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灯
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ほ
ふりがな文庫
“
灯
(
ほ
)” の例文
旧字:
燈
彼女
(
かれ
)
は
寝衣
(
ねまき
)
の袂で首筋のあたりを拭きながら、腹這いになって
枕辺
(
まくらもと
)
の
行燈
(
あんどう
)
の
微
(
かすか
)
な
灯
(
ほ
)
かげを仰いだ時に、廊下を踏む足音が低くひびいた。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
反古
(
ほご
)
を、金の如くのべて、古画を
臨摹
(
りんぼ
)
する。ほそぼそと
燈
(
とも
)
る深夜の
灯
(
ほ
)
かげに、
無性髯
(
ぶしょうひげ
)
の伸びた彼の顔は、芸術の鬼そのものである。
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
屋根裏からは何の物音も聞えて来ないが、梯子段の上り口に
灯
(
ほ
)
かげがゆらめいているのを見れば、人がいることは確かである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二つ三つまた五つ、
灯
(
ほ
)
さきは白く立って、却って
檐前
(
のきさき
)
を舞う雪の
二片
(
ふたひら
)
三片
(
みひら
)
が、
薄紅
(
うすくれない
)
の蝶に
飜
(
ひるがえ
)
って、ほんのりと、娘の
瞼
(
まぶた
)
を暖めるように見える。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
牛の前には赤飯を盛った盆が供えられ、そのわきになみなみと「産ぶ湯」の水をたたえた
飼桶
(
かいおけ
)
が置いてあり、その水に
灯
(
ほ
)
かげがあかく映っていた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
▼ もっと見る
突っ立ったまま、
闇
(
やみ
)
の中に目をすえていると、野村の長女が
提灯
(
ちょうちん
)
をもって出てきた。笑ってそれを差出す顔が、
灯
(
ほ
)
かげにくまどられてこわく見えた。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
日没は早く、芝生の上には夕闇が迫ったと見る間もなく、たちまち
灯
(
ほ
)
かげ一つない寒々とした夜になってしまう。
十三夜:――マニラ籠城日記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
商売物のもう用済みになったらしい染め型紙をあんどんの
灯
(
ほ
)
ざしにすかしてはながめ、ながめてはすかしつつ、一枚一枚と余念もなく見しらべていたところへ
右門捕物帖:28 お蘭しごきの秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
薄く照して来る荒物屋の店の
灯
(
ほ
)
かげでお涌がすかして見ると、小さい生きものは、
小鼠
(
こねずみ
)
のやうな耳のある頭を顔中口にして、右へ左へ必死に
噛
(
か
)
みつかうとしてゐる。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
凝つた朱塗りの行灯の
灯
(
ほ
)
かげ
淡
(
あは
)
く、勤めはなれて、目を閉ぢ、口吸はせてゐる艶麗の遊女八つ橋。
吉原百人斬り
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
燭台
(
しょくだい
)
を和助に持たせ、その
灯
(
ほ
)
かげに和歌の一つも大きく書いて見ようとすると、蝋燭もろともそこへころげかかるほど眠がっているような子供は彼のすぐそばにもいた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その晩私たちは、レクトル・エケクランツの店の赤っぽい電灯の
灯
(
ほ
)
かげで一冊の書物を買った。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
男にしては、すこしやさしすぎる横顔が、瞬間、
燐寸
(
マッチ
)
の
灯
(
ほ
)
影の中へ浮びあがって、また消える。
キャラコさん:05 鴎
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
紅梅の上着の上にはらはらと髪のかかった
灯
(
ほ
)
かげの姿の美しい横に、紫夫人が見えた。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
おお眼の前を走る多數の襤褸の市の民、
貧者
(
ひんじや
)
の
酒場
(
さかば
)
、
燈
(
ひ
)
の町、
灯
(
ほ
)
の影暗祕密の路次
展望
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
ここの
谷
(
やと
)
灯
(
ほ
)
かげ
全
(
また
)
く無し消し棄てにふたたびと
點
(
つ
)
けずいねにたるらし
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
夜の
灯
(
ほ
)
かげに君とたどらむ。
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
垂簾
(
たれ
)
をあげて這い出したお絹は、よろけながら下駄を突っかけて立った。提灯の
灯
(
ほ
)
かげにぼんやりと照らされた彼女の顔はまだ蒼かった。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そして、御壇ノ
帳
(
とばり
)
の蔭に
冥々
(
めいめい
)
と立ち並んでいる先祖代々の位牌の御厨子を、
微小
(
みしょう
)
な
灯
(
ほ
)
ゆらぎの中に、じっと見あげた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夢からさめたあとの味気なさのせいでもあるが横の蒲団に枕をならべて眠っている妻と子供の顔が
鈍
(
にぶ
)
い電灯の
灯
(
ほ
)
かげの中にたよりなくうきあがって見える。
菎蒻
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
ゆらりとひと
揺
(
ゆ
)
れ大きく
灯
(
ほ
)
ざしが揺れたかと見るまに、突然パッと
灯
(
あか
)
りが消えた。奇怪な消え方である。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
おとうさんは
顎鬚
(
あごひげ
)
のそりあとを
艶
(
つや
)
やかに
灯
(
ほ
)
かげに照らして
煙草
(
たばこ
)
のけむりを
静
(
しずか
)
に吐いてゐました。
秋の夜がたり
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
ここの
谷
(
やと
)
灯
(
ほ
)
かげ
全
(
また
)
く無し消し棄てにふたたびと
点
(
つ
)
けずいねにたるらし
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そこここの
百目蝋燭
(
ひゃくめろうそく
)
の
灯
(
ほ
)
かげには、記念の食事に招かれて来た村の人たちが並んで膳についている。寿平次はそれを見渡しながら、
箸
(
はし
)
休めの
茄子
(
なす
)
の
芥子
(
からし
)
あえも精進料理らしいのをセカセカと食った。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
灯
(
ほ
)
かげあふるる夜の道
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
とたんに、かれの白
足袋
(
たび
)
が、そばに置いた
手雪洞
(
てぼんぼり
)
を踏みつけ、一道の
灯
(
ほ
)
かげが天井へ
揺
(
ゆ
)
れたかと思うと
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
半七郎が、うやうやしく差しだした嘆願書を上野介は無造作にうけとると、すぐ
短檠
(
たんけい
)
の
灯
(
ほ
)
かげの下で一気に読み下した。事件は上野介の到着する二日前に起ったのである。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
江戸めずらしいこのひと群れは
誰也行燈
(
たそやあんどう
)
の
灯
(
ほ
)
かげをさまよって、浮かれ烏の
塒
(
ねぐら
)
をたずねた末に、
仲
(
なか
)
の
町
(
ちょう
)
の立花屋という
引手茶屋
(
ひきてぢゃや
)
から送られて、
江戸町
(
えどちょう
)
二丁目の
大兵庫屋
(
おおひょうごや
)
にあがった。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その紙を透して、油燈の
灯
(
ほ
)
かげと玄関の
瓦斯
(
ガス
)
の灯かげと——この時代には東京では、電気燈はなくて瓦斯燈を使つてゐた——との不思議な光線のフオーカスの中に、男の子の姿が見えた。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
みやびたぼんぼりの
灯
(
ほ
)
ざしがちらちらと川風にゆらめく陰で付き添いのお腰元が
蒔絵硯
(
まきえすずり
)
を介添え申し上げると、深窓玉なす佳人がぽっとほおを染めながら、紅筆とって恋歌を書きしたためる。
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
青柿に
灯
(
ほ
)
かげさだまる夜のくだち啼く虫のこゑのひとつとほれる
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
酔後には独り云い訳のように
呟
(
つぶや
)
くのだった。今もそうした気分の後で、新九郎はふと広い奥庭へ眼をやった。と、常に灯を見たことのない東の
離亭
(
はなれ
)
に、黄色い
灯
(
ほ
)
かげが洩れている。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鼠
出
(
で
)
てもこりと居るは畳目のけばをかひろふ
夜寒
(
よさむ
)
灯
(
ほ
)
あかり
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
に向って、
﨟
(
ろう
)
たけた一人の
女性
(
にょしょう
)
が黒々とした髪をうしろにすべらかし、ジッと合掌したまま、作りつけた人形のごとく、或いはこの部屋のまま、この
灯
(
ほ
)
かげのともったまま
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
藤の蔓網戸の外にうちそよぎ
灯
(
ほ
)
かげ緑なり夜は透かしつつ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そして、しばらくするうちに、薄暗い
行燈
(
あんどん
)
の
灯
(
ほ
)
かげへ、ソウ……と寄ってくるお綱の姿が、やっと、彼の眸に入ったのであろう、
下瞼
(
したまぶた
)
の肉をビクとさせて、ボロボロと涙を流したかと思うと
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
藤の蔓網戸の外にうちそよぎ
灯
(
ほ
)
かげ緑なり夜は透かしつつ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
所詮
(
しょせん
)
、おのおのの
御座
(
ござ
)
ある
灯
(
ほ
)
あかりの前には、
得
(
え
)
もすわるまい
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
眼を開くをさな夜床の
灯
(
ほ
)
かげには鼠の法師大きかりにし
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
灯
常用漢字
小4
部首:⽕
6画
“灯”を含む語句
提灯
灯火
灯明
鬼灯
小提灯
灯影
高張提灯
大提灯
弓張提灯
遠灯
紅提灯
鬼灯提灯
岐阜提灯
電灯
御灯
酸漿提灯
挑灯
灯花
行灯
瓦斯灯
...