ひと)” の例文
ところが、わたしの肚の中では依然として、妻がひとを苦しめるという憤怒の念と、彼女の上を案じる胸騒ぎとが、相争っているのでした。
つまりですね、旦那、やつが、ひとの目の前で四つん這いになったのを見て、癇癪玉を破裂さしちまったんで。
「何うしたい!」四度目よたびめには気軽く訊ねた。「散々ひとを待たして置いて来る早々沈んで了って。何で其様な気の揉めることがあるの? 好い情人ひとでも何うかしたの?」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
清太郎さんもあまりの事に腹を立てて、いくら叔父さんでも主人でも、ひとの物を取上げて燒くといふのは無法だ。若しその梅の千五百十八番が千兩の一番に當つて居たらどうします。
奴さんひとをすっかり骨抜きにしてしまいやがった! 四日目にわたしはさがしに出かけて、居酒屋という居酒屋を覗いて廻っては、いちいちたずねて見ましたが、おりません
お雪の奴、いま頃は何処に何うしているだろう? 本当にかたづいているか。嫁いていなければ好いが、嫁いて居ると思えば心元なくてならぬ。最後のちには自分からひとを振切って行って了ったのだ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
犬っころみたいにひとの目を見ているばかり。