“ただ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:タダ
語句割合
21.5%
10.3%
9.5%
9.1%
7.4%
7.2%
6.5%
6.5%
2.7%
2.7%
(他:246)16.6%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ただひとつ怪しいのは、この尼僧の入浴時間の甚だ久しいことで、いったん浴室へはいると、時の移るまで出て来ないのである。
しかも其處そこひらめいてゐたのは、いかりでもなければかなしみでもない、――ただわたしをさげすんだ
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
言っておかなかったが、かの女の口のはたのただれが直ったり、出来たりするのは、僕の初めから気にしていたところであった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
かれの任務は、時節のくるまで、世相を不安と頽廃たいはいとに、あとうかぎり、ただらせてしまうことにある。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
併しこの場合、ほかに詮議のしやうもないから、差當つては先づ屋敷中の者どもを集めて問ひただしてみようと云ふのであつた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「はははは。さては、そうした仔細しさいでしたか。世上の説というものは、根をただすと、おおむね、他愛ないものですな」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死を限りと思えば、一生にはたされ易し。一大事と申すは、今日、ただ今の心なり。それをおろそかにして、翌日あることなし。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
勘次かんじただちからきはめて蕎麥そばからつてつひに一ごんかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ゆえにさらに深く立ち入りてその理由をただせば彼の熱心せる理由は必ずしも政治に関係するものでないようなことが出てくる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼らが罪名をただして、その要領を得ざりしは、またうべならずや、何となれば原来罪名の指定すべきものなきを以てなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
やがてまた吹き来し強き順風に乗じて船此地を発し、暮るる頃函館はこだてに着き、ただちに上陸してこの港のキトに宿りぬ。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼はただちにその穴を見出して、蛇のようにもぐり込むと、暗い中であたかの市郎に出逢ったのであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただし歌の意味も文句も、二吏の対話も、暗窖あんこうの光景もいっさい趣向以外の事は余の空想から成ったものである。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『君は此学校の先生ですか?』と、男は先刻さつき訊いたと同じ事を言つた。ただ、「貴方」と言つたのが、「君」に変つてゐた。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かかる種類の本は、安永天明から天保の頃にかけて江戸には汗牛充棟もただならざる程あるが、京阪には比較的少いやうである。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
えん巫山ふざんの雨意よりも濃に、壮は易水の風色よりも烈なる鏡花世界を現出したるはただに一代の壮挙たるのみならず
「鏡花全集」目録開口 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし「武鑑」の成立なりたちを考えて見れば、この誤謬の多いのは当然で、それはまた他書によってただすことが容易である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一、官の学校にては、おのずから衣冠の階級あるがゆえに、ただしく学業の深浅にしたがって生徒席順の甲乙を定め難き場合あり。
ハムレットの、心の底の、いつわりの無いところも、よく聞きただしてみて下さい。決して悪いようには、しないつもりです。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
――一てえ、あいつの宿はどこなんだろう? あしたは、芝居町の方へ出かけて行ってくわしくただしてやらざあならねえ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
室のまんなかに座を占めたところに、行住座臥ぎょうじゅうざがをもいやしくしない、普通ただならぬ武道のたしなみが読まれた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは決して普通ただの農家の娘とは見えなかった。髪は文金高島田に結って間もなく、一筋のほつれ毛も無いので有った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
なお、かし本屋の店頭でもそうだし、ここでの紫の雨合羽に、ぬりの足駄など、どうも尋常ただな娘で、小説家らしい処がない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
斯う思うと、時としては斯うして人間を離れて芸術の神境に出入しゅつにゅうし得るお糸さんは尋常ただの人間でないように思われる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お通は、ふるえあがって、牛の背へしがみついた。そして、丑之助の眉に、ただならぬ出来事が起りそうな気色を見たので、
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先を急ぐことに焦心あせりきっている梅軒の眼には、ただではあり得なそうな二人の刹那の驚きも眼にはとまらないらしく、
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家のうしろには葡萄園があるそうですが、表構えは茶店のような作り方で、ここでは登山者に無代ただで梅酒というのを飲ませます。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
篦棒べらぼうめえ。無代ただで呉れてやるから無代で博士になれ。その代り開業してから診察料を取ったら承知しねえぞ」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「――やっぱり入船だな。原稿がいくら出ても無料ただ原稿では仕方がない。――美佐子君たちは、ところで、どっちかな」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
「なに、徳川家では、おぬしのような者にまで、何十町歩という土地をくれているのか。――それは無料ただか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女房は無銭ただで貰うんだ――娘に……箪笥たんす、長持から、下駄、からかさ、枕に熨斗のしが附いてるんだぜ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
連れてったせた車掌がいい男で、たしかに煙草入を――洋服の腰へ手を当てて仕方をして――見たから無銭ただのりではありません。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし郷土史にくわしい外崎覚とのさきかくさんは、かつて内藤に書を寄せて、この説のあやまりただそうとした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いや、天災は、まだしも。人災を坐視している法はない。ただすべしだ。おれは、匡してやろうと思う」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを証真寺というは、疑獄の真偽をたださんため本人を池に投ずるに、その言真なれば〓これをゆるし偽なれば必ず〓う。
御史ぎょし僧をただすに及びて、僧曰く、年九十余、今たゞ祖父のりょうかたわらに葬られんことを思うのみと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
うぢやろ、然うぢやろ。」とおうなはまたうなずいたが、ただうであらうではなく、まさうなくてはかなはぬと言つたやうな語気であつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
学士がまりかねて立とうとする足許あしもとに、船が横ざまに、ひたとついて居た、爪先つまさきの乗るほどの処にあったのを、霧が深い所為せいで知らなかったのであろう、ただそればかりでない。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
して初めより、如何あらんと疑弐ぎじする日に出でゝ、興趣を感ずべき筈なし、ただに時間と金銭を費すに過ぎず。
研堂釣規 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
元もとただの女であつた人が、高等以上の教育を受け、ある人は哲学をやつたが唯いくらか頭がよかつただけ、或る人は女性解放といふ理論の熱病にかかつただけ
大正東京錦絵 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
「馬鹿な、ねえ君、どうしてそんなユダヤ人根性を出すんだろう! そんなもの、無償ただでくれたっていいんだのに。」
道路や灌漑溝の修繕工事をすると云って、日雇賃を地主から出さして置いて、小作人を無償ただで働かし、それをマンマと自分のものにしてしまった。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
いて道衍の為に解さば、ただれ道衍が天にくるの気と、自らたのむの材と、※々もうもう蕩々とうとう
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
必ずやこれを身にもとづけ、諸を政教にあらわし、以てものを成す可き者は、ただ聖人の学、聖道を去ってしこうしてしたがわず、而してただにこれ帰す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
というのを、為守が聞いて腹を立てて、早速法然へ手紙でそのことの不審をただしてやると、法然は、決してそんなことがある筈はない。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水沼間・水沼・弥努波(または、婆)と三様に、出雲文献に出ているから、「水汲」とただすのは考えものである。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
李は温の所を辞して、ただちに魚家にって、玄機をれて側室にしようと云った。玄機の両親はへいの厚いのに動された。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
信婦人の車に乗じ、ただちに門に至りてまみゆることを求め、ようやく召入めしいれらる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ちぇッ……」という舌打ちが聞こえた。闇をただよってくる血の香がプーンとおもてつ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神さんは多少心元ない色をふくろのような丸い眼のうちただよわせて出て行った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それではたった一つお尋ね致します。それを答えて下さればこのお金は要りません。その品物はみんな無代価ただであげます」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
「これあ大変なお客様だ。折角無代価ただで乗ってもらおうと思っているのに、二人共乗れないとは困ったな」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
愚はどこまでも承認するがこの質問に出逢であうまでは無賃ただで乗れるかのごとき心持で平気でいたのは事実である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其処そこ丁度ちやうど隣りの一家族の上京――で、頼んで無賃ただで乗せて行つて貰へるのを喜んだ。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
仏の相のなかには不動明王のごとく憤怒の相があってもそれはただしき Indignation として慈悲円満の相の中に包摂できるかもしれない。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ただ私はそのたたかいが、他の一面において祈りの心持ちによってただしくされることをねがう。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ただこれにりて欲するままの夢をも結ぶに似たる快きを覚ゆるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
小杜こもりの蔭に潜んでのぞきいると、暫時して妍華超絶ただに別嬪どころでなく、真に神品たる処女、多人数諸方より来り集い、全く露形して皎月こうげつ下に身を洗う。
いで師の教えを受け、各この薬を磨くに、竜樹かおりぎてすなわち便ただちにこれを識る。
すなわち便ただちにおのおのに青薬一丸を授け、而してこれに告げて曰く、汝この薬を持ち、水を以てこれをき、って眼臉に塗らば、形まさに自ずから隠るべしと。