ひと)” の例文
わしはひとりで合点しながら、その警察へでも出頭する気か、フラフラと立上って、歩き出そうとした。そして、ハッと我に返った。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平素いつも威望ゐぼうと、蒼白な其時の父の顔の厳粛さがひとりでに群集の同情に訴へたのである。二人は歩き進んだ。そして、私ははつきり父の顔を見る事が出来た。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
ましてや苦悩のからは、鶏がかえるがごとく、ひとりでには割れない。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)