無料ただ)” の例文
ヒュ——ドロドロの科学実験はこれじゃこれじゃ……見料けんりょうは大人が十銭、小供なら半額、盲人めくら無料ただ……アッ……そんなに押してはいけない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ねえ、旦那、何なら一週に二度、いや三度でも、旦那のお顔を無料ただあたらせていただきたいと思っておりますんで。」
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「——やっぱり入船だな。原稿がいくら出ても無料ただ原稿では仕方がない。——美佐子君たちは、ところで、どっちかな」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
無料ただでやったのがいけなかったのかもしれない。もっともそればかりでなく、本質的な理由もある。何時まで経っても、上手にならないからである。
南画三題 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
無料ただで入れて無料で見せるのだろうと思ったら、目玉の飛び出るほどの場代を取るというのだから、集まって来た人が門の前で二の足を踏みました。
無料ただで一晩中酒が呑めるんだから、こんなうまい話はない。今夜も、いま、遊佐剛七郎、春藤幾久馬、鏡丹波がやって来て、同勢六人、円くなって酒だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「なに、徳川家では、おぬしのような者にまで、何十町歩という土地をくれているのか。——それは無料ただか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにしろ無料ただというのに心をかされて、僧は結局かれらに描かせることにすると、それから一日の後、兄弟と称する七人の少年が画の道具をたずさえて来た。
駅の東出口の前で焚火をしているので、せめてそれに当りながら夜を明かそうと寄って行くと、無料ただではあたらせない、一時間五円、朝までなら十五円だという。
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
どこもこれお祭りだ! うぐいす無料ただで聞けるエルヴィウーだ。夏よ、われは汝を祝する。
『何もその銭金のかかこつで無えのだ。わし其麽そんなもので無え。自分で宿料を払つてゐて、一週間なり十日なり、無料ただで近所の人達に聞かして上げるのだツさ、今のその、有難いお話な。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と三輪さんは無料ただで乗る積りらしかった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それから十四のとしにO市の感化院を脱出ぬけだして無一文で女郎買いに行った。ドッチも喜ぶ話だから多分、無料ただだろうと思って行ったのが一生のアヤマリ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
奨学金は、「成績」で買うものであって無料ただで貰うものではない。その証拠には、いちど奨学金を貰っても、成績が落ちれば、来年はさっさと打ち切られてしまう。
ピーター・パン (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「もしもし、えてのお泊り賃は、無料ただにいたしておきますが、私どもへお越しくださいませぬか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それですから見物は、大尽の威勢と恩恵とに感涙を流して、場代を払わなければならないのであります。それを無料ただ見ようなどというのはいかにもさもしいことであります。
冗談に言っているかと思って、金を出さずにいると、こっちはこれが商売なんだ、無料ただで当らせては明日の飯が食えないんだぞと凄んだ声で言い、これも食うための新商売らしかった。
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それを拾って来たものには無料ただで見物をさせることにした。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まずダムを作って、電力を無制限に、ほとんど無料ただのような料金で供給する。一方工業を興して電気冷蔵庫をたくさん作り、冷凍食品で生活出来るように、食生活を改善する。
捨てる文化 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「なに。おれの武芸をみせろというのか。そんなことなら無料ただですむ。おやすい頼みだ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ヤア無料ただの見世物だ。みんな、来い来い。世界一の珍らしい夫婦だ。無料ただだ無料だ」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
それは園遊会も、朝鮮芝居も、無料ただで接待するものとばかり思っていたら、目玉の飛び出るほど高い場代を徴集するのでありますから、それで集まったものが、あっと二の足を踏みました。
仲人は無料ただの散髪をして帰った。
婚期はずれ (新字新仮名) / 織田作之助(著)
中には、夫婦げんかをして買ったものもあるが、たいていは無料ただでもらったものである。
八幡馬と墨の研究 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「オイ、鬚野ひげの先生。三十銭に負けとき給え、ドウセ無料ただで拾って来たんだろう」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
箕輪みのわ浄閑寺じょうかんじ、あすこの、投込みへ、無料ただで頼むよりしようがないでしょう」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金が余って困る方は別問題として、政府にしたら、無料ただで国中の道路がぴかぴかになるのだから、こんな結構な話はない。損をするのはガソリン消費者、すなわち一般国民だけである。
アメリカ種の落語 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
向い合っているうちに無料ただでコンナ物を見ちゃ済まないような気がして来た。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「なぜさ。おめえもまた、因業いんごうだな。無料ただで飲ませろッていうんじゃねえぜ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その代り、私立の方は、授業料がべら棒に高く、公立は無料ただみたいにしてある。
知られざるアメリカ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「木戸銭を返せ! 銭で返すなり、今夜の木戸札を、もう一度無料ただで配れ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数え切れない精神病者を。無料ただで引受け入院させるは。広い世間に大学ばっかり。それも寝台が何百あろうか。しかも慈善でするのじゃ御座らぬ。学生教授の研究材料。生きた標本講義の参考に。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これは、船賃を無料ただにしてもらったからほめるわけではない。
アラスカの氷河 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「今なら無料ただだ」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
少し乱暴ないい方をすれば、水は無料ただだからである。
動力革命と日本の科学者 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)