とゞ)” の例文
新字:
めてそんなものが一ぷくでもあつたらとおもつた。けれどもそれ自分じぶん呼吸こきふする空氣くうきとゞくうちには、ちてゐないものとあきらめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
同伴者つれ親類しんるゐ義母おつかさんであつた。此人このひと途中とちゆう萬事ばんじ自分じぶん世話せわいて、病人びやうにんなる自分じぶんはらまでおくとゞけるやくもつたのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
九州きうしうさるねらふやうなつまなまめかしい姿すがたをしても、下枝したえだまでもとゞくまい。小鳥ことりついばんでおとしたのをとほりがかりにひろつてたものであらう。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もらひ請其儘我が家へもどり翌日返書は小夜衣へとゞけしが此機について何か一仕事しごとありさうな物と心の内に又もや奸智をめぐらして急度きつと一ツの謀略はかりごと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しからば、天下てんかひんなんだ。まアいです』となぐさめたが、あるひまた兒島氏こじまし大瀧氏おほたきしところにも、天下てんかぴんとゞいてはせぬか?
シラチブチはもとの小貝川がSの字形じけいに流れたまがの名で、渦を卷いて澱んでゐる頃は一の繩が下までとゞかぬと言はれた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
されば下半身のなりし岸は彼を高くその上に聳えしむ、おもふに三人みたりのフリジアびともその髮にとゞくを 六一—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
けれども二ヶ月も經ち、毎日々々郵便がとゞいても、私には何も來ないのを見ると、痛いやうな不安に襲はれた。
ひめすくいださんため、たゞ一人ひとりにてまゐりしは、ひそか庵室いほりにかくまひおき、後日ごじつをりて、ロミオへおくとゞけん存念ぞんねんしかるにまゐれば、ひめ目覺めざむるすこしき前方まへかた
そのくりむしかられたいとけて、ばしますと、木小屋きごやまへぢいやのからむかふのふるいけわき友伯父ともをぢさんのとゞくほどのながさがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ほとんど闇黒やみ全體ぜんたいつゝまれてつたが、わたくし一念いちねんとゞいて幾分いくぶ神經しんけいするどくなつたためか、それともひとみやうや闇黒あんこくれたためか、わたくしからうじてその燈光ひかり主體ぬしみと途端とたん
それでも喬木けうぼくこずゑうへ壓迫あつぱくくるしんでるやうにまれのぼつてはまたおしつけられた。徒勞むだである喞筒ポンプ群集ぐんしふみづむのに近所きんじよあらゆる井戸ゐどみな釣瓶つるべとゞかなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今夜こんやれるとはゆめやうな、ほんにこゝろとゞいたのであらう、自宅うちうまものはいくらもべやうけれどおやのこしらいたはまた別物べつもの奧樣氣おくさまぎとりすてゝ今夜こんやむかしのおせきになつて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしてつひには、日本につぽんうたが、赤人あかひとふうのものになる時機じきを、とゞけたのでありました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
わたしはそれにしたがはないではゐられなかつた。をのべて、しかしなか/\とゞきさうもなかつたので半身はんしんして、それでも駄目だめだつたのでたうとうあがつてまで、障子しやうじ左右さいうひらいた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
急信きふしんは××ねん××ぐわつ××にち午後ごごとゞいたので、民子たみこあをくなつてつと、不斷着ふだんぎ繻子しゆすおび引緊ひきしめて、つか/\と玄關げんくわんへ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かけられ越前守殿の白洲しらす呼込よびこみと成しかば久八有し次第を逐一に申立し時既に其場所よりも横死わうし人のとゞけ出けるにより先久八は入牢じゆらう申付られ檢死けんし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
提灯ちやうちんにもそのいろ多少たせううつかんじがあつた。その提灯ちやうちん一方いつぱうおほきなみき想像さうざうする所爲せゐか、はなはちひさくえた。ひかり地面ぢめんとゞ尺數しやくすうわづかであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はらすいると、のばしてとゞところなつ無花果いちじく芭蕉ばせうもぎつてふ、若し起上たちあがつてもぎらなければならぬなら飢餓うゑしんだかも知れないが
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ひげのかうえた部長ぶちやうさんだつていふ可怖おつかねひとでがしたがね、ぬすまつたなんてとゞけしてゝさうして警察けいさつ餘計よけい手間てまけて不埓ふらちやつだなんて呶鳴どならつたときにやどうすべかとおもつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
本當ほんたう奇妙きめうことだとおもつてると、あること、ウルピノ山中さんちうとて、子ープルスのまちからは餘程よほどはなれた寒村かんそんの、浮世うきよそと尼寺あまでらから、一通いつつう書状てがみとゞきました、うたがひもなき亞尼アンニー手跡しゆせき
ヂョン はて、とゞけることをうせなんだのぢゃ。……これ、此通このとほってもどった。……此庵こちとゞけうとおもうてもな、みな傳染でんせんこはがりをるによって、使つかひをとこさへもやとへなんだわいの。
で、ぬまは、はなしいて、おかんがへにるほどおほきなものではないのです。うかとつて、むかぎしとさしむかつてこゑとゞくほどはちひさくない。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つぶし將軍の御落胤ごらくいんとの事なれば少こし安堵あんどしけれども後々のとがめおそ早速さつそく名主組合へ右のだんとゞけ夫より町奉行の御月番おつきばん松平日向守殿御役宅おやくたくへ此段を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一昨日をとゝひ佐伯さへきからとゞけてれた。御父おとうさんのつてたもので、おれののこつたのは、いまぢやこれだけだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ばん料理れうり使つか醤油しやうゆるので兩方りやうはうねて亭主ていしゆ晝餐休ひるやすみの時刻じこく天秤てんびんかついで鬼怒川きぬがはわたつた。村落むらみせでははずに直接ちよくせつ酒藏さかぐらつたのでさけ白鳥徳利はくてうどくりかたまでとゞいてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かくも、目下もつかきふけを、かの軍艦ぐんかんたすけられて、何處いづこでもよい、最近さいきん大陸地方たいりくちほうおくとゞけてもらつたならば、其後そのゝち必死ひつし奔走ほんさうして、如何どうにかして、豫定よてい期日きじつまでに約束やくそく凖備じゆんびとゝのへて
不愉快ふゆくわい人車じんしやられてびしい溪間たにまおくとゞけられることは、すこぶ苦痛くつうであつたが、今更いまさら引返ひきかへすこと出來できず、其日そのひ午後ごゝ時頃じごろ此宿このやどいた。突然とつぜんのことであるから宿やど主人あるじおどろかした。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ロミオ その鶴嘴つるはし鐵梃かなてこ此方こちへ。こりゃ、この書状しょじゃうをば、明日あすはや父上ちゝうへとゞけてくれ。その炬火たいまつをこちへ。さて、しか申附まうしつくる、如何いかこと見聞みきゝせうとも、こと/″\立離たちはなれ、わし仕事しごと妨碍さまたげをばすまいぞよ。
かたそばだて、前脚まへあしをスクとてて、みゝ圓天井まるてんじやうとゞくかとして、くわつ大口おほぐちけて、まがみはとほ黒板こくばん呼吸いきいた——
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そろひ浴衣ゆかたをはじめとして、提灯ちやうちん張替はりかへをおください、へい、いたゞきにました。えゝ、張替はりかへをおとゞまをします。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
年紀としわかし……許嫁いひなづけか、なにか、へておもひとでも、入院にふゐんしてて、療治れうぢとゞかなかつたところから、無理むりとはつても、世間せけんには愚癡ぐちからおこる、人怨ひとうらみ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とゞ山懷やまふところに、おほひかさなる錦葉もみぢかげに、眞赤まつか龍膽りんだうが、ふさ/\と二三りんしもむらさきこらしてく。……
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
巨大きよだいなるくすのきらさないために、板屋根いたやねいた、小屋こやたかさは十ぢやうもあらう、あしいただいせかけたのが突立つツたつて、ほとん屋根裏やねうらとゞくばかり。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
めて、差窺さしうかゞふ、母屋おもやの、とほかすかなやうな帳場ちやうばから、あかりすゑばうとゞく。いけめんした大廣間おほひろまなかは四五十でふおもはるゝ、薄暗うすぐら障子しやうじかず眞中まんなかあたり。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
深川ふかがは木場きば材木ざいもくしげつたら、夫婦いつしよになつてるツておつしやつたのね。うしたつて出來できさうもないことが出來できたのは、わたしねんとゞいたんですよ。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うなづいた。仰向あふむいてうなづいた。其膝切そのひざきりしかないものが、突立つツたつてるだいをとこかほ見上みあげるのだもの。仰向あふむいてざるをないので、しかも、一寸位ちよつとぐらゐではとゞかない。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分じぶんゆる色男いろをとこが、おもひをかけてとゞかぬをんなを、うしてひとほこすべ隨分ずゐぶんかぞれないほどあるのである。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
合點がつてんと、せるのでないから、そのまゝ荷車にぐるま道端みちばたにうつちやつて、をひくやうにしておくりとゞけた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此處こゝまでこらへたのは、飯屋めしや飼猫かひねこだ、とおもつたからで。う、ぢいさまのとゞかないのを見澄みすまして
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しぐれは、いまのまにんで、薄日うすびがさす……かへで小枝こえだのこつた、五葉いつはばかり、もみぢのぬれいろうつくしい。こぼれてるのはをしい。ばせば、せまにはで、すぐとゞく。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えんかどはしらに、すがりながら、ひと氣取きどつてつと、爪尖つまさきが、すぐに浴室よくしつ屋根やねとゞいて、透間すきまは、いはも、くさも、みづしたゝ眞暗まつくらがけである。あぶなつかしいが、また面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大家たいか高堂かうだうとゞかず、したがつてねずみおほければだけれども、ちひさな借家しやくやで、かべあなをつけて、障子しやうじりさへしてけば、けるほどでないねずみなら、むざとははひらぬ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゞいて、「中六なかろく火事くわじですよ。」とんだのは、ふたゝ夜警やけいこゑである。やあ、不可いけない。中六なかろくへば、なが梯子はしごならとゞくほどだ。しか風下かざしも眞下ましたである。わたしたちはだまつてつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なあ、ばあさん。——あらものばあさんが、つてるんだ。椋鳥むくどり畜生ちくしやう、もの干棹ほしざを引掻ひきか𢌞まはいてくれようと、幾度いくど飛出とびだしたかわからねえ。たけえからとゞかねえぢやありませんかい。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まへなるえん障子しやうじけた、十しよく電燈でんとうあかりとゞかない、むかし行燈あんどんだと裏通うらどほりにあたる、背中せなかのあたりくらところで、がブーンとく……の、陰氣いんきに、しづんで、殺氣さつきびた樣子やうす
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
中途ちうとちるのは、とゞかないので。砂利じやりが、病院びやうゐん裏門うらもんの、あの日中ひなか陰氣いんきな、枯野かれのしづむとつた、さびしいあか土塀どべいへ、トン……と……あひいては、トーンとあたるんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にバケツをげながら、「あとは、たらひでも、どんぶりでも、……水瓶みづがめにまだある。」と、この二階にかいとゞいた、とおもふと、した座敷ざしき六疊ろくでふへ、ざあーとまばらに、すだれをみだして
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あは細目ほそめけて、其處そこつて、背後うしろに、つきかげさへとゞかぬ、やままたやま谷々たに/″\を、蜘蛛くもごとひかへた、ほしとゞくろ洞穴ほらあなごとおほいなる暗闇くらがりつばさひろげて、姿すがたほそ障子しやうじ立棧たちざん
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しろ/″\と霜柱しもばしらのやうにつめたくならんで、硝子火屋がらすほやは、がけ巖穴いはあなひとひとまどけた風情ふぜいえて、ばつたり、あかりえたあとを、とゞく、どれもこれも、もやんで、
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)