トップ
>
吻
>
ほ
ふりがな文庫
“
吻
(
ほ
)” の例文
私は、百合が仲間はづれになつてゐないのを見て
吻
(
ほ
)
ツとした。稍離れた処を見るとユキ子が森の肩に腕をのせて木柵に凭つてゐた。
競馬の日
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
共同水道のような処で水を汲んでいたお
婆
(
ばあ
)
さんが、「はい帰って参りました」と返事をしてくれたので、私は
吻
(
ほ
)
っとして路地を抜けた。
貸家探し
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
吻
(
ほ
)
っとして見ると、再び、探偵作家の星田代二のことが思い出された。
愈々
(
いよいよ
)
検事局に廻されて、今日は、検事の第一回訊問の行われる日だ。
殺人迷路:09 (連作探偵小説第九回)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
自分も後から飛び込むと、初めて
吻
(
ほ
)
っとしたように、扉に掛金をかけました。埃だらけのその板の間に、粗末な
段梯子
(
だんばしご
)
が付いているのです。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と言いかけて
吻
(
ほ
)
と小さなといき、人質のかの
杖
(
ステッキ
)
を、斜めに両手で膝へ取った。
情
(
なさけ
)
の海に
棹
(
さおさ
)
す姿。思わず腕組をして
熟
(
じっ
)
と見る。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
要点をつかんで、のみこんで下すったことを、私がどんなに
吻
(
ほ
)
っとしたかお察し下さることが出来ようと思います。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「嫌な天氣だな。」と俊男は、
奈何
(
いか
)
にも
倦
(
う
)
んじきツた
躰
(
てい
)
で、
吻
(
ほ
)
ツと
嘆息
(
ためいき
)
する。「そりや
此樣
(
こん
)
な不快を與へるのは自然の威力で、また權利でもあるかも知れん。 ...
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「空乳首をやって見るとよい。」私がそういうと妻はすぐ空乳首を
与
(
や
)
った。赤児は、
吻
(
ほ
)
っとしたようにそれを
舐
(
しゃぶ
)
り、くろぐろとした瞳を静まらせ泣き
歇
(
や
)
んだ。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
落ち着くところが見つかれば、それがどれほどいぶしいところでも、先ず
吻
(
ほ
)
ッと肩をおとすのであった。全く彼女ら女房どもは、測り知れない男の心ひとつに追いすがっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
起された時は、夏の朝らしい
爽々
(
すが/\
)
しい陽が庭に一杯満ち溢れてゐた。彼は夢中で湯槽へ飛び込んで、
吻
(
ほ
)
ツと胸を撫で降した気になつたのだ。
明るく・暗く
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
やっと、
吻
(
ほ
)
っとしました。今
頂
(
いただき
)
に立って、大きな赤松の枝の間から眼を放った
遥
(
はる
)
かの
端
(
はず
)
れに、
涯
(
はて
)
しもない海が、
真蒼
(
まっさお
)
な色を見せているのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私は自分の二階に横になって
吻
(
ほ
)
っとしたような心持ちをつよく感じ、自分がこのわれらの家をどんなに愛しているかということをはっきり自覚しました。
獄中への手紙:02 一九三五年(昭和十年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
編輯長の命令で、陸軍大臣の談話をとるために、この三四日、足手
摺古木
(
すりこぎ
)
に追っかけまわして、やっとつかまえることが出来て、
吻
(
ほ
)
っとしているところだった。
殺人迷路:09 (連作探偵小説第九回)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
戸外へ出ると
吻
(
ほ
)
つとして、いゝ空気を吸つたやうな気がした。心のうちで、加野をみじめな男だと思つた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
今度は目が覚めつつも、まだ、その
俤
(
おもかげ
)
が
室
(
ま
)
の
中
(
うち
)
に
朦朧
(
もうろう
)
として残ったが、
吻
(
ほ
)
と
吐
(
つ
)
く
呼吸
(
いき
)
にでも
吹遣
(
ふきや
)
られるように、棚の隅へ、すっと引いて、はっと留まって、
衝
(
つ
)
と
失
(
な
)
くなる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「埃の力は
偉大
(
ゐだい
)
だ!」と周三は、
吻
(
ほ
)
ツと
歎息
(
ためいき
)
して、少時埃に就いて考へた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
そして、ようやく
吻
(
ほ
)
ッと一呼吸入れたのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
初めて
煙草
(
たばこ
)
に火をつけるものもあれば、耳語を交わすものもあり、何かしら
吻
(
ほ
)
っとした空気が座には感じられました。が
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
本当に独特で、私はいつも
疳
(
かん
)
の虫を奥歯でかみしめていたような気分でしたから、マアすこしの間
吻
(
ほ
)
っとします。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私は、光子が現れたので、わけもなく
吻
(
ほ
)
ツとしたのである。大袈裟に云ふと救ひの手が現れたやうに思つた。私は雪子のお蔭で酷く神経を疲らされてゐた。
熱い風
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
富岡や自分に対して、現在では何のわだかまりも、持つてゐさうもない文面でもあると、
吻
(
ほ
)
つとした。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
長範をば討って棄て、
血刀
(
ちがたな
)
提げて
吻
(
ほ
)
と
呼吸
(
いき
)
つく
状
(
さま
)
する、額には振分たる
後毛
(
おくれげ
)
の
先端
(
さき
)
少し
懸
(
かか
)
れり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして魂も凍りつくばかりの戦慄から解放されて
吻
(
ほ
)
っとしたことであったが、脇の下からはまだ冷たいものがたらたらと気味悪くしたたり落ちた。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
帰って来たら安心して
吻
(
ほ
)
っとした。自分には、Aの父がいやに思われるのもいやなら、彼等林町の一族がいやに思われるのも辛いのだ。笹川春雄氏に会う。
日記:08 一九二二年(大正十一年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
吻
(
ほ
)
つとしたやうな、また不足のやうな、そして、つまらぬ健やかな苦笑を覚へてならなかつた。
川蒸気は昔のまゝ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
吻
(
ほ
)
と、といきをつく間もなく、この
扉
(
ドア
)
が細目に開いた、看護婦の福崎が、廊下から姿を半ば。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
葬式が済んでしまふと、富岡は重荷を降したやうに
吻
(
ほ
)
つとした。邦子の蒲団や身のまはりのものは、二束三文に売り払つて、死者の思ひ出を、
一切合財
(
いつさいがつさい
)
吹き払つてしまつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
と家内は恥ずかしそうに顔を
赧
(
あか
)
らめました。そしてまだ気味悪そうに
吻
(
ほ
)
っと溜息を
吐
(
つ
)
いているのでございます。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
日曜以来、すっかりタガをゆるめてしまっていたので、実にいろいろ気をもみ、本当にきょうは
吻
(
ほ
)
っと、よ。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
風呂では、きんは、きまって、きちんと坐った太股の
窪
(
くぼ
)
みへ湯をそそぎこんでみるのであった。湯は、太股の
溝
(
みぞ
)
へじっと
溜
(
たま
)
っている。
吻
(
ほ
)
っとしたやすらぎがきんの老いを慰めてくれた。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
お蝶は、
吻
(
ほ
)
ツとする共に急に胸が一杯になつて直ぐには口が利けなかつた。
お蝶の訪れ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
石の
反橋
(
そりはし
)
である。
巌
(
いわ
)
と石の、いづれにも
累
(
かさな
)
れる
牡丹
(
ぼたん
)
の花の如きを、左右に築き上げた、
銘
(
めい
)
を
石橋
(
しゃっきょう
)
と言ふ、
反橋
(
そりはし
)
の石の真中に立つて、
吻
(
ほ
)
と
一息
(
ひといき
)
した紫玉は、此の時、すらりと、
脊
(
せ
)
も心も高かつた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
(これは別よ)お母さんおかえりになって
吻
(
ほ
)
っとして御褒美頂いて一息いれるつもりでいたら、そちら工合がよいとは云えなくなったので急に気が又張って
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
これで救われたと思うと重荷を下ろしたように
吻
(
ほ
)
っとして……、夕立ちがきて涼しくなったのと、雷から解放されて蘇生した喜びとで、人の知らぬ二重の爽快感を
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
石の
反橋
(
そりばし
)
である。
巌
(
いわ
)
と石の、いずれにも
累
(
かさな
)
れる
牡丹
(
ぼたん
)
の花のごときを、左右に築き上げた、銘を
石橋
(
しゃっきょう
)
と言う、反橋の石の
真中
(
まんなか
)
に立って、
吻
(
ほ
)
と一息した紫玉は、この時、すらりと、脊も心も高かった。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
聞いた刹那に彼は、
吻
(
ほ
)
ツとしたのである……ヒロソフアとNが云つたのに無性な羞恥と反感を覚えて顔を赤くしたのであつた。「チエツ! いや驚かないでも好いあんなものは、見るのも厭だよ。」
山を越えて
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「冗談じゃねえよ。あの思いで遙々朝鮮くんだりから還って来てよ、内地へついて
吻
(
ほ
)
っと出来るかと思いゃ、大阪を目の前に見て足どめだ。二日だぜ、もう!」
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私は新聞を置いて、初めて
吻
(
ほ
)
っとしたような気持で眼を窓外へ走らせたが、すでに魂の根柢から驚愕させられ切った今の私には、とんと何ものも眼に入らなかった。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「おゝ、俺達もこれで漸く
吻
(
ほ
)
つとしたわけだよ。」
円卓子での話
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
国麿は太い
呼吸
(
いき
)
を
吻
(
ほ
)
とつきて
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と心から
吻
(
ほ
)
っとしたように、祖母はザブリザブリと
湯槽
(
ゆおけ
)
の中で顔を洗いながら念仏を唱えています。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
人々はそれで
吻
(
ほ
)
っとしてしまって、腰をおろしナポレオンさんによろしく願ってしまったのね。
獄中への手紙:11 一九四四年(昭和十九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ちよつと
吻
(
ほ
)
つとしたかたちです。
趣味に関して
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
溜息
(
ためいき
)
を
深
(
ふか
)
く、
吻
(
ほ
)
と
吐
(
つ
)
いて
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私はやっと
吻
(
ほ
)
っとしましたが、こんなところで、こんな
物凄
(
ものすご
)
い犬に襲われようとも思わなければ、馬に乗ったこんな
綺麗
(
きれい
)
な女に
出逢
(
であ
)
おうなぞとは、夢にも思いません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この間(二十一日の朝)疲れで顔がはれぼったいようだったのは、宵っぱりの加減ではなく、小母さんたちがマア無事におかえりになって
吻
(
ほ
)
っとして疲れが出たからです。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
太き
溜息
(
ためいき
)
吻
(
ほ
)
とつきて
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
八千メートル……八千五百……九千……九千八百メートル……ようやくのことで主砲射程外に逃れ得て
吻
(
ほ
)
っとしたが、その時暮色
靉靆
(
あいたい
)
たる左舷西方遥か水平線の彼方に
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
吻
(
ほ
)
っとしたような安心しきれないような眼つきでサイは机のあたりや戸棚のあたりを眺めた。兵隊に出る年までには商業も出してやるという話で、勇吉は来ているのであった。
三月の第四日曜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私は
這々
(
ほうほう
)
の
態
(
てい
)
で妻の部屋から出て来たが、まったく虎の
腭
(
あぎと
)
を
遁
(
のが
)
れたというか、腕白小僧が母親の許から逃げ出して来たというか、
吻
(
ほ
)
っとした気持の中で、さて明日の朝から
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
“吻”の解説
吻(ふん、proboscis)とは、動物の体において、口あるいはその周辺が前方へ突出している部分を指す用語である。動物群によってその部位や役割はさまざまである。
(出典:Wikipedia)
吻
漢検準1級
部首:⼝
7画
“吻”を含む語句
接吻
口吻
吻合
吻々
吻々々々
吻々吻
吻喙
喉吻
尖吻熱舌
接吻泥棒
接吻禮
有吻類
脣吻
餓吻