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彫
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ほ
ふりがな文庫
“
彫
(
ほ
)” の例文
魚眼
(
ぎょがん
)
という
張
(
は
)
りのある眼、
彫
(
ほ
)
りのふかい鼻すじ、
眉
(
まゆ
)
の形、いい唇、個々に見れば見るほど、なおどこかで記憶のある女の顔であった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(
第二十四圖
(
だいにじゆうしず
)
)
壁
(
かべ
)
に
懸
(
かゝ
)
つてゐる
牛
(
うし
)
、
馬
(
うま
)
、
鹿
(
しか
)
などの
繪
(
え
)
はかれ
等
(
ら
)
が
洞穴
(
ほらあな
)
の
中
(
なか
)
の
石壁
(
いしかべ
)
に
彫
(
ほ
)
りつけたり、また
描
(
か
)
いたりした
繪
(
え
)
の
寫
(
うつ
)
しであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
鐘
(
かね
)
のどこかに、その
鐘師
(
かねし
)
の
名
(
な
)
が
彫
(
ほ
)
りつけてあるそうな、と
婆
(
ばあ
)
さんはいった。これは
木之助
(
きのすけ
)
爺
(
じい
)
さんの
話
(
はなし
)
よりよほどほんとうらしい。
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「ほほう、これは面白い発見だ。すると犯人は
麻雀牌
(
こま
)
の
彫
(
ほ
)
りの中に毒薬を塗りこんだというわけですな」と雁金検事は感嘆した。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そうかと思うと、「へえ仁王だね。今でも仁王を
彫
(
ほ
)
るのかね。へえそうかね。
私
(
わっし
)
ゃまた仁王はみんな古いのばかりかと思ってた」
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
学校の机の
蓋
(
ふた
)
の裏側に、
余
(
よ
)
は偉大なる落伍者となっていつの日か歴史の中によみがえるであろうと、キザなことを
彫
(
ほ
)
ってきた。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
×子の墓と
彫
(
ほ
)
った新しい石碑に対して
追慕
(
ついぼ
)
の感じは起らないで、石の下の
棺
(
かん
)
の中で
蛆
(
うじ
)
に喰われている死骸の醜さが胸に浮んだ。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
康頼 しかしあれには二首の歌が
彫
(
ほ
)
りつけてあります。
故郷
(
こきょう
)
をしたう歌が。心あるものはまさか
焚
(
た
)
いてしまいはしますまい。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
こういう職務に立つときの
彼女
(
かのじょ
)
の姿態に針一
突
(
つ
)
きの間違いもなく手間の極致を
尽
(
つく
)
して
彫
(
ほ
)
り出した
象牙
(
ぞうげ
)
細工のような非人情的な完成が見られた。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は此通り眼が惡いので、
判金
(
はんきん
)
の
光次
(
みつつぐ
)
と
彫
(
ほ
)
つた
花押
(
かきはん
)
の下に、チヨイとたがねで傷をつけて居ります。良質の
慶長
(
けいちやう
)
小判ですから、すぐわかります
銭形平次捕物控:302 三軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ここの近くだったか、尾張町一丁目だったかに、鯛みそを売る店があって、その看板が赤い鯛の鱗が金すじで
彫
(
ほ
)
ってあった。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
それは、母親たちの間をうろつき、不器用なからだつきで、
粗
(
あら
)
く
彫
(
ほ
)
った四本の棒切れのような脚を、ぶるぶる
顫
(
ふる
)
わせている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
見
(
み
)
よ!
見
(
み
)
よ!
巌
(
いは
)
の
面
(
めん
)
は
滑
(
なめら
)
かに、
質
(
しつ
)
の
青
(
あを
)
い
艶
(
つや
)
を
刻
(
きざ
)
んで、
花
(
はな
)
の
色
(
いろ
)
を
映
(
うつ
)
したれば、
恰
(
あたか
)
も
紫
(
むらさき
)
の
筋
(
すぢ
)
を
彫
(
ほ
)
つた、
自然
(
しぜん
)
に
奇代
(
きたい
)
の
双六磐
(
すごろくいは
)
。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私は首輪に私とメリーの名前を
彫
(
ほ
)
らせた。私は奮発して、首輪も鎖も上等のを買った。私にはむかしから
羊羹
(
ようかん
)
や
沢庵
(
たくあん
)
をうすめに切るくせがある。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
白くたちこめる湯気の中に、背に
彫
(
ほ
)
られた恐しい般若の面が、すっと消え、ちょっとの間、妖しい雰囲気がただよった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
馬を
彫
(
ほ
)
らせては、当代
唯
(
ゆい
)
一
無
(
む
)
二の名ある
作阿弥
(
さくあみ
)
殿、イヤ、かようなところに、名を変えてひそんでおられようとは……?
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それが果敢ない花ではなく、寧ろ不滅の寶石に
彫
(
ほ
)
り込まれた輝かしい花だといふことをその頃、私は知らなかつたのだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
江戸
(
えど
)
一
番
(
ばん
)
の
女形
(
おやま
)
、
瀬川菊之丞
(
せがわきくのじょう
)
の
生人形
(
いきにんぎょう
)
を、
舞台
(
ぶたい
)
のままに
彫
(
ほ
)
ろうッてんだ。なまやさしい
業
(
わざ
)
じゃァねえなァ
知
(
し
)
れている。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
いつもコワリョーフ少佐は
紅玉髓
(
こうぎょくずい
)
の印形を沢山もっていたが、それには紋章のついたのや、【水曜日】【木曜日】【月曜日】などと
彫
(
ほ
)
ったのがあった。
鼻
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
『二匹の蛇が杖に巻きついたようになっていて、その蛇があんまり本物みたいに
彫
(
ほ
)
ってあるんで、僕はちょっと見た時、生きているのかと思ったよ。』
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
ナイフに
彫
(
ほ
)
り込まれた
頭文字
(
イニシャル
)
に
依
(
よ
)
って私の作り上げた推理を、まだ意地悪く信じていたかったので、矢島五郎——と聞いた時に、いささか
昂奮
(
こうふん
)
して
了
(
しま
)
った。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
御覽
(
ごらん
)
、
私
(
わたし
)
の
蔕
(
へた
)
の
堅
(
かた
)
いこと。まるで
竹
(
たけ
)
の
根
(
ね
)
のやうです。これをお
前
(
まへ
)
さんの
兄
(
にい
)
さんのところへ
持
(
も
)
つて
行
(
い
)
つて、この
裏
(
うら
)
の
平
(
たひ
)
らなところへ
何
(
なに
)
か
彫
(
ほ
)
つてお
貰
(
もら
)
ひなさい。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
そのなかに
大寧坊
(
たいねいぼう
)
に住む
張幹
(
ちょうかん
)
なる者は、左の腕に『
生不怕京兆尹
(
いきてけいちょうのいんをおそれず
)
』右の腕に『
死不怕閻羅王
(
ししてえんらおうをおそれず
)
』と
彫
(
ほ
)
っていた。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
其入口
(
そのいりくち
)
にはぴか/\した
眞鍮
(
しんちゆう
)
の
表札
(
へうさつ
)
に『
山野兎
(
やまのうさぎ
)
』と
其名
(
そのな
)
が
彫
(
ほ
)
りつけてありました、
愛
(
あい
)
ちやんは
聲
(
こゑ
)
もかけずに二
階
(
かい
)
へ
駈
(
か
)
け
上
(
あが
)
りました、
眞實
(
ほんと
)
の
梅子
(
うめこ
)
さんに
逢
(
あ
)
つて
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
今日誤ってもいだ
烏瓜
(
からすうり
)
を
刳
(
く
)
って細君が鶴子の為に
瓜燈籠
(
うりどうろう
)
をつくり、帆かけ舟を
彫
(
ほ
)
って縁につり下げ、しば/\風に吹き
消
(
け
)
されながら、小さな蝋燭をともした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
第
(
だい
)
一に
塩原多助
(
しほばらたすけ
)
と深く
彫
(
ほ
)
つてある。
石塔
(
せきたふ
)
の
裏
(
うら
)
には新らしい
塔婆
(
たふば
)
が立つてゐて、それに
梅廼屋
(
うめのや
)
と書いてある。
塩原多助旅日記
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
以前は
嗤
(
わら
)
っていた朋輩
達
(
たち
)
も少々気味が悪くなって来た。メムフィスの
市
(
まち
)
はずれに建っている
方尖塔
(
オベリスク
)
の前で、彼はその表に
彫
(
ほ
)
られた絵画風な文字を低い声で読んだ。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
父の名も朱字に
彫
(
ほ
)
りつけた、それも父の希望であって、どうせ立てるならばおれの生きてるうちにとのことであったが、いよいよでき上がって
供養
(
くよう
)
をしたときに
紅黄録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
私の仕事はやはり
金型
(
かながた
)
をヘコサに
彫
(
ほ
)
る工人の手本になるので、その意匠を考え考えして種々な用途の器具の内面または外側に、
旨
(
うま
)
く意匠づけたものを彫るのであるから
幕末維新懐古談:40 貿易品の型彫りをしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「
僕
(
ぼく
)
、これほしいな。」といって、
銀
(
ぎん
)
の
軸
(
じく
)
に
小
(
ちい
)
さな
英語
(
えいご
)
の
彫
(
ほ
)
ってあるのをじっと
見
(
み
)
ていますと
小さな弟、良ちゃん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彫
(
ほ
)
りが後藤だとか、毛唐だとか、
縁頭
(
ふちがしら
)
が何で、
鳶頭
(
とびがしら
)
がどうしたとか、目ぬきがどうで、毛抜がこうと、やかましい
能書
(
のうがき
)
ものなんでございましょうが、何をいうにも三下奴
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
而るに今や利根水源を
確定
(
かくてい
)
して、加ふるに上越の国界を
明
(
あきらか
)
にするを得、衆皆
絶叫
(
ぜつけう
)
快
(
くわい
)
と
呼
(
よ
)
ぶ、其勢上越の深山も
崩
(
くづ
)
るるが如し、深井君
直
(
ただ
)
ちに鋭刀を
揮
(
ふる
)
ふて白檜の大樹皮を
彫
(
ほ
)
り
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
一つの扉には
葵
(
あおい
)
の
紋
(
もん
)
があって、中に「贈正一位大相国公尊儀」と刻し、もう一つの方は
梅鉢
(
うめばち
)
の紋で、中央に「帰真 松誉貞玉信女霊位」と
彫
(
ほ
)
り、その右に「
元文
(
げんぶん
)
二年
巳
(
み
)
年」
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
...
彫
(
ほ
)
るのは容易に出来るけれども
相撲取
(
すもうとり
)
を彫るのは一番むずかしいというに同じ事です」玉江嬢
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
板にはたいのような形が
彫
(
ほ
)
ってあるので、じいさんはそれにメリケン粉をどろりと流す、それから目やにをちょっとふいてつぎにあんを入れその上にまたメリケン粉を流す。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
初めはほんの
手弄
(
てなぐさ
)
みだったのが、だんだん色々のものを
彫
(
ほ
)
っている
中
(
うち
)
に
巧
(
うま
)
くなって来て、自分でも面白味が出て来て、しまいには仏像なんかまで
試
(
こころみ
)
るようになったのだそうである。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
一の字を
彫
(
ほ
)
りつけられたのは、抗夫長屋ではやっていた、オイチョカブ
賭博
(
とばく
)
の、
一
(
インケツ
)
、
二
(
ニゾ
)
、
三
(
サンタ
)
、
四
(
シスン
)
、
五
(
ゴケ
)
、
六
(
ロッポー
)
、
七
(
ナキネ
)
、
八
(
オイチョ
)
、
九
(
カブ
)
のうち、この
札
(
ふだ
)
を引けば負けと決っている
一
(
インケツ
)
の意味らしかった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
国の木は勿体なくて
焚木
(
たきぎ
)
にされず、乾しあげて数珠玉を
彫
(
ほ
)
ったり箸にしたりした。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それに「
世田谷区
(
せたがやく
)
池尻町
(
いけじりちょう
)
二二〇
野沢愛子
(
のざわあいこ
)
」と
彫
(
ほ
)
りつけてあるのを発見しました。
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
洞穴に
彫
(
ほ
)
りつけた動物の絵が、宗教時代の偶像に、さらに近代の美術にまで移るにあたって、それらのものは、ひたすらに芸術のための芸術へと発展、分化してきたともいえるのである。
美学入門
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
そこを訪れる若い人達は、みんなその水車の柔い、だん/\朽ちてゆく木に、自分の名前の
頭字
(
かしらじ
)
を
彫
(
ほ
)
りつけて行つた。
堰
(
せき
)
は一部分
毀
(
こは
)
されて、清らかな山の流れは、岩の川床を流れ落ちた。
水車のある教会
(旧字旧仮名)
/
オー・ヘンリー
(著)
中には
幣
(
へい
)
も鏡もなくて、単に中央を
彫
(
ほ
)
り
窪
(
くぼ
)
めて、
径
(
けい
)
五寸ばかりの石の球が
篏
(
は
)
め込んであった。不思議でたまらなかったが、悪いことをしたと思うから誰にも理由を尋ねてみることができない。
幻覚の実験
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
京の都の、名高い
彫
(
ほ
)
り物師にたのんで、
観音様
(
かんのんさま
)
の像をほってもらいました。それができあがってきますと、庭の梅の木のそばに、小さいお堂をこしらえて、そこに観音様の像をまつりました。
長彦と丸彦
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
見よ、
空舟
(
うつろぶね
)
を
刳
(
く
)
りて、殘る
船板
(
ふないた
)
をアポロオンに
彫
(
ほ
)
り刻みし未開人の如く
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
「虔十公園林」と
彫
(
ほ
)
った青い
橄欖岩
(
かんらんがん
)
の
碑
(
ひ
)
が建ちました。
虔十公園林
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
紙に書くのか、
革
(
かわ
)
に書くのか、石や金に
彫
(
ほ
)
るのかい。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
日光の土にも
彫
(
ほ
)
れる牡丹かな
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
丸彫
(
まるぼり
)
に
彫
(
ほ
)
りあげて
新頌
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
扉
(
とびら
)
に
彫
(
ほ
)
れる
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
「じゃあ、さっそく旅立ちていうわけじゃねえか。したが法印さん、石はあっても、文は間に合っても、
彫
(
ほ
)
りはどうしなさるんで?」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彫
常用漢字
中学
部首:⼺
11画
“彫”を含む語句
彫刻
牙彫
木彫
浮彫
彫刻物
象牙彫
透彫
彫塑
彫刻師
鋳型彫
彫物
彫琢
彫像
高彫
彫付
筋彫
朱彫
彫心鏤骨
欄間彫
彫刻家
...