ただ)” の例文
と主税は澄まして言い懸けたが、ただならぬ夫人の目の色に口をつぐんだ。菅子は息急いきぜわしい胸をおさえるのか、の上へ手を置いて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
松ふく風物をたふすがごとく、雨さへふりて一六七ただならぬ夜のさまに、壁を隔てて声をかけあひ、既に一六八四更にいたる。
子供の体のただでないことが、朝になってからようやくお銀にも解って来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なほおこたらず供養きようやうす。露いかばかりそでにふかかりけん。日はりしほどに、山深き夜のさま三二ただならね、石のゆか木の葉のふすまいと寒く、しんほねえて、三三物とはなしにすざまじきここちせらる。