“ほ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
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(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「そりゃア、叔母さんの言うのももっともです、しかし、まア、男がれ込んだ以上は、そうしてやりたくなるんでしょうから——」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「郷に入ったら郷に従えってね、こんなところで気取ったって誰もめやしないわ、すましてると、あたしたちで裸にしちまうわよ」
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「わん。」と高くえて、いきなり次の扉に飛びつきました。戸はがたりとひらき、犬どもは吸ひ込まれるやうに飛んで行きました。
注文の多い料理店 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そして二言目には、先生々々と言つて、画家の人柄をめ、画を賞め、そばにゐる舞妓を賞め、舞妓の食べるきんとんを賞めたりした。
米国の黒人は兎脳を生で食えば脳力を強くしまたそれをしてれば歯痛まずに生えると信ず(一八九三年版『老兎巫蠱篇オールド・ラビット・ゼ・ヴーズー』二〇七頁)
日本で天火、英国で火竜ファイアドレークと言い、大きな隕石いんせきが飛びえるのだ。その他支那で亢宿こうしゅくを亢金竜と呼ぶなど、星を竜蛇と見立てたが多い。
「そうじゃない。矢萩は四郎さんみたいな生命知らずをしがっている。会いに行けば、きっと喜んで、身内になれと大金を積むぜ」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
いつこの川辺かわべのおれたちのかえされてしまうかわかったものでない。あぶないとなったら、どこへかしをしなけりゃならん。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
どちらでも風向きのよい方に傾く屋根の上で見物の弥次馬は、米友とムクが生命いのちがけの曲芸を見てやんやとめ出してしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
第二十四圖だいにじゆうしずかべかゝつてゐるうしうま鹿しかなどのはかれ洞穴ほらあななか石壁いしかべりつけたり、またいたりしたうつしであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「おい君も一つつて見ろ」と与次郎がはしつまんでした。てのひらへ載せて見ると、馬鹿貝の剥身むきみしたのをつけやきにしたのである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
低い鼻と、ふくれた赤いっぺたをもった若者は、五本の指で足りずにモ一つのてのひらをひろげて数えたてたが、またフイと云い出した。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
ここまで深入りして来た以上カンジンカナメの点をったらかしたまま、後へ退く事は、学者としての良心が第一、許さないだろう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いくそうかの船はをいっぱいにって、一方にかたむきながら、ゆうゆうと川を下って行くと、こちらからは反対に上って行った。
なかには、海豹、海驢あしか緑海豹グリーン・シールなど十匹ほどのものが、ひれで打ちあいウオーウオーとえながら、狭いなかをねかえすような壮観だ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そっちの方から、もずが、まるで音譜おんぷをばらばらにしてふりまいたようにんで来て、みんな一度いちどに、ぎんのすすきのにとまりました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
上邸かみやしきと違ってお長家ながやも広いのを頂戴致す事になり、重役の気受けも宜しく、男がよくって程がいから老女や中老までもめそやし
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
みな、生きてかえるいくさとは思わないので、張りつめた面色めんしょくである。決死のひとみ、ものいわぬ口を、かたくむすんで、粛々しゅくしゅくをそろえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
共同水道のような処で水を汲んでいたおばあさんが、「はい帰って参りました」と返事をしてくれたので、私はっとして路地を抜けた。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
が、今はこの気味の悪い藪も狸などはどこかへい払ったように、日の光のんだ風の中に黄ばんだ竹のをそよがせている。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
反古ほごを、金の如くのべて、古画を臨摹りんぼする。ほそぼそとともる深夜のかげに、無性髯ぶしょうひげの伸びた彼の顔は、芸術の鬼そのものである。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれから、大分たちますわ。御商売は、ハンコ屋さんぢやないとおつしやつてゐましたわね、つて頂いたミトメは大事にして持つてを
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
今では浅草の百貨店松屋がぼ元の凌雲閣と同じ程の位置にありますので、凌雲閣から見た悪沢のスケッチを持って来ましたが
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その橋材の両端のツツラを通す穴の穿り方は、筏の材木の穴と同じであるらしいが、これも鉄線を代用する時代が来たらどう変るか分らぬ。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その部屋のカミンに燃えている火も、かげのうつった桃花心木マホガニイ椅子いすも、カミンの上のプラトオン全集も確かに見たことのあるような気がした。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
どうかすると女自身ですら自分の声に聞きれるほど巧みに唄つた。私も耳を傾けて、知らない世界の方へ連れられて行くやうな気がした。
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いや、っておけば、あの法然房ほうねんぼう以下、善信、聖覚法印、そのほかの裏切者や、売教徒どもが、いよいよなにをしでかすかわからぬ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ写楽が、煙管きせるを長く描いたもんだから、後々あとあとのうるさがりやが、高い背丈と釣合いの煙管なんて、そんなことをざいたそうなんだよ。喜代太郎が、どうして高えもんかな
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
内部なか這入はいるに従って闇は益々深かくなり、天井を見ても左右を見ても、無限に厚い岩ばかり、その面には象形文字や鳥獣の姿がってある。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とはわらわなかった。むしろわしの自慢以上に、たたえてくれた。世辞でなく、穴馬の町民や土民は皆、光秀様に心服していた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あさくも吹散ふきちりたり。かぜぎぬ。藪垣やぶがきなる藤豆ふぢまめの、さやも、まひるかげむらさきにして、たにめぐながれあり。たで露草つゆくさみだれす。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
将卒を強いて戦わしめんとすれば人心の乖離かいり、不測の変を生ずる無きをせず。諸将争って左するを見て王の怒るもまたむべなりというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
客のすくない電車の中は放縦ほうじゅうなとりとめもないことを考えるにはつごうがよかった。彼の頭の中にはっそりした小女こおんなの手首の色も浮んで来た。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「こっちには、ちゃんとわかってるんだ。……野郎共、こいつの身ぐるみ、がしてしまえ。裸にしたら、瓢箪池にりこめ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
この瞬間、我々にも昨日からの凄まじい響きやえたけっている狂瀾や、その上に浮んでいる無数の気泡の原因が、ハッと胸を衝いてきたのであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
とてもえろうて歩けるどこやあれしません、お春どんかて二度ばかり押し戻されて、うて行きましたわ、いろいろなもんが飛んで来ますよってに
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ふ、牛切ぎうきりの媽々かゝあをたとへもあらうに、毛嬙飛燕まうしやうひえんすさまじい、僭上せんじやういたりであるが、なにべつ美婦びふめるに遠慮ゑんりよらぬ。其處そこ
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
用に立つ人物は、十人の内六人め四人そしるものである。十人が十人譽めるものは侫奸ねいかんである。なほ一つ心得て置くべきは權道である。これを見切と云ふ。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
骨無しのとろとろ、立つべきを何けつる。深山みやま一木檞ひときかしの、風に立つ樹思へや。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
島の宮のも、寿をぐ為の目的から、伝来どほりの名を負せた代用動物だと定めてよい。
万葉集研究 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
露国の監視船に追われて、スピードをかけると、(そんな時は何度もあった)船のどの部分もメリメリ鳴って、今にもその一つ、一つがバラバラにぐれそうだった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
汝是に依りてさとるをえむ、いかなる愛にても愛そのものはむべきものなりと斷ずる人々いかにまことに遠ざかるやを 三四—三六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
神をけがす詞とめる詞と——乳香と血煙とが互いに入りまざった。砲声殷々たる戦闘裡に、世界は征服せられ救済せられた。——
何方いずかたにか行かんと行きつ戻りつしてつかれ死にせしを埋めたる跡なりとて、林道春はやしどうしゅんの文をりたる石碑立てりとある。
医者いしや内弟子うちでし薬局やくきよく拭掃除ふきさうぢもすれば総菜畠さうざいばたけいもる、ちかところへは車夫しやふつとめた、下男げなん兼帯けんたい熊蔵くまざうといふ、其頃そのころ二十四五さい稀塩散きゑんさん単舎利別たんしやりべつぜたのをびんぬすんで
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ネルロが大画家ルーベンスの魂にむかって、いろいろなめことばや、思いつめた祈りを捧げているのを聞きました。
こう云って、涙にうるむ男の顔を横目で見ながら、かまわずって行った。また我慢づよい者がグッと胆を据えて、眉一つしかめず怺えて居ると
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
名前の下へ印をかねばいくまいと云ふから、袂の中から坂本とつた見印みとめを出して捺いてやつたさうです。
いや、犯人はけっして、見物人をしがっちゃいないさ。君がいま感じたような、心理的な障害を要求しているんだ。どうして彼奴あいつが、そんな病理的な個性なもんか。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
庁の中務省なかつかさしょうへゆくまでは範宴にも分らなかったが、出頭してみると、意外にも、奏聞そうもんによって、範宴を少僧都しょうそうずの位に任じ、東山の聖光院門跡しょうこういんもんぜきせらる——というお沙汰さたであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爲方しかたがないから、御酒ごしゆむしを耐へてゐたのが、何時かんとののむべいになつて了ツたんですけれども、そりや誰だつて好んでのむべいになる者アありやしませんよ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『類函』に虎能く人気を識る、いまだ百歩に至らざるに伏してゆれば声山谷に震う、須臾しばらくして奮い躍りて人をつ、人勇ある者動かざれば虎止って坐り逡巡ためらい耳をれて去ると。
彼は何を見せにお見えになったのか知らんが、僕は何も見たい物なんかないといい、これから仕事にかからなければならないから、んのちょっとの間だけお会いするといって、客を茶の間に通した。
陶古の女人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
松陰の幼き、書をはさんで壠上ろうじょうに読み、義解せざるあれば、直ちに間の父もしくは叔父にいてただせりという。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そして、その行動が日没から夜にわたっていたのを幸いに、夜どおしで、道もなさそうな山に一すじの通りをり、全軍の八割まで山陰の盆地へ、かくしてしまった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老婆はその金で王成にいいつけて三百の良田を買わせ、いえを建て道具を作らしたので、居然たる世家きゅうかとなった。老婆は朝早く起きて王成に農業の監督をさし、細君に機織はたおりの監督をさした。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
我に二六かてからんとならば二七力量りきりやうの男どもこそ参りつらめ。你がやうの二八げたるさましてねぶりをおそひつるは、きつねたぬきなどのたはむるるにや。二九何のおぼえたるわざかある。
とう諸國しよこくから轉訛てんくわしたもの、およ梵語系ぼんごけいそののものも多少たせうある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
なぜというに、他の芋虫がうてきて、これを食い始めても、防ぐ方法がないからである。
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
しかるに学殖の富衍ふえんなる、老師宿儒もいまだ及ぶに易からざるところのものあり。まことに畏敬すべきなり。およそ人の文辞に序する者、心誠これをめ、また必ず揚攉ようかくをなすべきあり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
けふよりは、なを養はじ、土をり種をけよと。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
竹屋の空春は浅みか一羽の鳥さむざむとかける竹のうへ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
舞台でも何をえくさるんじゃい。かッと喧嘩けんかを遣れ、面白うないぞ! 打殺たたきころして見せてくれ。やい、はらわた掴出つかみだせ、へん、馬鹿な
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
てるうづむるごとき
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其の前に供えたつ具足は此の頃納まったものか、まだ新しく村名むらなり附けてあり、坊さんが畠から切って来たものか黄菊きぎくに草花があがって居ります、すると鼠の単物ひとえものを着
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
生きたる角面の四壁はそこに横たわり、ただ死骸の間にそこここにあるうごめきがようやくに見らるるのみだった。
かくのごとき光景は、重騎兵によってモスコヴァの大角面が占領された時いらい、かつて見られない所であった。ミュラーはもはやいなかったが、ネーは再びそこにいた。
顏を蔽うて恥を知れ! あの方はお前の眼をめるやうなことを、一寸でも仰しやつたか。
そしてもしか私がめられてもいゝやうな事でもしたら、惜しまずにめて下さるのよ。
は 天をへり。
の 末葉うらば
それは廊下への出入口で、その扉にも昆虫の図が、彫刻られてあることはいうまでもない。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その模様も昆虫である。戸外そとに向かって二つの窓、その窓縁にも昆虫の図が、非常に手際よく彫刻られてある。窓を通して眺められるのは、前庭に咲いている花壇の花で、仄かな芳香が馨って来る。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
子路の仕事は孔家こうけのために宰としての地を治めることである。衛の孔家は、魯ならば季孫氏に当る名家で、当主孔叔圉はつとに名大夫のほまれが高い。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
きょうでは暴民の凌辱りょうじょくを受けようとし、宋では姦臣かんしん迫害はくがいい、ではまた兇漢きょうかん襲撃しゅうげきを受ける。諸侯の敬遠と御用ごよう学者の嫉視と政治家連の排斥はいせきとが、孔子を待ち受けていたもののすべてである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
 〽惚れてかようになに怖かろう。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おれは、此世に居なかつたと同前の人間になつて、現し身の人間どもには忘れされて居るのだ。憐みのないおつかさま。おまへさまは、おれの妻の、おれに殉死ともじにするのを、見殺しになされた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
シイカが橋を渡るまでけっして外したことのない仮面が、の明りの中で、薄気味悪い無表情を示して、ほんのりと浮び上っていた。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
沙魚はぜ鮎並あいなめを買って、それで酒を飲んだ。うまかった。沙魚は丁度ちょうど懐卵期で、卵もぼ熟しかかっていたが、それでもうまかった。晩に高梨を訪ねた。
りくじるまだ見ぬ海の靈獸くしけもの
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「なんでおれを縛りゃあがるのだ」と、友蔵はえるように呶鳴った。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
宮はその梗概あらましを語れり。聴ゐる母は、彼の事無くその場をのがれ得てし始末をつまびらかにするをちて、始めて重荷を下したるやうにと息をきぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
暗いなかで獣のえる声がけたたましく聞えた。同時にここへ駈けてくる草履の音が聞えた。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ト、いひつつしわぶき一咳ひとつして、く息も苦しげなり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
そのバーク州の白馬ホワイト・ホールスというは、絶頂の高さ海抜八五六フィートある白馬山の北側いただきより少し下にり付けた長三七四フィート、深さおよそ二フィートの巨馬像で、面積二エーカーほどあり。
見るが如し所によりてはやことばの斯く變るは面白し此のかにいろ/\歌あれど今作り添へたるものにて卑俗聽くにたへず諸國風俗唄の古きにはよきが多し是等取調べてあしきは捨てよきを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
砂山が急にげて草の根でわずかにそれをささえ、そのしたがけのようになってる、其根方ねかたに座って両足を投げ出すと、背はうしろの砂山にもたれ、右のひじは傍らの小高いところにかかり、恰度ちょうどソハにったようで
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
其船の船頭は目腐めくされの中年の男で、今一人の若い方の船頭は頻りに荷物を運んで居た。髪を束ねたかみさんはとまやら帆布やらをせつせと片付けて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「おれの持船も、ことし中には百艘になろう。国もとでらせている鉱山かなやまも、来年からは黄金を生むだろう。夜が明けて、鳥が啼けば、金がえる——」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青草あをくさなかぼつして毒蛇どくじや直接ちよくせつれようとするものは一にんもないけれど、とほくから土塊どくわいつたり、ぼうさきでつゝいたりいたづらにおこきばふるはせることは彼等かれらこのんでするところであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ただ普通の習慣に従って逢おうとすればすぐにでもあえるのであるが、女の方から進んで何とか言ってくるまではしばらく放棄っておこう。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
つめたくつて本當ほんと晴々せえ/\とえゝみづぢやねえか、井戸ゐどてえに柄杓ひしやくすやうなんぢや、ぼか/\ぬるまつたくつて」おつたは獨語ひとりごとをいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
最も強いものであると思われる、眼前の常念山脈では、大天井と燕岳に乱れた雲が、組んずつれつしている。
槍ヶ岳第三回登山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
今日実習じっしゅうんでから農舎のうしゃの前に立ってグラジオラスの球根きゅうこんしてあるのを見ていたら武田たけだ先生も鶏小屋にわとりごや消毒しょうどくだか済んで硫黄華いおうかをずぼんへいっぱいつけて来られた。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そら、持ってけ、持ってけ。賭博場ぼんござのまじないだ。みを食えばかだ。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海を渡って少眠まどろむ内、諸竜にその珠を盗まれしが、眼覚めて、珠をとりかえさずばついに空しく帰らじと決心し、一の亀甲をって海水を汲みさんとした。
(毛綱を振って見せ)そなたと娘を一体にくくし、永劫えいごう青銅せいどうの像にしてのける。そして未来、世々生々、この恋の双生像を見るものには、一目で身を焼く程の恋のむらを起させる。阿難どの。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
有明のかげにふたりの子の寝顔を見まもっていると、やがて温かなおちついた気持がわいてき、それがしぜんと良人のうえにつながるのだった。
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
廻らんと桐山きりやまが見世の角迄かどまで來りし時足の爪先つまさきへ引掛る物ありしゆゑ何心なく取上見れば縮緬ちりめん財布さいふなりしかば町内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ここを以ちて仁岐ににぎの命、初めて高千たかちたけあも神倭かむやまと天皇すめらみこと、秋津島に經歴したまひき。化熊川より出でて、天の劒を高倉に獲、生尾こみちさへきりて、大き烏吉野に導きき。
また「余既ニ蘭ヲ滋ウルコト九えんナリ又蕙ヲ樹ウルコト百ナリ」とも出で、『詩経』には「士ト女ト方ニ蕑ヲ秉ル」(蕑はすなわち蘭である)とあり
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
水戸みなとの神のひこ櫛八玉くしやたまの神膳夫かしはで二一となりて、天つ御饗みあへ二二獻る時に、ぎ白して、櫛八玉の神鵜にりて、わたの底に入りて、底のはこひあがり出でて二三、天の八十平瓮びらか二四を作りて
「こつちはそれだひどかねえやそんでもなあ」おつぎは安心あんしんしたやうにそつとはなした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
水はあまりなかったが、大きな一枚石で、下りられそうもない、崖へ来ると、雪解の水が、ちょろちょろ流れる、その上へかざした白樺の細い幹が、菅糸を巻いたような、白い皮をぐらかして
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
海風に髪をなぶらせている、っそりとしたスパセニアの姿を眺めているうちに、私は勝気なくせに淋しそうな娘の、美しいからだを力一杯抱き締めてやりたいような
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
李徳裕その世を惑わすを恐れ、かつて捕えてこれをす、竜またついに神たる能わざるなり〉、これは美麗な大蠑螈いもりを竜と崇めたのだ。
この温泉をんせんるおきやくさんのうちじア旦那だんなが一とうだ。』とおほげさにめそやす。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
田内主税、名は、月堂と号す、会津の人だと云ふのみである。わたくしは嘗て正堂の一号をも見たことがある。市河三陽さんに聞けば、輔は親輔の省で、あざなは子友であつたと云ふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ゆえに雨天うてんの日は終日しゅうじつ開かなく、また夜中もむろんじている。閉じるとその形がふでの形をしていてねじれたたんでいる。色は藍紫色らんししょくで外は往々褐紫色かっししょくていしているが、まれに白花のものがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
母君はゝぎみにキスしてき給ふ愛らしさ、傍目わきめにも子を持たぬ人の覚えあたはぬ快さを覚え申しさふらふ巴里パリイとははや三時間も時の違ひさふらふらん。味気あぢきなくさふらふかな。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
丈八は、冷えたのをして
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)