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尋常
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ただ
ふりがな文庫
“
尋常
(
ただ
)” の例文
「あら! ……」と忽ち機嫌を損ねて、「だから
阿母
(
かあ
)
さんは嫌いよ。
直
(
じき
)
ああだもの。
尋常
(
ただ
)
のじゃ厭だって誰も言てやしなくってよ。」
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
不断、そう
云
(
い
)
やがるとよ、
可
(
い
)
いか。手前ン
許
(
とこ
)
の
狂女
(
きちがい
)
がな、不断そう云やがる事を知ってるから、
手前
(
てめえ
)
だって
尋常
(
ただ
)
は通さないんだぜ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて
此方
(
こなた
)
を向きたる貫一は、
尋常
(
ただ
)
ならず激して血の色を失へる
面上
(
おもて
)
に、多からんとすれども
能
(
あた
)
はずと見ゆる
微少
(
わづか
)
の
笑
(
ゑみ
)
を漏して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「それからね。まだおかしいことを言い触らす者があるんですよ。どうもあの尼さんは
尋常
(
ただ
)
の人間じゃないと……。」
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
という頼み、師匠も
尋常
(
ただ
)
ならぬ三枝氏の頼みだから、「それは、早速彫りましょう」といって和白檀で二寸四分の小さな大黒さんを彫って上げました。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
ツイこの間も人殺しがオッ
初
(
ぱじま
)
りかけた位なんで……ヘイ。だから今夜もアブネエと思うんでげす。片ッ方の野郎が、どーも
尋常
(
ただ
)
の野郎じゃねえと思うんで……。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
尋常
(
ただ
)
ではない、とお隅も思いましたものの、夕飯の仕度に心は
急
(
せ
)
くし、それに、なまじっか原のことを言い出して慰めて見たところで、反て気を悪くさせるようなもの
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
若し覚え居て有の儘を話したら、悪に鋭い此の医学士は決して余を
尋常
(
ただ
)
の若者とは思いは仕まい。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
だから私はこちら様へ上りました当季は、御親類の、若旦那様ででもいらつしやるかと存じましたに、
尋常
(
ただ
)
の書生さんでもつて、あれでは、どう致して通れるもんではございません
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
この頃より妾の
容体
(
ようだい
)
尋常
(
ただ
)
ならず、日を経るに従い胸悪く
頻
(
しき
)
りに
嘔吐
(
おうど
)
を催しければ、さてはと心に
悟
(
さと
)
る所あり、出京後重井に打ち明けて、郷里なる両親に
謀
(
はか
)
らんとせしに彼は許さず
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
これを
汝
(
てめえ
)
に遣るから泥坊に奪られない積りで主人の
処
(
とこ
)
へ往くが
宜
(
い
)
い、
併
(
しか
)
しそれは
尋常
(
ただ
)
の金じゃない、たった一人の娘が身を売った
身
(
み
)
の
代金
(
しろきん
)
だけれども、これを汝に遣るからと仰しゃって
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
相手がどうも
尋常
(
ただ
)
のお客ではないらしいから、ほうっておいてもしや間違いが……間違いといったところで、相手がやっぱり女のお客だから、取って食おうというわけでもなかろうけれど、なんだか
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
襖
(
ふすま
)
を
隔
(
へだ
)
てて
窺
(
うかが
)
ひ居たるお熊は、
尋常
(
ただ
)
ならぬ物音に
走
(
は
)
せ出でぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
人形の手足を
掙
(
も
)
いでおいたのに
極
(
きわま
)
って、蝶吉の血相の容易でなく、
尋常
(
ただ
)
では
納
(
おさま
)
りそうもない光景を見て、居合すは
恐
(
おそれ
)
と、
立際
(
たちぎわ
)
の
悪体口
(
にくていぐち
)
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「へえへえ、恐れ入りました」、と
莞爾
(
にっこり
)
して、「じゃ、
尋常
(
ただ
)
のでも
好
(
い
)
いから、
屹度
(
きっと
)
よ。ねえ、
阿母
(
かあ
)
さん、
欺
(
だま
)
しちゃ厭よ。」
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
やがて、御盃や御羽織を
掻浚
(
かきさら
)
うようになすって、旦那様は御部屋から御座敷の方へいらっしゃる。御様子がどうも
尋常
(
ただ
)
ではないと、私も御後から随いて行って見ました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何か室の中に
尋常
(
ただ
)
ならぬ事が有りはせぬかと気遣った、併し之は秀子に見せ可き次第でないから
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
しかも小源二の物語から想像すると、彼女の振舞いはどうしても
尋常
(
ただ
)
の人間ではないらしい。彼はさきの夜、犬の群れに取り囲まれた時の玉藻のおそろしい顔を思い出した。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その
膚
(
はだ
)
の色の男に
似気無
(
にげな
)
く白きも、その
骨纖
(
ほねほそ
)
に肉の
痩
(
や
)
せたるも、又はその
挙動
(
ふるまひ
)
の
打湿
(
うちしめ
)
りたるも、その人を
懼
(
おそ
)
るる
気色
(
けしき
)
なるも、
総
(
すべ
)
て
自
(
おのづか
)
ら
尋常
(
ただ
)
ならざるは、察するに精神病者の
類
(
たぐひ
)
なるべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
結婚の一条件たりし洋行の事は、夫婦の一日も忘れざる所なりしも、調金の道いまだ成らざるに、妾は
尋常
(
ただ
)
ならぬ身となり、事皆
志
(
こころざし
)
と
差
(
ちが
)
いて、貧しき内に男子を挙げ、名を
哲郎
(
てつろう
)
とは命じぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
何をもないもんだよ。分別盛りの好い年をして、という顔色の
尋常
(
ただ
)
ならぬに得右衛門は打笑い、「
其方
(
そなた
)
もいけ
年
(
どし
)
を
仕
(
つかまつ
)
ってやくな。 ...
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
文士という肩書の無い
白地
(
しろじ
)
の
尋常
(
ただ
)
の人間に戻り、ああ、
済
(
すま
)
なかった、という一念になり、我を忘れ、世間を忘れて、私は……私は遂に泣いた……
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其の言葉には語句の外に
尋常
(
ただ
)
ならぬ所が見える、若しや余の留守に何か又忌わしい事件でも起こったのかと余は
毎
(
いつ
)
になく胸騒ぎを覚え、唯「爾か」と答え捨てゝ後は聞かずに秀子の室へ馳せて入った。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「あの尼はやっぱり
尋常
(
ただ
)
の人間じゃない。狸だ、狸だ。」
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
既に、
廓
(
くるわ
)
の
芸妓
(
げいこ
)
三人が、あるまじき、その
夜
(
よ
)
、その怪しき仮装をして内証で練った、というのが、
尋常
(
ただ
)
ごとではない。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どうもあの女がさ、
尋常
(
ただ
)
の
鼠
(
ねずみ
)
じゃあんめえと
睨
(
にら
)
んでおきましたが、こりゃあまさにそうだった。しかしいい女だ
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「一体
汝
(
うぬ
)
あ何者だい、
尋常
(
ただ
)
の
鼠
(
ねずみ
)
じゃなさそうだ。」「あい、
私
(
わっち
)
あ、鮫ヶ橋で丹という、
金箔
(
きんぱく
)
附の乞食だよ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……この膝を
丁
(
ちょう
)
と叩いて、黙って二ツ三ツ拍子を取ると、この拍子が
尋常
(
ただ
)
んじゃない。……親なり師匠の叔父きの膝に、
小児
(
こども
)
の時から、抱かれて習った相伝だ。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寂然
(
しん
)
としておりますので、
尋常
(
ただ
)
のじゃない、と何となくその暗い灯に、白い影があるらしく見えました。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さりながら御顔の色も
尋常
(
ただ
)
ならず、一同安心のなりまするよう、
仔細
(
しさい
)
御申聞
(
おんもおしき
)
けのほどを、はッはッ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不思議や、
蒔絵
(
まきえ
)
の車、雛たちも、それこそ
寸分
(
すんぶん
)
違
(
たが
)
わない
古郷
(
ふるさと
)
のそれに似た、と思わず
伸上
(
のびあが
)
りながら、ふと心づくと、前の雛壇におわするのが、いずれも
尋常
(
ただ
)
の形でない。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
謂われて叔母は
振仰向
(
ふりあおむ
)
き、さも嬉しげに見えたるが、謙三郎の顔の色の
尋常
(
ただ
)
ならざるを
危
(
あやぶ
)
みて
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「…………」島野は目の色も
尋常
(
ただ
)
ならず、
尖
(
とが
)
った鼻を横に向けて、ふんと
呼吸
(
いき
)
をしたばかり。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なお、かし本屋の店頭でもそうだし、ここでの紫の雨合羽に、
塗
(
ぬり
)
の足駄など、どうも
尋常
(
ただ
)
な娘で、小説家らしい処がない。断髪で、靴で、
頬辺
(
ほおべ
)
が赤くないと、どうも……らしくない。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
でも
貴女
(
あなた
)
が、ちっともお騒ぎなさいませんから、
此室
(
こちら
)
で仕事が出来なくッて、それで、あの
尋常
(
ただ
)
の方なら可いけれど、恐いお役人様なんで、手が出せなかったようで
口惜
(
くやし
)
いからッて
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それさえ
尋常
(
ただ
)
ならず、とひしめく処に、
搗
(
か
)
てて加えて易からぬは、世話人の一人が見附けた——屋台が道頓堀を越す頃から、橋へかけて、列の中に、たらたら、たらたらと
一雫
(
ひとしずく
)
ずつ
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
婦人
(
おんな
)
は顔の色も変えないで、
切
(
きれ
)
で、血を押えながら、
姉
(
ねえ
)
さん
被
(
かぶり
)
のまま
真仰向
(
まあおの
)
けに榎を仰いだ。晴れた空も
梢
(
こずえ
)
のあたりは
尋常
(
ただ
)
ならず、
木精
(
こだま
)
の
気勢
(
けはい
)
暗々として中空を
籠
(
こ
)
めて、星の色も
物凄
(
ものすご
)
い。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尋常
(
ただ
)
ならぬ新婦の気色を
危
(
あやぶ
)
みたる介添の、何かは知らずおどおどしながら
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
尋常
(
ただ
)
、尋常ごとではござりません。」と、かッと
卓子
(
テエブル
)
に
拳
(
こぶし
)
を
掴
(
つか
)
んで
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
瓜番の小屋へ自分で火をつけたのは
尋常
(
ただ
)
ごととは思わなかったが。……ただ菜売とだけ存じました。——この頃土地の人に聞くと、それは、夏場だけ、よそから来て、
肉
(
み
)
を売る女の事だと言います。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尋常
(
ただ
)
ならぬ光景に感ずる余り、半ばは滝太郎に戯れたので。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(やあ、皆も来てくれ。)
尋常
(
ただ
)
ごとではありません。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お貞は顔の色
尋常
(
ただ
)
ならざりき。少年は少し弱りて
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
目も
尋常
(
ただ
)
ならず、おろおろして
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尋
常用漢字
中学
部首:⼨
12画
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
“尋常”で始まる語句
尋常事
尋常一様
尋常科
尋常人
尋常茶飯
尋常外
尋常漢
尋常茶飯事
尋常体
尋常時