心細こゝろぼそ)” の例文
わびしさ……わびしいとふは、さびしさも通越とほりこし、心細こゝろぼそさもあきらめ氣味ぎみの、げつそりとにしむおもひの、大方おほかた、かうしたときことであらう。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時候じこうかはといふものは、めう心細こゝろぼそいやうな氣のするものですね、これはあながち不自由ふじいうくらしてゐるばかりではないでせうよ。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
さしてなにとははれねども次第々々しだい/\心細こゝろぼそおもひ、すべて昨日きのふ美登利みどりおぼえなかりしおもひをまうけてものはづかしさふばかり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一同いちどう詮方せんかたなく海岸かいがんいへかへつたが、まつたえたあとのやうに、さびしく心細こゝろぼそ光景くわうけい櫻木大佐さくらぎたいさ默然もくねんとしてふかかんがへしづんだ。
勘次かんじおほはれたやうで心細こゝろぼそきりなかに、其麽そんなことでいちじるしく延長えんちやうされた水路すゐろ辿たどつてながら、悠然ゆつくりとしてにぶさをてやうをするのにこゝろ焦慮あせらせて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれには悲愴ひさうかんほかに、だ一しゆ心細こゝろぼそかんじが、こと日暮ひぐれよりかけて、しんみりとみておぼえた。これ麥酒ビールと、たばことが、しいのでつたとかれつひ心着こゝろづく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
時々とき/″\すこしはいかといても、御米およねかすかにくるしいとこたへるだけであつた。宗助そうすけまつた心細こゝろぼそくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
心細こゝろぼそ氣持きもちでながめてゐるのです。さぁこれで、も一度いちどかへしてください。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
考へると心細こゝろぼそくなる。何處に取ツて付端つきはが無いやうにも思はれる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
つてあはれなあいちやんは、心細こゝろぼそくなつてきふまたしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
いで腰掛こしかけさがりたり此時漸々やう/\十歳ばかりになる小僧の三吉と云ふ者有りけるが主人五兵衞始め此所こゝいでし人々吟味のすみ次第しだい一人づつ段々とさがりて今は主人の悴五郎藏とおのれのみ只二人白洲に殘されければ心細こゝろぼそくやありけんめそ/\と涙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
てつごと健脚けんきやくも、ゆきんではとぼ/\しながら、まへつてあしあとをいんしてのぼる、民子たみこはあとから傍目わきめらず、のぼ心細こゝろぼそさ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あれらぬうち仕方しかたもなし、つて其車それれますものか、れでも此樣こんさびしいところ一人ひとりゆくは心細こゝろぼそいほどに、廣小路ひろこうぢるまでたゞみちづれにつてくだされ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『おや/\、どうしたんでせう、このさかなへんあぢになつてよ。』とさけんだのは、じつ心細こゝろぼそ次第しだいであつた。
かれこの心細こゝろぼそ解答かいたふで、僥倖げうかうにも難關なんくわん通過つうかしてたいなどとは、ゆめにもおもまうけなかつた。老師らうし胡麻化ごまか無論むろんなかつた。其時そのとき宗助そうすけはもうすこ眞面目まじめであつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
院長ゐんちやう其側そのそばこしけて、かしられて、じつとして心細こゝろぼそいやうな、かなしいやうな樣子やうすかほあかくしてゐる。ハヾトフはかたちゞめて冷笑れいせうし、ニキタと見合みあふ。ニキタもおなじくかたちゞめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けつして御心遣ひなく何時まで緩々ゆる/\と御逗留とうりう成れまし然ながら斯樣申せば何とも失禮しつれい千萬せんばんなれども永々なが/\の御逗留とうりうと云ことには御良人おつれあひの御病氣にて御物入おんものいり莫大ばくだいならん縱令たとへ餘計よけい御貯おんたくはへ有とも斯して在れなば追々おひ/\のこり少なになり旅先たびさきは別て心細こゝろぼそくも思ふものなり金銀は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
奧山家おくやまが一軒家いつけんやに、たをやかなをんなて、白雪しらゆきいとたに絲車いとぐるまおとかとおもふ。……ゆかしく、なつかしく、うつくしく、心細こゝろぼそく、すごい。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひんのよき高髷たかまげにおがけは櫻色さくらいろかさねたるしろ丈長たけなが平打ひらうち銀簪ぎんかんひと淡泊あつさりあそばして學校がくかうがよひのお姿すがたいまのこりて、何時いつもとのやうに御平癒おなほりあそばすやらと心細こゝろぼそ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
駄目だめよ。だつて、叔父をぢさんにまつた信用しんようがないんですもの」と心細こゝろぼそさうにこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ねむくはないので、ぱちくり/\いてても、ものまぼろしえるやうになつて、天井てんじやうかべ卓子テエブルあし段々だん/\えて心細こゝろぼそさ。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じみなることふやうなれどもいゑつぎのまらざるはなにかにつけて心細こゝろぼそく、このほどちう其方そなたのやうに、さびしいさびしいのひづめもではられぬやうなことあるべし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そらまた化性けしやうのものだと、急足いそぎあし谷中やなかく。いつもかはらぬ景色けしきながら、うで島田しまだにおびえし擧句あげくの、心細こゝろぼそさいはむかたなし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おいたるおやせたるかたもむとて、ほねあたりたるもかゝはいとゞ心細こゝろぼそさのやるかたなし。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
心細こゝろぼそさはもをすまでもなかつたが、卑怯ひけふやうでも修業しゆげふまぬには、恁云かういくらところはうかへつて観念くわんねん便たよりい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
心細こゝろぼそ御身おんみなればこそ、小生おのれ風情ふぜい御叮嚀ごていねいのおたのみ、おまへさま御存ごぞんじはあるまじけれど、徃昔そのかみ御身分ごみぶんおもひされておいたはしゝ、後見うしろみまゐらするほど器量きりやうなけれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
えきみぎると、もう心細こゝろぼそいほど、原野げんや荒漠こうばくとして、なんとも見馴みなれない、ちぎぐもが、大円だいゑんそらぶ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かしけれどおまへさまはお一人子ひとりごわたしとてもあにばかりをんな同胞きやうだいもちませねばさびしさはおなじことなにかにつけて心細こゝろぼそ御不足ごふそくかはらねどいもと思召おぼしめしてよとそこにものある詞遣ことばづかひそれは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひとはなれたやうな世間せけんとほざかつたやうながするので、心細こゝろぼそくもあり、裏悲うらかなしくもあり、覚束おぼつかないやうでもあり、おそろしいやうでもある、いや心持こゝろもちだ、いや心持こゝろもちだ。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
地上ちじやうなが影法師かげばふし心細こゝろぼそげにんでく、いつしか傘屋かさや路次ろじつておきやうれい窓下まどしたてば、此處こゝをば毎夜まいよおとづれてれたのなれど、明日あすばんはもうおまへこゑかれない
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みち大畝おほうねりに、乗上のりあが乗下のりさがつて、やがて、せまり、やまきたり、いはほちかづき、かはそゝいで、やつと砂煙すなけぶりなかけたあたりから、心細こゝろぼそさがまたした。はいまみどりに、ながれしろい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また馬鹿ばかなことをふよそんなよはだから病気びやうきがいつまでもなほりやアしないきみ心細こゝろぼそことつてたまへ御父おとつさんやおつかさんがどんなに心配しんぱいするかれません孝行かう/\きみにも似合にあはない。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分じぶんあま大陸たいりく一端いつたんなみのために喰缺くひかかれることのはやいのを、心細こゝろぼそかんずるばかりであつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
きやうさん母親おふくろ父親おやぢからつきりあていのだよ、おやなしでうまれてがあらうか、れはうしても不思議ふしぎでならない、とやきあがりしもち兩手りやうてでたゝきつゝいつもふなる心細こゝろぼそさを繰返くりかへせば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
籠中かごのなかひとこゑふるはし、「おひとわるい、かゝ難儀なんぎきようがりてなぶりたまふは何事なにごとぞ。きみ御心おんこゝろはいかならむ、まこと心細こゝろぼそくなりさふらふ」と年效としがひもなくなみだながす、御傍おそば面々めん/\笑止せうしおも
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鐵拳かなこぶし撲倒はりたふ勇氣ゆうきはあれどまこと父母ちゝはゝいかなるせて何時いつ精進日しやうじんびとも心得こゝろえなきの、心細こゝろぼそことおもふては干場ほしばかさのかげにかくれて大地だいぢまくら仰向あふむしてはこぼるゝなみだ呑込のみこみぬるかなしさ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
與吉よきちは、一人ひとりたにのドンぞこるやうで、心細こゝろぼそくなつたから、見透みすかすごとひかりあふいだ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しまつたりと退きて畜生ちくしやうめとはまことみつけのことばなり、ものなればおもからぬかさしらゆき往來ゆきかひおほくはあらぬ片側町かたかはまちうすぐらきに悄然しよんぼりとせし提燈ちやうちんかげかぜにまたゝくも心細こゝろぼそげなる一輛いちりやうくるまあり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……三本木原ぼんぎはら真中まんなかへ、向風むかひかぜと、わだちかぜ吹放ふきはなされたときは、おきたゞよつたやうな心細こゝろぼそさ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ものいはねばせまいゑうちなんとなくうらさびしく、くれゆくそらのたど/\しきに裏屋うらやはまして薄暗うすくらく、燈火あかりをつけて蚊遣かやりふすべて、おはつ心細こゝろぼそそとをながむれば、いそ/\とかへ太吉郎たきちらう姿すがた
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うら田圃たんぼを、やますそから、あかざつゑいて、畝路あぜみちづたひに、わたし心細こゝろぼそそらくもります、離座敷はなれざしきへ、のそ/\とはひつてました、ひげしろい、あかがほの、たかい、茶色ちやいろ被布ひふ
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分じぶんこゝろなにもぼうつとして物思ものおもひのないところかれるであらう、つまらぬ、くだらぬ、面白おもしろくない、なさけないかなしい心細こゝろぼそなかに、何時いつまでわたしめられてるのかしら、これが一せうか、一せうがこれか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其處そこまできませうよ。——夜中よなからぬ土地とちぢやあ心細こゝろぼそいんですもの。」
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れい酒癖しゆへき何處どこみせにかたふれて寢入ねいりても仕舞しまひしものかそれなればいよいよこまりしことなりうちにてもさぞあん此家こゝへもまたどくなりなにとせんとおもほどよりつもゆきいとゞ心細こゝろぼそ燭涙しよくるゐながるゝおもて二階にかい一人ひとり取殘とりのこされし新田につたのおたか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なんですかね、島流しまながしにでもつて、こゝろ遣場やりばのなさに、砂利じやりつかんでうみ投込なげこんででもるやうな、心細こゝろぼそい、可哀あはれふうえて、それ病院びやうゐん土塀どべいねらつてるんですから、あゝ、どくだ。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
びたりとかやまいもとはお前様まへさまはるゝも道理どうりなりらざりしわれうらめしくもらさぬきみうらめしく今朝けさ見舞みまひしときせてゆるびし指輪ゆびわぬきりてこれ形見かたみとも見給みたまはゞうれしとて心細こゝろぼそげにみたる其心そのこゝろ今少いますこはやらばくまでにはおとろへさせじを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さて、どつちみち靜岡しづをかとほるには間違まちがひのない汽車きしやだから、ひとをしへけないでましたが、米原まいばら𢌞まはるのか、岡山をかやま眞直まつすぐか、自分じぶんたちのつた汽車きしや行方ゆくへらない、心細こゝろぼそさとつてはない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちしもの此文このふみにはなん文言もんごんどういふふうきてるにや表書おもてがきの常盤木ときわぎのきみまゐるとは無情つれなきひとへといふこと岩間いはま清水しみづ心細こゝろぼそげにはたまへどさても/\御手おてのうるはしさお姿すがたは申すもさらなり御心おこゝろだてとひお學問がくもんどころなき御方おかたさまにおもはれてやとはよもやおほせられまじ深山育みやまそだちのとしてくらものになるこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たゞいそぎにいそがれて、こゝにこゝろなき主從しうじうよりも、御機嫌ごきげんようとかどつて、一曳ひとひきひけばゆきに、母衣ほろかたちかくれて、殷々いん/\としてしづきやく見送みおく宿やどのものが、かへつて心細こゝろぼそかぎりであつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何処どこかんがえる、と心細こゝろぼそうへぢやが、なんても思切おもひきれぬ……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)