)” の例文
一四二烈婦さかしめのみぬしが秋をちかひ給ふを守りて、家を出で給はず。翁も又一四三あしなへぎて百かたしとすれば、深くてこもりて出でず。
みな、生きてかえるいくさとは思わないので、張りつめた面色めんしょくである。決死のひとみ、ものいわぬ口を、かたくむすんで、粛々しゅくしゅくをそろえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
急にを速めて、駅の出口に向つた。が、もうその時は、鬼頭のことは頭になかつた。さういふ気易さで、明るい街を見た。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ニールスは、すぐさま身をふりはなして、二ほどうしろへさがりました。そして、ナイフをさやから引きぬいて、目の前につきだしました。
すこあるかないか」と代助がさそつた。平岡もくちいそがしくはないと見えて、生返事なまへんじをしながら、一所にはこんでた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれふゆになつてまたおこりかけた僂痲質斯レウマチスおそれてきはめてそろ/\とはこんだ。利根川とねがはわたつてからは枯木かれきはやし索寞さくばくとして連續れんぞくしつゝかれんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
指揮刀しきたうさや銀色ぎんいろやみなかひらめかしてゐる小隊長せうたいちやう大島少尉おほしませうゐさへよろけながらあるいてゐるのが、五六さきえた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
男気おとこけのない奥庭おくにわに、次第しだいかずした女中達じょちゅうたちは、おれん姿すがた見失みうしなっては一大事だいじおもったのであろう。おいわかきもおしなべて、にわ木戸きどへとみだした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ひらけたる所は月光げつくわうみづの如く流れ、樹下じゆか月光げつくわうあをき雨の如くに漏りぬ。へして、木蔭をぐるに、灯火ともしびのかげれて、人の夜涼やれうかたるあり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
博士は驚いて戸口の方へはこんだ。扉に手をかけようとするとドアの方でひとりでパッと開いた。——その向こうには、助手の理学士の土色つちいろの顔があった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
垣根かきね近邊ほとりたちはなれて、見返みかへりもせず二三すゝめば遣水やりみづがれおときよし、こゝろこゝにさだまつておもへば昨日きのふれ、彷彿はうふつとして何故なにゆゑにものおもひつる
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とき柳川君やながはくんきみ當分たうぶんこのみなと御滯在おとまりでせうねえ、それから、西班牙イスパニヤはうへでもおまはりですか、それとも、さらすゝめて、亞弗利加アフリカ探險たんけんとでもお出掛でかけですか。
雪中をする人陰嚢いんのう綿わたにてつゝむ事をす、しかせざれば陰嚢いんのうまづこほり精気せいきつくる也。又凍死こゞえしゝたるを湯火たうくわをもつてあたゝむればたすかる事あれども武火つよきひ熱湯あつきゆもちふべからず。
あさ須原峠のけんのぼる、偶々たま/\行者三人のきたるにふ、身には幾日か風雨ふううさらされてけがれたる白衣をちやくし、かたにはなが珠数じゆづ懸垂けんすゐし、三個の鈴声れいせいに従ふてひびきた
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
さて今朝こんちょう、此の辺からは煙も見えず、音も聞えぬ、新停車場ステエションただにんり立つて、朝霧あさぎりこまやかな野中のなかして、雨になつたとき過ぎ、おうな住居すまいけ込んだまで
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いわんや、更に研究のを進めて一旦死んだ身体に人工心臓を装置して、生命を取り戻すことが出来るようになるならば、家兎も、心から感謝してくれるだろうと思いました。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
尾生はやや待遠しそうに水際までを移して、舟一艘いっそう通らない静な川筋を眺めまわした。
尾生の信 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼女に聖力みちからを注ぎて、なんぢ聖旨みむねを地に成さしめ給へ、篠田はを転じて表のかたに出でぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
故に教育の目的は如何いかに深淵なる学理の攻究研鑽を積むも、常識圏外に逸する事なく、研学のを進むると同時に、活社会を離れず、いわゆる世と推移おしうつり時世の進歩傾向を知ると共に
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
野菊、夏菊、月見草、足にかかる早露を踏みしだいて、二人は黙ってを拾った。
そこは学校の垣根である、一歩いっぽに詰められた生蕃は後ろを垣にさえぎられた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
さう同情して思ふから、一層こののちがあの人のためにも自分のためにも心配でならないと、こんな事を思つて居る鏡子は俯向うつむき勝ちにを運んで居た。何時いつの間にか回生病院の前へ出た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
やがて、一歩、近づくに随って、そのものの形態がハッキリと分って来た。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、その無言の影二つは、、川なかのうへへ近づくのである。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
寿司においては、いちはやく男女同権の世界にを進めたようだ。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
とゞめて、力量と堪忍とを楯に直立して、各方面を眺めたり。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
うちはずみにほふ青みや兵ふたりのそろひをり田に映るかげ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
あぢ素氣そつけもないことをツて、二人はまただまツてつづける。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
はばは三びやく十尺じうしやく
ある小春の穏かな日の二時頃であったが、吾輩は昼飯後ちゅうはんご快よく一睡したのち、運動かたがたこの茶園へとを運ばした。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
客來きやくらいにやあらんをりわろかりとかへせしが、さりとも此處こゝまでしものをこのままかへるも無益むやくしゝと、にはよりぐりてゑんあがれば、客間きやくまめきたるところはなごゑ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
木々のあいだをっていく、松明たいまつのあかい光について伊那丸いなまる忍剣にんけん滝壺たきつぼのほとりへ向かってをはやめる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
月より流るゝかぜこずえをわたるごとに、一庭の月光げつくわう樹影じゆえい相抱あひいだいておどり、はくらぎこくさゞめきて、其中そのなかするのは、無熱池むねつちあそぶのうをにあらざるかをうたがふ。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
かく言いけて振り返りぬ。巡査はこのときささやく声をも聞くべき距離に着々としてしおれり。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
従来此深山にりて人命をうしなひしものすでに十余名、到底とうてい深入しんにふすることをいにしへより山中におそろしき鬼婆をにばばありて人をころして之をくらふ、しからざるも人一たひを此深山にるれは
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かくしづんでときには、にぎはしき光景くわうけいにてもながめなば、幾分いくぶんこゝろなぐさむるよすがともならんとかんがへたので、わたくし兩人ふたり引連ひきつれて、此時このときばんにぎはしくえた船首せんしゆかたうつした。
いづれか我が住みし家ぞと立ちまどふに、ここ八〇二十ばかりを去りて、らいくだかれし松のそびえて立てるが、雲の星のひかりに見えたるを、げに八一我が軒のしるしこそ見えつると
「世に処するには一歩をゆずるを高しとなす、退しりぞくるは即ち歩を進むるの張本ちょうほん
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
●そも/\茲谷このたには山桜多かりしゆゑ桜谷とよびけるを、地火あるをもつて四方四五十(六尺を歩といふ)をひらきて平坦たひらの地となし、地火をりて浴室よくしつとなし、人の遊ぶ所とせしとぞ。
「たんとれべえなこんぢや、からばかしでもたえした出來できだな」といつて勘次かんじちかはこんだ。勘次かんじ庭先にはさきくりかげふたつのうすよこころがしておつぎと二人ふたり夏蕎麥なつそばつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そして、たがいにしっかりとだきあって、一、二あとへさがりました。
軽い溜息をついて、二三歩狭い司令塔の中にを移しました。
太平洋雷撃戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うちはずみにほふ青みや兵ふたりのそろひをり田に映るかげ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
思い出したように、をとめた泰軒が
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
兄さんは自分が鋭敏なだけに、自分のこうと思った針金のようにきわどい線の上を渡って生活のを進めて行きます。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると、かれより六、七まえを、だれやら、しずかに、ピタピタと足をはこんでいく者がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
指すかたもあらでありくともなくをうつすに、かしらふらふらと足のおもたくて行悩ゆきなやむ、前にくも、後ろに帰るも皆見知越みしりごしのものなれど、たれも取りあはむとはせできつきたりつす。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
●そも/\茲谷このたには山桜多かりしゆゑ桜谷とよびけるを、地火あるをもつて四方四五十(六尺を歩といふ)をひらきて平坦たひらの地となし、地火をりて浴室よくしつとなし、人の遊ぶ所とせしとぞ。
おつぎの姿すがたが五六にんつたなかえなくつたとき勘次かんじ商人あきんどむしろつてすつともみそばつた。おつぎは一二位置ゐちへただけであつたので、かれすぐにおつぎのしろ姿すがたあひせつしてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
七面鳥照りゆるぎつつは遅し尾羽響き鳴るひと足ごとに
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)