)” の例文
Y港の西寄りは鉄道省の埋立地になって居り、その一帯に運河がられている。運河の水は油や煤煙を浮かべたまゝよどんでいた。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
内部なか這入はいるに従って闇は益々深かくなり、天井を見ても左右を見ても、無限に厚い岩ばかり、その面には象形文字や鳥獣の姿がってある。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ヨセフは亜麻布を買い、イエスを取り下ろしてこれに包み、岩にりたる墓に納め、墓の入口に石を転ばしておいた。
しかしお婆さんは何を聞いて来たかとも何を見て来たかともそういうことを捨吉にって尋ねようとはしなかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ありの穴のように、無数に盛りあげられた土山を見て、城将もさてはと気づき、城中からも坑道をり出した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
壇の上に仁王におうのような仏像が偉大な姿を見せていた。大異は壇の上へ飛びあがって、その仏像の背後うしろへ往った。仏像の背には人の入れるような穴がってあった。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
借りてゐる地所に井戸をるのは馬鹿げてゐるし、ことに私の家の建つてゐるあたりは、地下が岩石なのだから、井戸の鑿賃ほりちんが高い上に、鑿つても水が出るか出ないか
水不足 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
神が深き隧道トンネルつて、その人々の心にも愛を植ゑ、救の道を通ずるやうにして居らつしやると云ふ有難い本然の啓示を、栄一は貧民窟の多くの性格破産者を通じて教へられた。
ところが渾沌はそれが無い。われわれの好意で丸坊主の渾沌に七竅を穿うがってやろうでは無いか。そこで二人は渾沌に日に一竅ずつをった。そしたら七日目に渾沌は死んでしまった。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
はつよきの音、板削る鉋の音、孔をるやら釘打つやら丁〻かち/\響忙しく、木片こつぱは飛んで疾風に木の葉の飜へるが如く、鋸屑おがくづ舞つて晴天に雪の降る感応寺境内普請場の景況ありさま賑やかに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
南北みなみきた何方どちら医王山道いおうざんみちとでもりつけてあればまだしもだけれど、ただ河原にころがっている、ごろた石の大きいような、その背後うしろから草の下に細い道があるんだもの、ちょいと間違えようものなら
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、筏戦いかだせんなどは、まだしもであった。西北の一条隊や土屋隊の如きは、地下道をりはじめたのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥さんは聞かなくても可いことをって聞いたという顔付で、やや皮肉に笑って、復た子供と一緒に鶏の方を見た。淡黄な色のひなは幾羽となく母鶏おやどり羽翅はがいに隠れた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
白石は庭に坑をって書籍を入れ、畳を六七帖置いて、その上に土を厚くかけてあった。
死体の匂い (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
はつよきの音、板削るかんなの音、あなるやらくぎ打つやら丁々かちかち響きせわしく、木片こっぱは飛んで疾風に木の葉のひるがえるがごとく、鋸屑おがくず舞って晴天に雪の降る感応寺境内普請場の景況ありさまにぎやかに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みねくもきざみ、みづたにつきつた、大彫刻だいてうこくながめても、をんなさしかんざしほどもかないで、温泉宿をんせんやどとまつた翌日よくじつ以前もとならばなによりもさきに、しか/″\のだうはないか、それらしい堂守だうもりまいか
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地下道は本丸の西の廓内かくないり抜けて出る計画の下に、夜も日もついで、坑口こうこうから土をあげた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しおれた正太を見ると、何とかして三吉の方ではこの甥の銷沈しょうちんした意気を引立たせたく思った。彼はいくらかを正太の前に置いた。それがどういうつかい道の金であるとも、深くって聞かなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、ぜひなくつばをのんで見ていると、医者はのみつちをもって、かんかんと骨をりはじめた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)