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刻
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ほ
ふりがな文庫
“
刻
(
ほ
)” の例文
製糸工場の最初の経営者の墓は、
花崗石
(
みかげいし
)
の立派なもので、寄付金をした有志の姓名は、金文字で、高い墓石に
刻
(
ほ
)
りつけられてあった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
あれから、大分たちますわ。御商売は、ハンコ屋さんぢやないとおつしやつてゐましたわね、
刻
(
ほ
)
つて頂いたミトメは大事にして持つてを
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
この通り確かに昭和十三年、四月、十三日と
刻
(
ほ
)
ってある。
態々
(
わざわざ
)
指を当てて、一字一字をさすって見たが、決して読み誤りではなかった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
前髪を立てた、艶々しい髪に包まれた、美玉のような彼の顔は、淡く燈火の光を受けて、
刻
(
ほ
)
りを深くし、彫刻のような端麗さを見せていた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
黒い
苔
(
こけ
)
の生えた石地藏に並んで、『左とうくわうゐん』と
刻
(
ほ
)
つてある字の
纔
(
わづか
)
に讀まるゝ
立石
(
たていし
)
の前を、北へ曲つて
行
(
ゆ
)
くと
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
▼ もっと見る
そうしてそれを敬太郎の手から受取って、「へえ、
蛇
(
へび
)
の頭だね。なかなか
旨
(
うま
)
く
刻
(
ほ
)
ってある。買ったんですか」と聞いた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは松や桜や雑木林の中をぬける急
勾配
(
こうばい
)
の坂で、岩に踏段が
刻
(
ほ
)
ってあるだけだから、雨のときなどは滑って、とうてい登り下りはできないし、ふだんでも
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この人は前にも話しました通り、高橋鳳雲の息子さんで、その頃は鉄筆で筒を
刻
(
ほ
)
って職業としていました。
佐竹の原へ大仏をこしらえたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
折々
(
おりおり
)
硝子戸に当る音がした。鼠色の服を着た、肥ったBの体は大理石を
刻
(
ほ
)
った像のように白い床の上に浮き出していた。Kは痩せた手を伸ばしてBの両手を胸の上で組ませた。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これはね、その石の柱に紙をおっつけて、墨のついた綿で
叩
(
たた
)
いて作ったんだ。だから字の
刻
(
ほ
)
ってあるところだけ白く残ってるだろう。
此処
(
ここ
)
にあるこの白い細い筋が面白いんだよ。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
大きな白堊の殿堂が僕に近づく。僕は殿堂の門に近づく。天空のなかから浮き出てくるように、殿堂の門が僕に近づく。僕はオベリスクに
刻
(
ほ
)
られた文字を眺める。僕は驚く。僕は
呟
(
つぶや
)
く。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
英治という印を
刻
(
ほ
)
ってもらったのを、今もって
失
(
な
)
くさずに用いているのである。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芭蕉の記念碑で、「鷹一つ見付けてうれし伊良湖崎」と
刻
(
ほ
)
りつけてあつた。
伊良湖の旅
(新字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
そして極めて高雅な図案でイニシアルを組合わせ、あの文句を
刻
(
ほ
)
らせましょう。私は万年筆は余りつかわず特に仕事には。だからよく考えて或はペン軸にするかもしれません。よく考えましょう。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
山姥
(
やまうば
)
なんぞも団十郎のいきで、
彫刻
(
ほりもの
)
のように
刻
(
ほ
)
りあげてゆきたい方だが、
野田安
(
のだやす
)
さんて、
松駒連
(
まつこまれん
)
の幹事さんで芝居に夢中な人が、川上さんのお貞さんを助けて出ろと、なんといってもきかないのでね
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「あの顔では、喰い付き悪うございます、『鬼の面』とはよくつけた
綽名
(
あだな
)
で、
刻
(
ほ
)
りが深くて、道具が大きくて、熊坂長範みたいですが、親切で思いやりが深くて、涙もろくて几帳面で、申分のない男ですよ」
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その石には悪逆塚と
刻
(
ほ
)
らせてあつた。
我鬼
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
雲を
彫
(
ちりば
)
め
濤
(
なみ
)
を
刻
(
ほ
)
り
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
(碑には、髭題目が
刻
(
ほ
)
られてあるに相違ない)こう思って、頼母は、縁から下り、塚の方へ歩いて行き、碑を仰いで見た。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「をぢさん、ハンコ
刻
(
ほ
)
つておくれよ」といふ。見ると三十前後の、黒光りの顔をした、
垢
(
あか
)
だらけのお客さんだ。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
この人は前にも話しました通り高橋鳳雲の息子さんで、その頃は
鉄筆
(
てっぴつ
)
で
筒
(
つつ
)
を
刻
(
ほ
)
って職業としていました。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
山川の曲つて流れてゐるところまで來ると、其處からが天滿宮の昔の領地で、「
殺生
(
せつしやう
)
禁斷」と深く
刻
(
ほ
)
つた大きな石標が川端に
苔
(
こけ
)
むして、倒れさうになつたまゝ立つてゐる。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それはたしかだといって、秀之進は、ちょうど道が二つに
岐
(
わか
)
れるところへ来ていたのをずんずん左へはいっていった。そこにある石の道標には、信濃路右と
刻
(
ほ
)
ってあった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうして
瑪瑙
(
めのう
)
で
刻
(
ほ
)
った透明な
兎
(
うさぎ
)
だの、
紫水晶
(
むらさきずいしょう
)
でできた
角形
(
かくがた
)
の印材だの、
翡翠
(
ひすい
)
の
根懸
(
ねがけ
)
だの
孔雀石
(
くじゃくせき
)
の
緒締
(
おじめ
)
だのの、金の指輪やリンクスと共に、美くしく並んでいる宝石商の
硝子窓
(
ガラスまど
)
を
覗
(
のぞ
)
いた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
刻
(
ほ
)
り方が旨いとか、このしわやひだの
刻
(
きざ
)
み方が細かいとか、また他の書いたものが拙いとか、うまいとか、なつてゐるとかゐないとかいつて低徊してゐるやうなことはないはずである。
三月の創作
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「あの顏では、喰ひつきは惡うございます、『鬼の面』とはよくつけた
綽名
(
あだな
)
で、
刻
(
ほ
)
りが深くて、道具が大きくて、熊坂
長範
(
ちやうはん
)
みたいですが、親切で思ひやりが深くて、涙もろくて几帳面で、申分のない男ですよ」
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
雲を
彫
(
ちりば
)
め
濤
(
なみ
)
を
刻
(
ほ
)
り
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
春陽に浸っている道了塚は、その岩にも、南無妙法蓮華経と
刻
(
ほ
)
ってある
碑
(
いしぶみ
)
にも、岩の間にこめてある
土壌
(
つち
)
にも、花弁や花粉やらがちりばめられていた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なかなか許さなかったものです。仕上げをするのを、ケズリ師といって、これはまだ未熟の職人の仕事で「
刻
(
ほ
)
り」をするようにならなければ、仏師の資格はないのです。
幕末維新懐古談:10 仏師の店のはなし(職人気質)
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
自分の左の指に
嵌
(
は
)
めた認印の
刻
(
ほ
)
り込んである太い指輪を外して見せたり、帶の間から脱け落ちさうになつてゐた、兩蓋に
斜子
(
なゝこ
)
を切つた虎屋の最中のやうな大きな金時計を出して見せたりした。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
到るところにその恋心のひろく展げられてあるのを、細かく織り込まれてあるのを、巧に
刻
(
ほ
)
られてあるのを静夫は見詰めた。恐らく普通の旅客が見たなら、こんなところはなんでもないだらう。
赤い鳥居
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「はあ、あの、ミトメを
刻
(
ほ
)
つてもらひたいと思ひまして」
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
一口に云えば
和蘭陀
(
オランダ
)
風で、柱にも壁にも扉にも、昆虫の図が
刻
(
ほ
)
ってある。真昼である、陽があたっている。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と
欷歔
(
すすりなき
)
の声がした。陶器師が泣いているのだ。……月子は静かに手を延ばしたが
鑿
(
のみ
)
と
槌
(
つち
)
とを取り上げると、サク、サク、サクと
刻
(
ほ
)
りかけの
仮面
(
めん
)
を、
巧妙
(
たくみ
)
な
手練
(
てなみ
)
で刻り出した。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかし竹光の柄の上に一連の文字が
刻
(
ほ
)
ってあったので、その身分を知ることが出来た。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
朱色渦巻を胴に
刻
(
ほ
)
った独楽が、
唸
(
うな
)
りをなして舞い上り、しばらく宙に漂うように見えたが、あだかも生ける魂あって、すでに源女に
手繰
(
たぐ
)
られている、絹、麻、髪を
綯
(
な
)
いまぜて造った
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
こういう意味のことが
刻
(
ほ
)
り付けてあった。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
数行の文字が
刻
(
ほ
)
り付けられてある。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「よしよし俺も
刻
(
ほ
)
ってやろう」
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“刻”の解説
刻(こく)は、漢字文化圏で使用される時間・時刻の単位である。様々な長さの「刻」があり、同じ時代の同じ地域でも、複数の「刻」が並用されていた。1日を何刻に分けるかが同じでも、定時法と不定時法の違いもある。
「刻」という名称は、漏刻(水時計)の刻み目に由来する。
(出典:Wikipedia)
刻
常用漢字
小6
部首:⼑
8画
“刻”を含む語句
先刻
彫刻
前刻
丑刻
一刻
戌刻
亥刻
未刻
午刻
申刻
辰刻
刻々
寅刻
後刻
時刻
巳刻
即刻
刻下
彫刻物
子刻
...