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ふりがな文庫
“
孤
(
ひと
)” の例文
松の間から見える
孤
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
が、秋の空の下で、燃え立つように赤かった。しかしそれが
唐辛子
(
とうがらし
)
であると云う事だけは一目ですぐ分った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まがりなりにも城主であったものが、仮小屋のなかに
孤
(
ひと
)
りで起居している姿は
哀
(
かな
)
しかった。もとの家臣にとっては気持の負担であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「大いにあるのよ。母様には、恋愛なんかから超越して、
孤
(
ひと
)
り高く浄しというような、私を見ているのが趣味なようなところがあるのよ」
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
安らかに祈らしてやれ、哀れな少年だ、
聾
(
つんぼ
)
にして、
唖
(
おし
)
にして、しかも
孤
(
ひと
)
りなる異国少年——祈るがままに、さまたげず祈らしてやるがよろしい。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
社交の楽しみにも応じやすいほど熱情的で活溌な性質をもって生まれた私は、早くも人々から
孤
(
ひと
)
り遠ざかって孤独の生活をしなければならなくなった。
ベートーヴェンの生涯:03 ハイリゲンシュタットの遺書
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(著)
▼ もっと見る
孤
(
ひと
)
りになつてからも、あるひは、父の生きてゐた間も、娘は自分の声の美しいことが一番悲しい事実であつた。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
面白いやうに
孤
(
ひと
)
りの己れに爽やかな悦びを感じてゐた、嘗て「愚」と
称
(
よ
)
んで嘆いた鈍い感情が、太く凝り固まつて、反つて静かな「感謝」を覚えさせてゐた
山を越えて
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
宗之助は少年時代から負けず嫌いだった、頭脳的にも肉体的にも常に
孤
(
ひと
)
りぬきんでなくては承知しなかった。
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
北佛蘭西の寂しい海岸の
孤
(
ひと
)
つ家の戸口に坐つてゐる老女の姿とを、同時に眼前に浮ばせられる。
氷島の漁夫:02 「氷島の漁夫」について
(旧字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
北佛蘭西の寂しい海岸の
孤
(
ひと
)
つ家の戸口に坐つてゐる老女の姿とを、同時に眼前に浮ばせられる。
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
孤
(
ひと
)
りこれ等の姉妹と道を異にしたるか、終に帰り来らざる「理想」は
法苑林
(
ほうおんりん
)
の樹間に「愛」と相
睦
(
むつ
)
み語らふならむといふに在りて、
冷艶
(
れいえん
)
素香の美、今の仏詩壇に冠たる詩なり。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
この池はいったいどんな仲間をもっているというのだろう? しかもそれはその
紺碧
(
こんぺき
)
の水の色のうちに、青い憂鬱魔ではなく青衣の天使をもっているのだ。太陽は
孤
(
ひと
)
りである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
自暴自棄への道は一度ならず私の眼の前に見えたのです。
孤
(
ひと
)
り身であることほど人の
侮
(
あなど
)
りを受け易いものはありません。コリン家は世間に対しては私の後楯ともなってくれたのです。
聖アンデルセン
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
十年も旦那の留守居をして
孤
(
ひと
)
りの
閨
(
ねや
)
を守り通したことのある奥座敷からも、養子夫婦をはじめ奉公人まで家内一同膳を並べて食う楽みもなくなったような広いがらんとした台所からも。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
孤
(
ひと
)
りでいるのが
恐
(
こわ
)
いのだ。過去が遠慮もなく眼をさますからだった。それは龍介にとって亡霊だった。——酒でもよかった。が、酒では酔えない彼はかえって惨めになるのを知っていた。
雪の夜
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
権作老人と立ち別れて篠田は、降り積む雪をギイ/\と
鞋下
(
あいか
)
に踏みつゝ、我が伯母の
孤
(
ひと
)
り住む
粟野
(
あはの
)
の谷へと急ぐ、氷の如き月は海の如き
碧
(
あを
)
き空に浮びて、見渡す限り
白銀
(
しろがね
)
を延べたるばかり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
それも案外、
墨染
(
すみぞめ
)
の身寄りの家へ行ってみたら、便りの知れることかもしれぬ。彼女は、
孤
(
ひと
)
りでそう思い励ますのだった。先に手をつないで歩いてゆく今若と乙若のふたりを後から見守りながら——
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうして、来るべき年の春まで、深雪の下に埋もれる、この峡谷の絶底の
孤
(
ひと
)
つ屋には、豆腐造りの中年夫婦が、乳呑子とただ三人、留守居を勤めるのだという——繩や草鞋の手細工などをやりながら。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
げに
唯
(
たゞ
)
わが
爲
(
ため
)
にわが爲に、
孤
(
ひと
)
り
空
(
むな
)
しくわれは咲きにほふと
エロディヤッド
(旧字旧仮名)
/
ステファヌ・マラルメ
(著)
愛しさをふかく心にひそめ生き
孤
(
ひと
)
つ灯に吐く独語のありぬ
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
孤
(
ひと
)
り離れて遠い思いに浸らないわけにはゆかなかった。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
孤
(
ひと
)
つなるは
猶
(
なほ
)
さら、連ねし姿もあはれなり。
あきあはせ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あゝ
孤
(
ひと
)
りの天の座に青き菊の花匂へり
希臘十字
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
実際撤回しなければならないほど、
容体
(
ようだい
)
が
危
(
あや
)
しくなって来た。ただ向うに見える一点の
灯火
(
ともしび
)
が、今夜の運命を決する
孤
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
であると覚悟して、
寂寞
(
せきばく
)
たる原を
真直
(
まっすぐ
)
に横切った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「慧能ガ厳父ノ本貫ハ
范陽
(
はんよう
)
ナリ。
左降
(
さこう
)
シテ嶺南ニ流レテ新州ノ百姓トナル。コノ身不幸ニシテ父又早ク
亡
(
もう
)
ス。老母
孤
(
ひと
)
リ
遺
(
のこ
)
ル。南海ニ移リ来ル。艱辛貧乏。
市
(
まち
)
ニ於テ柴ヲ売ル」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そこには常に諸国から志士人傑が集まっていて、
慷慨悲憤
(
こうがいひふん
)
の議論の絶えるときがなかった。しかしかれはその中にあっても
悄然
(
しょうぜん
)
と
孤
(
ひと
)
り
緘黙
(
かんもく
)
していた。どのような熱狂にも巻きこまれなかった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
斯う言つて蓮太郎は考深い目付をして、
孤
(
ひと
)
り思に沈むといふ様子であつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
何となく指触れしむる獄の灯に
孤
(
ひと
)
つやかんのあたたかき腹
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
篠田と老人とを乗せたる一
輌
(
りやう
)
は、
驀地
(
まつしぐら
)
に
孤
(
ひと
)
り
奔
(
は
)
せぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
噫
(
あゝ
)
究極の美なるかな、げにわれこそは
孤
(
ひと
)
りなれ。
エロディヤッド
(旧字旧仮名)
/
ステファヌ・マラルメ
(著)
かくて
孤
(
ひと
)
り人間の
群
(
むれ
)
やらはれて解くに由なき
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
孤
(
ひと
)
り 廻り澄むもの
独楽
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
かくて
孤
(
ひと
)
り人間の群やらはれて解くに由なき
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
無爲
寂寞
(
じやくまく
)
の國に
孤
(
ひと
)
り立つを
覺
(
おぼ
)
ゆ
エロディヤッド
(旧字旧仮名)
/
ステファヌ・マラルメ
(著)
光明道
(
くわうみやうだう
)
の
此原
(
このはら
)
の
眞晝
(
まひる
)
を
孤
(
ひと
)
り過ぎゆかば
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
光明道
(
こうみようどう
)
の
此原
(
このはら
)
の
真昼
(
まひる
)
を
孤
(
ひと
)
り過ぎゆかば
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
“孤”の意味
《名詞》
(コ)ひとりぼっち。
(出典:Wiktionary)
孤
常用漢字
中学
部首:⼦
9画
“孤”を含む語句
孤独
孤島
孤屋
孤児
孤兒
遺孤
孤寂
孤獨
孤身
孤子
孤立
孤城
孤坐
孤蝶
孤客
孤忠
孤掌
孤舟
孤笻
孤児院
...