ひと)” の例文
アイモニエー曰く、猫往昔むかし虎に黠智かつちと躍越法を教えたがひとり糞を埋むる秘訣のみは伝えず、これをうらんで虎今に猫を嫉むとカンボジアの俗信ずと。
孝孺のちに至りて此詩を録して人にしめすの時、書して曰く、前輩せんぱい後学こうがくつとめしむ、惓惓けんけんこころひとり文辞のみにらず、望むらくはあいともに之を勉めんと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ひとリ怪ム、この時ニ当リテ敢テ法典ノ実施ニ反抗セントスル者アルヲ、此輩畢竟不法不理ナル慣習ノ下ニ於テ其奸邪曲策ヲ弄セントスル者ノミ、とつ何等ノ猾徒かっとゾ」
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
想ふにけふは歌女が生涯にて最も嬉しき日なりしならん。されどこはひとり歌女が上にはあらず。我も亦わが生涯の最も嬉しき日を求めば、そは或はけふならんと覺えき。
国家の運命を懸念するものひとり日本国民にのみ限れるの事なるか、之れを以て日本国民の特質となすは余りに漠たるの感なきを得るか、道義的情緒に富めりといふを以て之れに答へんか
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
こは逍遙子がひとり沒却理想なる戲曲と沒却理想ならざる戲曲とを分ちたるのみならで、能く沒却理想なる戲曲を作る詩人と、沒却理想なる戲曲を作ること能はざる詩人とを別ちたる言なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
孝孺の此言に照せば、既に其の卓然として自立し、信ずるところあり安んずるところあり、潜渓先生せんけいせんせいえる所の、ひとり立って千古をにらみ、万象てらしてくらき無しのきょうに入れるをるべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
論者は快活楽天を以て国民の特質となす、されどひとり日本国民が先天的特質なりと言ふを得べきか、古希臘いにしへギリシヤ国民の如きも、また此の質を有し、且つ一層あきらかに此の特質を有せりしにはあらざるか。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
ひとり立つて 千古をにらまば
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)