)” の例文
場処ばしょもどの辺ということが土地の人にはよくわかっている。矢野※という荘園のうちで、人里ひとざとより一里ばかり離れたところだとある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
将卒を強いて戦わしめんとすれば人心の乖離かいり、不測の変を生ずる無きをせず。諸将争って左するを見て王の怒るもまたむべなりというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
部屋へやには箪笥たんすほかに、鏡台きやうだいもある。針函はりばこもある。手文庫てぶんこもある。秘密ひみつがあるとすれば、其等それらなかにもいとはしがたい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
アストンにしても、黒住くろずみにしても、その説くところ間違いなきをし難いが、我が固有こゆうの教えは知恩ちおんの念にてるものなりとの一条はあやまちなしと信ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
風速かざはやの三浦廻うらみ、貝島のこの高殿は、あめなるや不二をふりさけ、清見潟満干みちひの潮に、朝日さし夕日照りそふ。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
我我の社会は奴隷なしには一日も安全をし難いらしい。現にあのプラトオンの共和国さへ、奴隷の存在を予想してゐるのは必しも偶然ではないのである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかりしかして子弟の沈溺するを見、手をきょうして救わずんば、なんぞ父母兄弟たるにあらん、なんぞ民をするにあらん、またなんぞ不仁不慈のそしりを免れんや。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
当局者はく罪を罰するを知れり、乞い問う、罪をあがない得たる者を救助するの法ありや、再び饑餓きがの前にさらして、むしろ監獄の楽しみを想わしむることなきをし得るや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
というて、松千代様のお命を護らんがために、一党いよいよ織田方に異心なきを示すならば、村重の毒手にかかって獄中にある官兵衛様のお命は到底これをがたいであろう
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にわかに山巓さんてんの観測所に閉居するに至らば、あるいは予よりもきに倒るることなきをせず、ことに幾分測器の取扱とりあつかい位は、心得あるを要するがゆえに、ついにこれを伴わざるに決したり。
もし気絶えいたら救いようがない。汝すでに学成ったから努力して立身をはかれ、我まさに汝を助けてよわいを延ばし、上帝に請いて汝に官栄を与うべし、また疾病なきをせんと言って別れた。
斉泰の輩、もとより諸王の帝に利あらざらんことを恐る、詔をむるの事も、世其例に乏しからず、かくの如きの事、未だ必ずしも無きをせず。然れどもれ推測の言のみ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
本荘ほんじょうに対する新荘も同じく追加開墾地である。その本荘が公田すなわち国の領地である時には荘と言わずにごうまたはという。新郷しんごう別保べっぽ新保しんぽなどは本郷ほんごう本保ほんぽに対する別符である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)