匪徒ひと)” の例文
広栄は左右にけた障子の一方の陰にいたので正面まともに客と顔をあわせなくてもよかった。客はあの匪徒ひとの中の松山と半ちゃんであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
全篇の主旨となす所は近年英両国の入寇にゅうこうおよび回教匪徒ひとの反乱とに際して、清国の武備のはなはだ到らざることを慨歎し、以て世を警醒けいせいするにあった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それ等の絵には義和団ぎわだん匪徒ひと英吉利イギリス兵などはたふれてゐても、日本兵は一人も斃れてゐなかつた。僕はもうその時にも矢張やはり日本兵も一人位ひとりくらゐは死んでゐるのに違ひないと思つたりした。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
匪徒ひとの恐れありというので、護衛兵をも附した。
とうといいまして、人の噂では、匪徒ひとの仲間入りをしているという男ですが、その男が二更にこうのころに、酒に酔って歩いておりますと、その晩は月があって
それ等の絵には義和団の匪徒ひとやイギリス兵などはたおれていても、日本兵は一人も、斃れていなかった。僕はもうその時にも、矢張り日本兵も一人位は死んでいるのに違いないと思ったりした。
本所両国 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三人は品川大井大森方面を縄張にしている匪徒ひとで、丹前は岡本と云う三百代言さんびゃくだいげんあがり、もみあげは松山と云って赤新聞の記者あがり、角刈は半ちゃんで通っている博徒ばくとであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)