)” の例文
パリーでは、一人の者をめてる評論を読むときには、「だれのことが悪く言われてるか」と考えるのが、いつも慎重な方法である。
どちらでも風向きのよい方に傾く屋根の上で見物の弥次馬は、米友とムクが生命いのちがけの曲芸を見てやんやとめ出してしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
源之助はここで腰元濡衣、橋本屋の白糸をした。杉贋阿弥の劇評は元来余りめぬ方であるが、橋本屋の白糸は絶技とほめたたえている。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
我が事、人の事と言わず、くだらない物がめてあったり、面白い物がけなしてあったりするのを見て、不公平を感ずるのである。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
予これを忖度そんたくす〉とは夫子ふうしいいなり、我は自分でっておきながら、何の訳とも分らなんだに夫子よくこれを言いてたとめたので
雪之丞と呼ばれる役者は、大そう美しゅうなった——と、められて、小娘のように、ポッと頬を染めたが、つくづく相手を見上げて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「などと云うがね、お前もお長屋月並だ。……生きてるうちは、そうまではめないやつさ、顔がちっときつすぎる、何のってな。」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それだけの記憶で、しかも馬場さんは、その男を、りっぱな芸だと、世にもはっきりめていた。私のやまと、またしかりだ。
随筆 寄席風俗 (新字新仮名) / 正岡容(著)
いぎりす旦那マスターの御政治をこころの底からめたたえて、この区域から立ち昇るWARNという感謝の声々が一つ一つ、忠実な銀蠅ぎんばえに化けて
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「ダビデの子にホサナ、むべきかな、主の御名によりて来る者、いと高き処にて、ホサナ」と熱狂して口々に歌うのでした。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
しょうちゃん(お絹たちの弟)がめていたから、いい人でしょうね。けど奥さんもずいぶん骨が折れますわ。幾歳だとか……」
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ありがたや、ハレルヤとぞ涙ながしてりませば、雀もともに、ハレルヤ、ハレルヤと眼を上げ涙ながして御空を仰ぐ。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
人をめて言うときに、あの人は感情家であるから、言うことが活気があるとか、あるいは精神がこもっているなどという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
むべきかな、島はもみじして鴛鴦おしのごとくにみえる。この島は国のはじめのころはたぶん一羽の鴛鴦だったのであろう。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
道時はれ迄もく御目に懸るさうでしてね、大層めて居りましたの、恐るべき偉い人物であると敬服して居るんですよ——けれど梅子さん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
むかしでも画をめるのに、「美くしい」といってほめる人より、「実物の通り」といってほめる人が多かったに違いない。
魂はいかに潔白であろうとも、最も清い交わりのうちにも、恋人同志と朋友ほうゆう同志とを区別する神秘なむべき色合の差を、人は感ずるものである。
この建築の壮麗なことをおめなさい、また免許状の訳文をインドやポルトガルへ送って信長の恩寵を知らせるとお云いなさい、というのであった。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ある評家は胡麻塩頭のアカデミシヤンが是丈これだけ涙つぽい戯曲を書いた事は近頃の成功だとなかば冷笑的ではあるがめて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
われ毛虫けむしたりし時、みにくかりき。吾、てふとなりてへばひとうつくしとむ。人の美しと云ふ吾は、そのかみの醜かりし毛虫ぞや。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まわりの人たちは皆父をうまいと言ってめた。語り終った父は、いつものなりになって、皆の所にやって来て挨拶した。いかにも幸福そうであった。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
私はあまりめられて顔を赤くし度を失ひましたが、先生は非常な満足で、それから長い時間、日の落ちるまで、父の東洋風な招宴に応じてくれました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
める。そうなるとこちらも気を取り直さねばならず、暫く話しているうちにいつか嘔気をも忘れてしまった。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
「そんなことはない——君の行つた跡、行つた跡へ新聞を無代配布もしたし、世間でも評判がえい樣だ。留守中の社長代理も面白いとめてをつたぞ。」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
自分はこの事実を諸君の前に闡明せんめいすると共に、併せて全宇宙を我々の為に創造した神に、心からな感謝を捧げたいと思ふ。神の御名みなむべきかなである。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さすがに美術商よとむべきであるが、岩田天門堂は、話の途中で壁間の画を一目見るとおどろきの声をあげた。
が、れるにしたがって、彼のなかの苦しいものは除かれて行ったが、何度逢っても、繊細で清楚せいそな鋭い感じは変らなかった。彼はそのことを口に出してめた。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
数代の単于に従ってかんと戦ってはきたが、まだ李陵ほどの手強てごわい敵にったことはないと正直に語り、陵の祖父李広りこうの名を引合いに出して陵の善戦をめた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いろどりがなく明るいものを好む近代人からは馬鹿にされましょうし、またこんな品をめる吾々も攻撃されるかと思いますが、しかしこんな静けさ質実さこそは
多々良の雑器 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ペルシアの立法者ゾロアスタアによれば、樹木を植え、畑を耕し、子供を産むのは、むべき行為である。
る日又、諸君は、諸君があれほど愛してめていた、あのすばしこい歩きぶり、あの淡泊な処作、あの嬉しそうな話しぶりの、あの可愛い娘の話を聞くであろう。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
め、尊ぶことを知っていたと同時に、讃めるにも、尊ぶにも「彼自身」をなくして出来るだけ多勢群れている方へと、向う見ずに走って行くような人ではなかった。
地は饒なり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
なぜなら、この家で、お祖父さんは彼の第一の味方であり、その第一の味方が、他の人たち以上に彼をめていないわけはない、と彼は確信しきっていたからである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
皺面じゅうめんつくり涙は出れど、稚気おさなぎめられたさがいっぱいに、こちゃ泣きはせぬわいと額をでて泣顔を、隠す心はさすがにも名に負う武士の種なりき。〔伽羅千代萩めいぼくせんだいはぎ
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
然も主は僕を捨てず、僕は主を離れず、木車一輛、山海を越えて百里の外に旅す。むべきかな会津武士、この気節を以て而して斯の如し、深く人間を学ぶに堪えたり。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ところで彼女の口吻こうふんに從へば、私の『好男子ぶりヴオテマル』をべら/\夢中になつてめ立てるといふのが、彼女の癖でした。其處がセリイヌのあなたと全然違ふところですね。
読売の河辺さんだったか、豊島さんを非常にめていた。豊島さんの事を考えると、本当に死んでは困ると思った。長生きして一生懸命な仕事を一つでも残したいものだ。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ふ、ふ、川へ落ちたぐらいが何だね、借金が何だね、き世の波におじ気がつきましたかね。……おとなしいお子供さん、そのうちにどこかの小父さんがめてくれるだろう。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
産を失い子女ことごとく死せし時も彼は「われはだかにて母のたいでたりまた裸にてかしこに帰らん、エホバ与えエホバ取り給う、エホバの御名みなむべきかな」(一の二一)といい
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
太宰帥大伴旅人の、「酒をむる歌」というのが十三首あり、此がその最初のものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「そうとも! それに先生は平常ふだんから高山々々とめちぎっていたから多分井下伯に言ってお梅さんを高山に押付ける積りだろう、いサ高山もお梅さんなら兼てねらっていたのだから」
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かつて僕が腹立まぎれに乱暴な字を書いたところが、或人が竜飛鰐立りょうひがくりつめてくれた事がある。今日のも釘立ち蚯蚓みみず飛ぶ位の勢はたしかにあるヨ。これで、書初かきぞめもすんで、サア廻礼だ。
初夢 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「空無の味」のうちに「わが心、諦めよ」とか、「恋ははや味わいをもたず」とか、または「むべき春は薫を失いぬ」などの句がある。これらは諦めの気分を十分に表わしている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
利家の威も強く徳もあり器量も有ったので上首尾に終ったのである、殿下が利家に此事を申付けられたのも御尤ごもっともだった、というので秀吉までがめられて、氏郷政宗の仲直りは済んだ。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
きてときにはさんざん悪口わるぐちわれたものが、んでからくちきはめてめられたり、またその反対あべこべに、生前せいぜん栄華えいがゆめたものが、墓場はかばってからひどいはずかしめをけたりします。
また、甘い家庭に長女として育てられて来たかの女は、人に褒められることその事自体にいては、決して嫌いではない。で、面会中はかなり好い気持にもなって、めそやされていた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
鶴吉は実際人の蔭口にもめ言葉にも耳をさずにまめ/\しく働きつゞけた。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
彼ならめてくれただろうに——君もやっと一人前に詩人になったね、と。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
この句を芭蕉が丈草出来でかされたりとか何とか言ってめたという事がある。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
お前を尊敬する全ての男はお前を貨物自動車にのったヴィクトリア女皇だとめたたえる。俺の愛は昨日よりも深くお前を愛する。すると彼女の癇高かんだかい水銀色の声が市内の電線を引ちぎってしまう。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)