ただ)” の例文
おばあさんは、おじいさんのいわれたことは、みんなただしいとしんじていました。そして、なるほど、それにちがいないとかんじたのです。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
よく見るとそれは大きな黒い夜蛾よがだった。葉子は神がかりが離れたようにきょとんとなって、不思議そうに居ずまいをただしてみた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
悄然しょうぜんとして項垂うなだれていた小野さんは、この時居ずまいをただした。顔を上げて宗近君を真向まむきに見る。ひとみは例になく確乎しっかと坐っていた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一、官の学校にては、おのずから衣冠の階級あるがゆえに、ただしく学業の深浅にしたがって生徒席順の甲乙を定め難き場合あり。
もぐりの流行神はやりがみなららぬこと、いやしくもただしいかみとしてんな祈願きがんみみかたむけるものは絶対ぜったいいとおもえばよろしいかとぞんじます。
すると天皇がツカツカ進んでいってその兵の姿勢をただす。つまり兵隊たちは天皇のお手に触って貰いたかったものなのである。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心のそこでは、小父のほうただしいとわかっていた。ゴットフリートの言葉がむねおくきざみこまれていた。彼はうそをついたのがはずかしかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
しかし「武鑑」の成立なりたちを考えて見れば、この誤謬の多いのは当然で、それはまた他書によってただすことが容易である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
人種の発達と共にその国土の底に深くも根ざした思想の濫觴らんしょうかんがみ、幾時代の遺伝的修養を経たる忍従棄権のさとりに、われ知らずえりただおりしもあれ。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかしその思い違いがただされると、超短波はまた一つの仕事を受け持つようになりました。それは電気メスです。
科学が臍を曲げた話 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
先程から引つゞいて、大きな心臓しんぞうの鼓動の如く、ただしい時をへだてゝ弔砲がひびいて居る。——あゝ鐘が鳴って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「あなたは、だれにむかってもただしいかたで、だれかれの差別なく、おんなじに扱いなさるからね。是非いらしって、せがれの洗礼をやっていただきます」
彼らの中には、弓と剣と楯とを持った訶和郎かわろの姿も混っていた。彼は、この不意の召集の理由を父にたださんがために、ひとり王宮の中へ這入はいっていった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
しかれども世運せいうんようやくくだるにおよんで人事日にしげく、天然の教いまだもって邪をただすに足らず。これをもって名教をほどこせり。しかしてまた、いまだ下愚かぐを移すに足らず。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
院、長嘘ながきいきをつがせ給ひ、今事をただして罪をとふ、ことわりなきにあらず。されどいかにせん。
さあみんな、あしをつけて。それで、行儀ぎょうぎただしくやるんだよ。ほら、あっちにえるとしとった家鴨あひるさんに上手じょうずにお辞儀じぎおし。あのかたたれよりもうまれがよくてスペインしゅなのさ。
ただしくすわったひざうえに、りょういたまま、駕籠かごなかからいけのおもてに視線しせんうつした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
鹽原巡査人夫の荷物にもつわかち取り自ら之をふてのぼる、他の者亦之に同じくす、人夫等つひに巳を得ず之にしたがふ、此に於て相互救護きうごさくを取り、一行三十余名れつただして千仭の崖上がいじやう匍匐ほふくして相登る
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
肥前ひぜん大村藩おおむらはんです。昔をいえば、これでも由緒ゆいしょただしい侍ですよ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
(一七)李耳りじ無爲むゐにしておのづかくわす、清靜せいせいにしておのづかただし。
嫩江を前にただしく横たへて閻浮檀金えんぶだごんの日の沈み行く
ただしきを年のむたやしなひましぬ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おほかたはただしかり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そうでしょう。ただしいことをしながらくるしめられ、わるいことをしても、らくらしをしているひとがあるのは、どうしたわけですか。」
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
敦子あつこさまはそうって、わたくしひざをすりせました。わたくし何事なにごとかしらと、えりただしましたが、案外あんがいそれはつまらないことでございました。——
しかし火鉢ひばちからはるか離れた向こう側に、うやうやしく居ずまいをただして、愛子がひそひそと泣きながら、規則正しくおじぎをするのを見ると葉子はすぐしゃくにさわった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
かれらをただしい武門ぶもんの人間とかんがえて、試合しあい争論そうろんあせをながしたのがおろかであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それじゃ、今度寒月が来たら、博士論文をかくように僕から勧めて見よう。しかし当人が金田の娘を貰うつもりかどうだか、それからまず問いただして見なくちゃいかんからな」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あたくしは他人ひとさまからさげすまれ、なさけないくらしはしておりますが、それだと言って、あなたがただしいことをなさるかたでなければ、名づけ親にはなっていただけませんので」
丘助手は、突然の博士のお出でに、思わずえりただして立上った——というより、飛上ったという方が当っているかも知れない。何しろ丘数夫は、この研究所では新参者しんざんものなのであるから。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二階を教場きょうじょうにして、弟子に手習をさせた頃、大勢の児童が机を並べている前に、手にむちを執って坐し、筆法をただすに鞭のさきを以てゆびさし示し、その間には諧謔かいぎゃくを交えた話をしたことは、前に書いた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ただしきを年のむたやしなひましぬ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
えりただすも
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二人ふたりは、そろって教員室きょういんしつまえへいって、時計とけいると、どちらもちがっていました。それでいずれがただしいのか、わかりませんでした。
正二くんの時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むかしことわざに『ひともとづき、かみもとづく』とやらもうしてりますが、わたくしはこちらの世界せかいて、そのことわざただしいことにづいたのでございます。
「あなたのむすこさんは、ただしいことをしない、みんなを、えこひいきなく一様いちようにあつかうことをしない。さもなければ、わたしにしても、こんなに貧乏で、ふしあわせなはずはないのさ」
そう小田おださとると、自分じぶん行為こういまでがかえりみられて、これから、自分じぶんも、ほんとうのただしい、つよ人間にんげんになろうと決心けっしんしたのでした。
笑わなかった少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これはえらひとだぜ。ただしい、まずしいひと味方みかたなんだ。おまえは、このひとっているのかい。」と、かれらは、たずねました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「みんなは、世間せけんられるような、えらいひとになれなくともいいから、ただしい人間にんげんとなって、どうか幸福こうふくらしてもらいたい。」
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
わかいものは、これから、一しょうをもったいなくおもって、ほんとうに有益ゆうえきに、ただしくおくらなければならないだろう……とおもいました。
いいおじいさんの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それを、いまわたしがいってもわかりますまい。ただしいこころをもちながら、わすれたのであれば、かならずさとがありますじゃ。」
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
このなかには、もっとただしいことも、幸福こうふくなこともたくさんあるのですよ。わたしは、まちや、むらや、方々ほうぼうあるいてきました。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おまえが、いうことは、ほんとうのことだけれど、強情ごうじょうはよくないことだ。ただしいことはいつか、あとでわかるときがあるのだから……。」
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、おじさんも、日本にっぽん子供こどもは、そんとか、とくとかいうことなんか、かんがえてはいけない。ただしいことをしなければならぬといった。」
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうくみは、さすがに、自分じんたちのほうの時計とけいくるわないただしい時計とけいだと、いよいよその時計とけいのありがたみをかんじたわけです。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの時分じぶんから、自分じぶんただしくきようとこころがけてきたが、かえりみればまだどれほど後悔こうかいされることのおおかったことかしれない。
いいおじいさんの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正直しょうじきひとなら、なにがただしいか、ただしくないかがわかる。たとえわかっても、なかのため、あくまでいいはる、勇気ゆうきのあるひとすくないのだ。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただしいことも、ただしくないと、いいはるひとたちがあり、そういうもののほうが、いつのなかでも勢力せいりょくつからだ。」
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなが、そのような、ただしいかんがえをっていましたら、どんなにこのなかがいいでしょう? わたしは、このはなしをみんなにらしたいとおもいます。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうかんがえるのが、ただしいのですよ。どこの兄弟きょうだいも、やさしいおかあさんのおなかからまれて、おなじちちをのんで、わけへだてなくそだてられたのです。
煙と兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)