)” の例文
旧字:
大学を辞して朝日新聞に這入はいったらう人が皆驚いた顔をして居る。中には何故なぜだと聞くものがある。大決断だとめるものがある。
入社の辞 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「郷に入ったら郷に従えってね、こんなところで気取ったって誰もめやしないわ、すましてると、あたしたちで裸にしちまうわよ」
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はあちやんのことだから、何処へおつり出しておいても、間違ひはないだらうけれど、余りめた事でもないつて言つてゐたよ。」
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
フラーテゴミータといひ、萬の欺罔たばかりうつはなりき、その主の敵を己が手に收め、彼等の中己をめざるものなきやう彼等をあしらへり —八四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
もっぱら三人で話したが、今日橋寺と初対面をした幸子も、矢張彼から好い印象を受けたものと見え、夫婦は期せずして彼の人柄を
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それはめられ尊敬されなければならなかった。日本において『第五シンフォニー』の実演というものはまだなかったからである。
案内して来た生徒たちは、むかし此の学校に芥川龍之介も講演しに来て、その時、講堂の彫刻をめて行きました、と私に教えました。
みみずく通信 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ちょっと聞くと、たいへんめているようで、そのじつ、ちゃんと毒のある中傷になっているのだから油断も隙もあったものじゃない。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
たとえて云えば、キップリングの“Naulakhaナウラーカ”に出てくるラホールの王子——といっても、僕自身にはめ過ぎとは思えない。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
いつぞやも、わしはこれを自慢に持って、寺社奉行の山寺源太夫様のところへ行き、お見せしたところ、殊のほか、おめに預かった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都の女はすての顔立にある男らしさを美しいといい、すては女はみなこうあらねばならぬくびのほそれを、都の女にむかってめていった。
女は容貌みめかたちも美しかったので、かかる才能と共に、輩下の部落の土民の間でめものにされた。ふた親にとっては自慢の総領娘となった。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
学校の成績がよくて、首席になったので、私も大喜びでしたし、家内中の誰もが、「よかった、よかった」とめて下さいました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
そのモチーフこそ作者がその作を書いた生命であって、そのほかの点でめられてもけなされても作者の心には適わないものである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
遍路のはいている護謨底ごむそこ足袋たびめると「どうしまして、これは草鞋わらじよりか倍も草臥くたびれる。ただ草鞋では金がってかないましねえから」
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
売上げの勘定にれている子たちも多かったので、話はよくきいていたが、なぜめたかという質問には答えが満足でなかった。
それ程信用してないものならば、信用しない人間のところへ寄るなんていふことは間違ひのもとであることでめた話ではない。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
その誠実さをわしにめてもらいたいがためだとすれば、もちろんあなたは実行的な愛の道で、何物にも到達されることはありませんぞ。
聞いてるようだっけ。それでも君、他の生徒があの先生はなかなかえらいなんてめりゃ、自分まで急に有難くなったような気もしたッけ
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さても出来でかしたり黄金丸、また鷲郎も天晴あっぱれなるぞ。その父のあだうちしといはば、事わたくしの意恨にして、深くむるに足らざれど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
めて頂いてよろこんでますわ」——薔薇色の婦人は言った。「でも、あなたの赤ちゃんはおとなしくっていらっしゃるようですわね」
夕涼をしながら何か小唄を口吟くちずさんでいると、うまいぞといってめる者がある、それっきりうたうのをやめてしまった、というのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
旦那がおめえさんは感心だ、裙捌すそさばきが違うと云って大変めた、そうして金をやった時、あなたは受けねえと云うと、旦那が満腹だと云った
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
断って置くが、読んだと云う事を聞いたので、めたと云う事を聞いたのではない。けれども自分はそれだけで満足であった。
羅生門の後に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
六年間辛抱したと言ってしきりにめてくれましたから、得意になっていたら、親方は僕をこゝの家の書生だと思っていたんです
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
むしろ場合によりてはむべきで、消極的修養しょうきょくてきしゅうよう努力どりょくであると思う。元来がんらい普通の人はすべて幾分かの弱点じゃくてんを備うるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
師匠はニッコリ笑い、「よく知っていたな、感心々々」とめられたのでした。師匠はさらに、「手習いをしたか」という。
しかし、大昔に、ノアがこの通りの事をして、誰にも責められぬでは無いか、かえって後々までめられ敬われるでは無いか。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
永井荷風氏がめ、新しい「白樺」の人たち、武者小路、柳、志賀、里見、萱野の諸君までがロダン号の巻頭に寄せ書して
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
が、二葉亭は、「誰もめてくれ手がなくても、大事な可愛いい娘だ、」と、猫をかかえて頬摺りしながら能く言ったもんだ。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
それゆえイトコ同士の結婚などはあまりむべきものではなく、強健きょうけんな子供をしいと思えば、縁類でない他の家から嫁をもらうべきである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
綿のように疲れきって牢屋に帰ってくると、名主や役附の者どもは彼の剛胆をめそやして、総がかりで介抱してやった。
拷問の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
物言ふは用事のある時慳貪けんどんまをしつけられるばかり、朝起まして機嫌をきけば不図ふとわきを向ひて庭の草花をわざとらしきことば
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それに長屋中、皆な私を可愛がってくれまして、おとなしい方だよい方だ、珍しい堅人かたじんだとめてくれるのでございます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
余りめた事でないが文化の頂上と自ら誇る米国人中にすら、初目見はつめみえに来た嬰児を夫婦の寝床に臥せしむれば必ず子を産むと信ずる者あれば
川中島の百姓たちのかない気性をめて、俵責めの手段を痛快なりとし、今後、生意気な芸人共はあの手段で行くがいいと唱え出す者もある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そこだよ。信長公は蘭丸が正直なのをめて、脇差を下し置かれたと、浪花節ではいっているが、それは嘘だと思う」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いくら頑固なお前だって、あの人がどんな方だか知ったら、きっとびっくりして、わたしをめてくれるに違いないわ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「うむさう/\、君をめようと思つてゐたところだ。」と重役は若い人を奨励する時に誰でもするやうな表情で云つた。
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
私は、扇をひらいてめて上げたいと思う。もとより当然のことではあるけれども。あなたをとり戻したという感じ。
父様も建てるか坊も建てたぞ、これ見てくれ、とさも勇ましく障子を明けてめられたさが一杯に罪なくにこりと笑いながら、指さし示す塔の模形まねかた
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
初めのうちは私は、ジナイーダの名前をさえ口にする勇気が出なかったが、やがて我慢がまんがならなくなって、しきりに彼女かのじょのことをめちぎりだした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
しかれどもむべからざるに褒め叱るべからざるに叱るが如きはその害はなはだし。むしろこれを放任し置くに如かず。
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
助ちゃんは「いい塩梅あんばいでした。あたしが通り合わせて。」と云って、それから如何にも感心したように、「清ちゃんはえらい。」と私のことをめた。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
そのうちその琴の上手な娘が、お母様にめられたのを聞いて、それではいつか往って弾いて聞かせようと云った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかも、今朝私はクラスの首席になつた。ミラア先生は、やさしく私をめて下さつた。テムプル先生も微笑ほゝゑんで、褒めるやうな風を示して下さつた。
その最期さいごも立派であったと部落の人達にめられもし、憐れみの掛かることもあろう、ほうむってくださるお方もあろうに、おめおめ刑死しようものなら
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
雲とともに変わって行く海の色をめた人もある。海の上を行き来する雲を一日眺めているのもいいじゃないか。
(新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
(ニーナにキスする)でも、あんまりめ立てちゃいけないわ、鬼がきますからね。トリゴーリンさんはどこ?
もし今の教育家の立場から見れば、祖父の如き田中伯爵に嫁して進んで老伯爵のために良妻賢母となろうとするのはむしろこれをめるのが当然でしょう。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)