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惚
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ほ
ふりがな文庫
“
惚
(
ほ
)” の例文
会衆は
蠱惑
(
こわく
)
されて
聞
(
き
)
き
惚
(
ほ
)
れていた。底の底から清められ深められたクララの心は、露ばかりの愛のあらわれにも嵐のように感動した。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「そりゃア、叔母さんの言うのももっともです、しかし、まア、男が
惚
(
ほ
)
れ込んだ以上は、そうしてやりたくなるんでしょうから——」
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
知ったので御座いますからね。でもお玉が
惚
(
ほ
)
れるのも道理で御座いますよ。あんな立派な殿様は、羽田の漁師町にはありませんからね
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「
女中
(
ねえ
)
や、お
手柔
(
てやはら
)
かに
頼
(
たの
)
むぜ。」と
先生
(
せんせい
)
の
言葉
(
ことば
)
の
下
(
した
)
に、ゑみわれたやうな
顏
(
かほ
)
をして、「
惚
(
ほ
)
れた
證據
(
しようこ
)
だわよ。」やや、と
皆
(
みな
)
が
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
る。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「あの女は尼姿の方が綺麗に見えたんだよ。依右衛門がそれに
惚
(
ほ
)
れたんだ、——自分の髪を切る位のことは何んとも思ってやしない」
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
上気せる美くしき梅子のあどけなき
面
(
かほ
)
を銀子は女ながらに
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと眺め「私が悪るかつたの、梅子さん、
何卒
(
どうぞ
)
聴かして下ださいな」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
二人共彼の事を「お美しい方」と呼んでゐた。ルヰザは彼の事を「
惚
(
ほ
)
れ/″\するやうな人」と云ひ、彼を「讃美する」のであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
やはり弁証法に限る、と
惚
(
ほ
)
れ直すかも知れない。そうでないかも知れない。もっともっと勉強してみてからでなければわかるまい。
多頭蛇哲学
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すると、平尾さんが大変
惚
(
ほ
)
れ込み、どうか、これを譲ってくれといいました。しかし、後藤君は、実はこの不動だけはお譲り出来ない。
幕末維新懐古談:75 不動の像が縁になったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
お通夜や又何やかや
用達
(
ようたし
)
の道々などで、私は高木の妹から、彼が甚だ好色漢で、宿屋へ泊れば女中を
口説
(
くど
)
く、或時バーの女に
惚
(
ほ
)
れ
篠笹の陰の顔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
お天気のこと、恋愛のこと、文学のこと、彼は女の喋る言葉に
聴
(
き
)
き
惚
(
ほ
)
れることもあったが、何かがパッタリ滑り堕ちるような気もした。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
すると叔父夫妻もいちど見ようということになり、二人で来ておなつを見たうえ、叔母のほうがこれまたすっかり
惚
(
ほ
)
れこんでしまった。
契りきぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうさ、何も、具体的に男と女が
惚
(
ほ
)
れたりはれたりすることばかりが抒情的じゃないくらい君判んないのかい。息子は頭が良いよ。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「なに、あの女は真公に
惚
(
ほ
)
れてやがったが、真公が居なくなると気が変になってしまって、
鳴門
(
なると
)
の渦の中へ飛びこんでしまったよ」
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
女の眼は
偏
(
ひとえ
)
に三味線の糸の上に落ちているようである。恐らく彼女は、自分の
奏
(
かな
)
でている音楽を、一心に聞き
惚
(
ほ
)
れているのでもあろう。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
衣透姫
(
そとおりひめ
)
に小町の
衣
(
ころも
)
を懸けたという文三の
品題
(
みたて
)
は、それは
惚
(
ほ
)
れた慾眼の
贔負沙汰
(
ひいきざた
)
かも知れないが、とにもかくにも十人並優れて美くしい。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
りっぱな音楽家で、ピアノがお
上手
(
じょうず
)
です。あの人の前では、あなたのことを批評はできません。あなたに
惚
(
ほ
)
れこんでるのですから。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
本院の
大臣
(
おとど
)
の
御屋形
(
おんやかた
)
には、ずゐぶん女房も沢山ゐるが、まづあの位なのは一人もないな。あれなら平中が
惚
(
ほ
)
れたと云つても、——
好色
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ねえ、僕が川上の世話を焼きすぎるといって心配したり、かれこれいうものがあるけれど、男は女に
惚
(
ほ
)
れているに限ると思うのです。」
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
今日
(
きょう
)
の事も忘れ
明日
(
あす
)
の事も忘れ
聴
(
き
)
き
惚
(
ほ
)
れている自分の事も忘れて浩さんだけになってしまう。浩さんはかように偉大な男である。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
嘘
(
うそ
)
もけれんもないところ、お千絵様はあなたにしんから
惚
(
ほ
)
れています。顔だけ見せてあげただけでも、どんなにお
欣
(
よろこ
)
びかもしれませんぜ。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
八雲は
縁側
(
えんがわ
)
に立ってそれに聞き
惚
(
ほ
)
れ、『いかに面白いと楽しいですね』と言って喜んだが、また『私、心痛いです』と言った。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
抱一は放縦と
無検束
(
ずぼら
)
で人に誤まられたが、根が多感多恨の単純な好人物であったから一見コロリと紅葉に
惚
(
ほ
)
れ抜いてしまった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
此方
(
こち
)
の
昔馴染
(
むかしなじみ
)
のヸーナス
殿
(
どの
)
を
美
(
ほ
)
めさっしゃい、
乃至
(
ないし
)
は
盲目
(
めんない
)
の
息子殿
(
むすこどの
)
、
例
(
れい
)
のコーフェーチュアの
王
(
わう
)
さんが
乞食娘
(
こじきむすめ
)
に
惚
(
ほ
)
れた
時分
(
じぶん
)
に
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
身にしみて聞き
惚
(
ほ
)
るる浪子は
勇々
(
ゆゆ
)
しと誇りて、早く海軍大臣かないし軍令部長にして海軍部内の
風
(
ふう
)
を一新したしと思えるなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
あいつに
惚
(
ほ
)
れてもなんでもいるんではないが、いなくなると心がいらいらする、
焦
(
じ
)
れて焦れてたまらない、しまいには血の気が頭に上って
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
恥
(
はず
)
かしがるにゃァ
当
(
あた
)
らねえ。
何
(
なに
)
もこっちから、
血道
(
ちみち
)
を
上
(
あ
)
げてるという
訳
(
わけ
)
じゃなし、おめえに
惚
(
ほ
)
れてるな、
向
(
むこ
)
う
様
(
さま
)
の
勝手次第
(
かってしだい
)
だ。——おせん。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
往来に全部一列に並べて勘定にかかる。早くも人だかりに逢う。六角の
駄墨
(
だぼく
)
、その形や模様に
惚
(
ほ
)
れ込んで一包の
凡
(
すべ
)
てを
購
(
あがな
)
う。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「女工の
惚
(
ほ
)
れ方はブルジョワのお嬢さんのようにネチネチと形式張ったものではなくて、実に直接且つ具体的なので困る!」
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
武内
(
たけのうち
)
と
識
(
し
)
つたのは、
新著百種
(
しんちよひやくしゆ
)
の
挿絵
(
さしゑ
)
を
頼
(
たの
)
みに行つたのが
縁
(
ゑん
)
で、
酷
(
ひど
)
く
懇意
(
こんい
)
に
成
(
な
)
つて
了
(
しま
)
つたが、
其始
(
そのはじめ
)
は
画
(
ゑ
)
より人物に
惚
(
ほ
)
れたので
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ピーシチク (驚嘆して)こりゃ、どうだ! いや、あなたは魔女か
妖精
(
ようせい
)
か、シャルロッタさん……わしはすっかりあんたに
惚
(
ほ
)
れましたよ……
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それにしても好いたの
惚
(
ほ
)
れたのというような
若
(
もし
)
くはそれに似た柔く
温
(
あたたか
)
な感情を起し得るものとは、夢にも思って居なかった。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
仰向いて
唾
(
つば
)
を吐くのはやめるものよ。だけど、あんたが船長になると、今度は、ほんとに純粋な生娘が、あんたに
惚
(
ほ
)
れてよ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
伊豆伍夫婦が
惚
(
ほ
)
れこんで、似合いの夫婦だ、
内裏雛
(
だいりびな
)
だと、うつくしいものを二つ並べる興味に、まず親達のほうが騒ぎ出した、と前にいった。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
おまえ、なんだってそんな目をして僕を眺めるんだい? そりゃあ、イワンはあの女に
惚
(
ほ
)
れこんでしまったのさ、そして今でも惚れているよ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その女にね(栗原さんは一寸云い
渋
(
しぶ
)
って、頭をかくのです)実は私は
惚
(
ほ
)
れていたのですよ。しかもそれが、恥しながら片思いという訳なんです。
モノグラム
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
世に処して成功しようと思うには女房に
惚
(
ほ
)
れなくては
不可
(
いか
)
んと言われたそうですが、誠に
味
(
あじわ
)
うべき言葉で、気に食わぬ点はなるべく寛大に見て
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
ナライ
小碓皇子
(
おうすおうじ
)
の故智を
倣
(
なら
)
い、花恥ずかしき美女に化けて往くと、ノンテオクたちまち
惚
(
ほ
)
れて思いのありたけ
掻
(
か
)
き
口説
(
くど
)
く。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
どうしたわけで、あんな出来そくないの、野郎のくせに、内股にあるいているような奴に
惚
(
ほ
)
れたかねえ——おかげで、いのちを取られかかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
老人連、
全然
(
すっかり
)
惚
(
ほ
)
れ込んでしまった。
一
(
いつ
)
にも大河、二にも大河。公立
八雲
(
やくも
)
小学校の事は大河でなければ
竹箒
(
たけぼうき
)
一本買うことも
決定
(
きめ
)
るわけにゆかぬ次第。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
丈
(
せい
)
はスラリとして
痩型
(
やせぎす
)
の色の白い、張りのいい細目の男らしい、鼻の高い、私の眼からも
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れとするような、
嫉
(
ねた
)
ましいほどの美男子であった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
預けてある
剥
(
は
)
げっちょろけたお椀に、飯や汁を一緒に盛って食いながら、私の読む講談に
聴
(
き
)
き
惚
(
ほ
)
れるのが習慣であった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
惚
(
ほ
)
れているという単純な言葉がなかなか思いつかなかった。嫌悪しているものに逆に引きつけられるという自虐のからくりには気がつかなかった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
この荒療治のおかげで、不幸にも蘇武は半日
昏絶
(
こんぜつ
)
したのちにまた息を吹返した。
且鞮侯
(
そていこう
)
単于はすっかり彼に
惚
(
ほ
)
れ込んだ。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「
大坂
(
ダイハン
)
よ、お前は
惚
(
ほ
)
れている女から、いつも馬鹿と呼ばれているんだぞ」と罵り、そこで皆から、ひとしきり嘲笑の雨。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
夏ともなれば、ボタンの穴に大きな花束をさしているが、きっとこれは、だれか彼に
惚
(
ほ
)
れた田舎娘の贈り物であろう。
駅馬車
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「イエもう、
業
(
わざ
)
の上の
工夫
(
くふう
)
に
惚
(
ほ
)
げていたと解りますれば何のこともございません。ホントにこの人は今までに随分こんなこともございましたッけ。」
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ああそれは
好
(
い
)
い男よ。どうやらあたしも夢中になりそうだわ。でもどうだっていい、あたしブラシュヴェルに、あんたに
惚
(
ほ
)
れてるって言っておくの。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
身の
老
(
おい
)
といふにはあらね、おのれまた若しともなし。さやけさはかかる夜ながら、見の
惚
(
ほ
)
れむ光にあらず、杉木立青きはあれど、
隣山
(
となりやま
)
早やも痩せたり。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
おそろしい傾倒のしようなのです。全く
惚
(
ほ
)
れ込んでいるのです。イタリアでは
就中
(
なかんずく
)
ヴェネチアが好なのです。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
惚
漢検準1級
部首:⼼
11画
“惚”を含む語句
恍惚
自惚
己惚
見惚
岡惚
恍惚境
活惚
寝惚
聞惚
惚々
空惚
寝惚眼
寝惚声
惚込
寐惚
自惚家
寢惚
惚合
相惚
男惚
...