)” の例文
ちらりとふりかえって、呑みかけていた盃を、うまそうにぐびぐびと呑みすと、しずかに益次郎は、かたわらの刀を引きよせた。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「おい君も一つつて見ろ」と与次郎がはしつまんでした。てのひらへ載せて見ると、馬鹿貝の剥身むきみしたのをつけやきにしたのである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ヤッローさん、トーケルンの水がされて、はたけになったら、おまえさんたち野ガモは、来年らいねんは、いったいどうなさるんだね?」
「やいやい。機嫌ばかりよくしやがって、焼酎の値段もまだ訊いていねえじゃねえか。酒屋さん、一ト桶したよ、いくらだい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沈丁花ちんちょうげの花のしたのをお風呂へ入れてあげるから入りなさい。そりゃいいにおいで気がさんじるから。」母は話さなかったが
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
のきしたるは、時雨しぐれさつくらくかゝりしが、ころみぞれあられとこそなれ。つめたさこそ、東京とうきやうにてあたかもお葉洗はあらひころなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
へえ、これは、その、いえまえとおりますと、まきがきにこれがかけてしてありました。るとこの、しりあながあいていたのです。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しろ切干きりぼしさずにしたのであつた。切干きりぼしあめらねばほこりだらけにらうがごみまじらうがひるよるむしろはなしである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
家のまわりには油をいた傘のまだかわかないのが幾本となくしつらねてある。清三は車をとどめて、役場のあるところをこの中爺にたずねた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
しかし先生の鍛煉たんれんにはいつも敬意を感じてゐる。先生は或時博物学教室へき、そこにあつたコツプの昇汞水しようこうすゐを水と思つて飲みしてしまつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「そうさ、さっきいたまつの木のえだっかけてしてあるのさ。なにしろぎもというやつは時々ときどきして、洗濯せんたくしないと、よごれるものだからね。」
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
別にふなはえしたのを粉にした鮒粉ふなこと云うものを用意してこの二つを半々に混じ大根の葉をったしるくなかなか面倒なものであるそのほか声を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
子供らがさけんでばらばら走って来て童子にびたりなぐさめたりいたしました。る子は前掛まえかけの衣嚢かくしからした無花果いちじくを出してろうといたしました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そうだ、そうしてバルブレンのおっかあがさざ波を立てている小川へ出て、いまあらったばかりのぬのを外へしている。
梅の小枝に妙な物がと目をとめて見ると、かわず干物ひものが突刺してある。此はイタズラ小僧の百舌鳥もずめが食料にしていて其まゝ置き忘れたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
のどはカラカラにからびて、舌が石のようにし固まり、心臓は咽のあたりまで飛び上がってくるかと感じられた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
没義道もぎどうに頭を切り取られた高野槇こうやまきが二本もとの姿で台所前に立っている、その二本に竿ざおを渡して小さな襦袢じゅばん
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
我は此等の部下を分ちてかなたに遣はし、身をす者のありや否やを見せしむべければ、汝等之と共に行け、彼等禍ひをなすことあらじ 一一五—一一七
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
した猿みたいだ。これからは、毎朝、クリイムとかヘチマコロンとかを用いて、顔の手入をしなければならぬ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのなかでもとりわけ立派りつぱ總縫模樣そうぬいもやう晴着はれぎがちらと、へいすきから、貧乏びんぼう隣家となりのうらにしてある洗晒あらひざらしの、ところどころあてつぎ などもある單衣ひとへものをみて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
父がこの雑談集を公に致しますのも、恐らく法律談は乾燥であるという濡衣ぬれぎぬしたい微意でありましょう。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
父がこの雑談集を公に致しますのも、恐らく法律談は乾燥であるという濡衣ぬれぎぬしたい微意でありましょう。
法窓夜話:01 序 (新字新仮名) / 穂積重遠(著)
念のため格子へブラ下げて朝陽にしてあつた袷が辨次郎のだといふことを確かめ、その腰のあたりからほこりをつまみ取つて、それから二人の履物はきものをしらべて
ははねこは、まどいた、ふとんをしてある、二階家かいやにつくと、大胆だいたんにもへいをよじのぼりました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
されば悟れるとは己れが迷を知ることにして、そをだつせるのいひにはあらず。哀れ、戀の鴆毒ちんどくかすも殘さず飮みせる瀧口は、只〻坐して致命の時を待つの外なからん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
マスノはまっさきにコップをした。松江がつぐのをつづけてしてから、大きなためいきをし
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
お兼 (戸棚とだなからさらがきを入れて持ちきたる)さあ、これをおあがり。秋にかあさんが干しておいたのだよ。私はちょっとお台所を見て来るからね。(裏口から退場)
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
こけの生えた鱗葺こけらぶきの屋根やねくさつた土台、傾いた柱、よごれた板目はめしてある襤褸ぼろ襁褓おしめや、ならべてある駄菓子だぐわし荒物あらものなど、陰鬱いんうつ小家こいへは不規則に限りもなく引きつゞいて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
書生が可厭いやさに商売を遣らうと云ふのなら、未だほか幾多いくらも好い商売は有りますさ、何を苦んでこんな極悪非道な、白日はくじつとうすとはうか、病人の喉口のどくちすとはうか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「さいかくぎもけずる、薄刃うすばの小刀を、いでくれと頼まれましてあたしが磨ぎました」
あやしきなりかみりなして、胡粉ごふんぬりくり彩色さいしきのある田樂でんがくみるやう、うらにはりたるくしのさまもをかし、一けんならず二けんならず、朝日あさひして夕日ゆふひ仕舞しま手當てあてこと/″\しく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
砕けた源太が談話はなしぶりさばけたお吉が接待とりなしぶりにいつしか遠慮も打ち忘れ、されていなまず受けてはつと酒盞さかずきの数重ぬるままに、平常つねから可愛らしきあから顔を一層みずみずと
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
先づ秋祭の準備として柳河のあらゆる溝渠はあらゆる市民の手に依て、一旦水門の扉を閉され、水はされ、魚はすくはれ、腥くさい水草は取り除かれ、どぶどろは奇麗に浚ひ盡くされる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
平馬は首をひねりひねり二三こんした。上酒と見えていつの間にか陶然となった。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
には麻手あさてかりししきしぬ東女あづまをみなわすれたまふな 〔巻四・五二一〕 常陸娘子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いもとふかし芋とをならべると、三人がメガホンを使って、さわがしく呼びたてた。すると客は、みんな三人組の方へ吸いとられてしまった。三人組の声は、ますます調子にのっている。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おなか こいつの企みに乗せられたと、わかっていながら濡れ衣がせないのは、わたしの不運だと諦めましょう。あなたあなた、わたしは江戸へやられます。ご無事でいてくださいまし。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「今日は大堀がさるんで、ひるからだと小鮒と鰻が手にはいるんだがね。」
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
大じゃは、目の前に八つのさかおけがならんでいるのを見ると、いきなり八つの頭を一つずつその中へつっこんで、そのたいそうなお酒を、がぶがぶがぶがぶとまたたくまに飲みしてしまいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
穀物だのいもだのがしてあって、むしろの上で二三羽の鶏が餌をあさって歩いていると、何に驚いてか、キャキャキャキャ、けたたましくその鶏が鳴き出して、小屋の屋根の上へ飛んで羽バタキをする
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「これはまないたじゃありません。テーブルです。お魚はにしんしたのです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
余はかの燈火ともしびの海を渡り来て、この狭く薄暗きこうじり、楼上の木欄おばしましたる敷布、襦袢はだぎなどまだ取り入れぬ人家、頬髭ほおひげ長き猶太ユダヤ教徒のおきな戸前こぜんたたずみたる居酒屋、一つのはしごはただちにたかどのに達し
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
軒に縄を渡して阿母さんがしたうり雷干かみなりぼしを見て居ると暈眩めまひがする。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
すべ肌着はだぎ日々ひゞあらひ、夜着よぎは六七にちごとすべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
そうして、彼は、それを老兵ろうへいのごとく飲みす。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
丘の上に 濕けたからだをしてゐる斑牛まだらうし
閒花集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
ぎぬは紺の単衣ひとえのよくかわ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「鳰鳥、盃をなぜさぬ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
みんなはね、トーケルン湖の水をしてしまうから、来年らいねんは、みずうみの底が部屋へやゆかのようにかわいてしまうだろうって言ってたのさ。
「おめえ、さういに自分じぶんとこれえばかしかねえでせな」とよわものところさかづきあつめてこまるのをようとさへするやうつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)