ)に候はんと尋(たづ)ぬるに權三打笑(うちわら)ひ爰の家主(いへぬし)は店子の中に依怙贔屓(えこひいき)多(おほ)く下の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だから、パラッと頁をくって見て、買わない人(ひと)もうんとあるだろう。自分は、こういうかたで書いた本はこれを最後にしようと思っている。
すずの(種々)御供養(ごくやう)、送給畢(おくりたびをはんぬ)。大風(たいふう)の草(くさ)をなびかし、雷(いかづち)の人(ひと)ををどろかすやうに候。よの中(なか)に、いかにいままで御信用候けるふしぎさよ。
都(すべ)て人(ひと)たる者(もの)は常(つね)に物事(ものごと)に心(こゝろ)を留(とゞ)め、世(よ)に新(あた)らしき事(こと)の起(おこ)ることあらば、何故(なにゆゑ)ありて斯(かゝ)る事(こと)の出來(でき)しやと、よく其本(そのもと)を詮索(せんさく)せざるべからず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
エホバよりまずサタンに向って、「汝(なんじ)心を用いてわが僕(しもべ)ヨブを見しや、彼の如く完(まった)くかつ正しくて神を畏れ悪に遠ざかる人(ひと)世(よ)に非(あら)ざるなり」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その形(かたち)きわめて醜怪なるものなりき。女の婿(むこ)の里は新張(にいばり)村の何某とて、これも川端の家なり。その主人人(ひと)にその始終(しじゅう)を語れり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それで、その當時(とうじ)の人(ひと)が住居(じゆうきよ)した跡(あと)が海岸(かいがん)附近(ふきん)に遺(のこ)つてゐて、かれ等(ら)が食(く)つてすてた貝殼(かひがら)や、魚(さかな)や獸(けだもの)の骨(ほね)などがたまつてゐる所(ところ)があります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ここには四五人人(ひと)がいる。だが一人も女はいない。何んとなく刀気が感じられる。これは武器庫に相違ないよ。随分沢山蔵(しま)ってあるらしい。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又(また)なんじら我(わ)が名(な)のために凡(すべ)ての人(ひと)に憎(にく)まれん。されど終(おわり)まで耐(た)え忍(しの)ぶものは救(すく)わるべし。この町(まち)にて、責(せ)めらるる時(とき)は、かの町(まち)に逃(のが)れよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
鬼面(きめん)人(ひと)を脅(おど)す悪戯(いたずら)っぽい趣味がおありらしい。「まだ生きるよ、死んだらこんどは、神様になって弗(ドル)のおサイ銭を取ってやる」
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○人(ひと)無茶苦茶に後世を呼ぶは、猶(なほ)救け舟を呼ぶが如し。身の半(なかば)は既(はや)葬られんとするに当りて、せつぱつまりて出づる声なり。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
事(こと)に依(よ)つたら、世(よ)の人(ひと)たちの有(も)つてゐる主(しゆ)の御血汐(おんちしほ)で、この身(み)が癒(なほ)るかも知(し)れぬ。血(ち)を思(おも)ふことも度々(たびたび)だ。この歯(は)なら咬付(かみつ)ける。真白(まつしろ)の歯(は)だ。
「あの人(ひと)を殺(ころ)して下(くだ)さい。」——妻(つま)はさう叫(さけ)びながら、盜人(ぬすびと)の腕(うで)に縋(すが)つてゐる。盜人(ぬすびと)はぢつと妻(つま)を見(み)た儘(まま)、殺(ころ)すとも殺(ころ)さぬとも返事(へんじ)をしない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おそれながら、まえもってお願い申しました、小姓頭人(ひと)増しのことにつき、御意を得たき儀があって参上つかまつりました。
先刻(さつき)美(うつく)しい人(ひと)が脇(わき)へ来(き)て席(せき)を取(と)つたが、言葉(ことば)が通(つう)じないことがわかつたところで、今(いま)一人(り)の日本語(にほんご)のよく話(はな)せるお転婆(てんば)さんらしい女(おんな)と入替(いれかわ)つた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
たゞ男(をとこ)を怨(うら)んで呪(のろ)ひ、自分(じぶん)を嘲(わら)ひ、自分(じぶん)を憐(あはれ)み、殊(こと)に人(ひと)の物笑(ものわら)ひの的(まと)となる自分(じぶん)を思(おも)つては口惜(くや)しさに堪(た)へられなかつた。
悔 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
二人(ふたり)は、子供(こども)を抱(だ)いて明(あか)るい通(とほ)りから折(を)れて、暗(くら)い道(みち)を歩(ある)いた。暗(くらい)い所(ところ)に來(き)ても、銀座(ぎんざ)の明(あか)るみを歩(ある)く人(ひと)の足音(あしおと)は聞(きこ)えた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)