)” の例文
(むかし/\大雅堂は謝礼を封の儘、畳の下へり込んで置いたといふが、その頃には狡い呉服屋の封銀ふうぎんといふ物は無かつたらしい。)
「こっちには、ちゃんとわかってるんだ。……野郎共、こいつの身ぐるみ、がしてしまえ。裸にしたら、瓢箪池にりこめ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ベナン族の酋長の葬式には、墓の側に徳利形の大きな深い穴を掘って、その口から大勢の奴隷や召使をおり込んで、そこに餓死さしてしまう。
奴隷根性論 (新字新仮名) / 大杉栄(著)
その下へ赤いものがついている——面白くもないようにつぶやいたがそのままポイとり出して、右手をのばすと地に置いてある綴じ紙を取り上げてめくり出した
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
文太郎君は三和土の上に靴をうり出すし、エミ子さんは仏蘭西フランス鳩のような声を出して笑いました。
四月馬鹿 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
祖母おばあさんがはばかりへゆきたくなったとお言いだから、けてもらいましょうというと、なに頼みなんぞおしなさんな、先方むこうから悪かったと開けにくるまでったらかしておおき
「なるほど、それなら遠くからって、首へ引っ掛けられる、——お前はどこの生れだ」
けん間口まぐち、大戸前の表の戸を、すっかり下ろして、灯という灯を、ことごとく消してしまった、米問屋に向って、バラバラとうりつけ、すさまじい憎悪の叫喚きょうかんをつづけている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
大阪の市街まちに困つてゐる人達よ、一度雨降りの日に自動車の窓から池上市長や市会議員やを泥濘ぬかるみのなかにり出してみたらどんなものだらう。
般若の五郎さんが、玉井さんを浅草におびきだし、与太者たちを集めて、身ぐるみいだうえ、瓢箪池にりこもうとしたのも、玉井さんが、母を苦しめた仇討をするつもりだったのでしょう。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「いろいろな図面が描いてあるがこれには用はない」——でまたポイとり出したが、いまだに酔いが醒めないと見えて再度両手で膝を抱き膝頭の上に顔をあて、すぐにうとうとと眠りにはいった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
見ると寝椅子の上に古綿ふるわたのやうなものがあるので、ぶつ/\言ひながらそれを引つ掴むで反古籠ほごかごのなかにり込んだ。
一度他の巣の蟻がこの酔ひどれを見つけた事があつたが、その折は少しの容捨ようしやもしないで、いきなり相手を啣へて水溜りのなかにり込んでしまつた。
すると、英軍の塹壕から、小石をくるんだ紙片かみぎれが一つ、独軍の塹壕にり込まれた。なかにはこんな文句があつた。
ラボツクは蟻の研究で聞えた人だが、ある時一匹の蟻をウイスキイの洋盃コツプり込んで、したたか酒に酔はせた。
皺くちやな浴衣ゆかたを着た梅干爺さんで、こんな邸の中で無かつたら床屋は襤褸ぼろきれと間違つて、掌面てのひらみくちやにして屑籠にり込んだかも知れなかつた。
そして女中の持つて来た物尺を引手繰ひつたくるやうにして、日本と英吉利との距離を克明に測つてゐたが、暫くすると、地図と物尺とを一緒に其辺そこらり出した。
石川氏はかうして方々引ずり廻されて、やつと日暮前にへとへとに疲れた体を見ず知らずの町にり出された。
すると今度は英軍の塹壕から、一シルリングの銀貨が一つ空にり上げられた。独軍の塹壕で矢庭に小銃のぜる音がしたが、弾丸たまぽうへ逸れてしまつた。
旅行から帰つて、暫くすると、船橋氏は乙羽から『欧山米水』といふその折の観光記を受取つたが、別にけても見ないで、その儘本棚の隅つこにり込んでおいた。
喜田氏は慌ててひさしの煙草を空缶のなかにり込んで、そ知らぬ顔をしてゐた。