ただ)” の例文
誰でも時計を号砲どんに合せることを忘れた時には岡田の部屋へ問いに行く。上条の帳場の時計も折々岡田の懐中時計にってただされるのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いや、天災は、まだしも。人災を坐視している法はない。ただすべしだ。おれは、匡してやろうと思う」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
互いに相扶導輔翼ふどうほよくしてその困難をすくい、その誤謬をただし、各々その本性を発揮しつつあることも、文明の統一、人道の活躍、教育の独立に偉大なる効果の有ることである。
日本の文明 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ところでこの考察は、単に私の本性が陥り易いすべての誤謬に気づくためにのみでなく、またこれらの誤謬を容易にただしあるいは避け得るために、はなはだ多くの貢献をするのである。
宗乗の誤謬をただすべく、火にかれる迄も正理を標榜した鼻がありました。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
導く人のやはりわが仲間であったことは、或いは時代に相応せぬひなぶりをただしえない結果になったか知らぬが、そのかわりにはなつかしい我々の大昔が、たいして小賢こざかしい者の干渉を受けずに
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
御主君は、今度は逆臣をちゅうし、大儀をただすのを名として陳に兵を進めた筈です。それが、もし夏姫を納られることになれば、淫を貪らんがために、兵を起したといわれても仕方の無いことになります。
妖氛録 (新字新仮名) / 中島敦(著)
頃日このごろ高橋邦太郎さんに聞けば、文士芥川龍之介さんは香以の親戚だそうである。もし芥川氏の手にってこの稿のあやまりただすことを得ば幸であろう。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかも朝廟ちょうびょうあやうき間、献帝諸方を流浪のうちも、いまだ国をただし、かんをのぞき、真に宸襟しんきんを安めたてまつれりという功も聞かず、ひとえに時流をうかがい権者に媚び
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただおさみがいて、始めてものは有用の材となるのだ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
津軽家の祖先が南部家の被官であったということは、内藤恥叟ないとうちそうも『徳川十五代史』に書いている。しかし郷土史にくわしい外崎覚とのさきかくさんは、かつて内藤に書を寄せて、この説のあやまりただそうとした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
春澳の子は現に北海道室蘭むろらんにいる杲一こういちさんである。陸実くがみのるが新聞『日本』に抽斎の略伝を載せた時、誤って宝素を小島成斎とし、抱沖を成斎の子としたが、今にいたるまでたれもこれをたださずにいる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)