夫人ひと)” の例文
「まあ、」と飛んだ顔をして、斜めに取って見透みすかした風情は、この夫人ひとえんなるだけ、中指なかざし鼈甲べっこうを、日影に透かした趣だったが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五等官夫人チェフタリョワだの、佐官夫人ポドトチナだの……もっともこの夫人ひとは、こんな酷い仕打をなされたかぎり、今後交渉をもつとすれば警察沙汰以外にはありませんがね。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「お察しの通り、あの老婦人、マッケイのお母さんです。僕をきらった夫人ひとです。」
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
成程それではあんな夫人ひとでも私をそれまでに思ってくれるのがわかりましたが、こうなった上のこと。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「でも、大分あの男に御執心の夫人ひともありましたわねえ。」