去年きよねん)” の例文
「うむ、なあにれもそれから去年きよねんあき火箸ひばしばしてやつたな」卯平うへいういつてかれにしてはいちじるしく元氣げんき恢復くわいふくしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
またあきになつて、まち夫婦ふうふ去年きよねんとおなじやうに子供こどもてるとき食後しよくごなどは、しみ/″\と故郷こきやう追憶つひおくにふけるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
……それが、どぶはしり、床下ゆかしたけて、しば/\人目ひとめにつくやうにつたのは、去年きよねん七月しちぐわつ……番町學校ばんちやうがくかう一燒ひとやけにけた前後あとさきからである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし去年きよねんふゆつまむかへたばかりで、一たい双方さうはうとも内気うちきはうだから、こゝろそこから打釈うちとけるとほどれてはゐない。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
晝のうちはあんなにほか/\とあたゝかくしてゐながら、なんとなくたもとをふくかぜがうそさむく、去年きよねんのシヨールのしま場所ばしよなぞをかんがへさせられたりしました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それはわすれもせぬ去年きよねんあきことで、わたくし米國ベイこくから歐羅巴エウロツパわた航海中かうかいちうで、ふと一人ひとり英國イギリス老水夫らうすゐふ懇意こんいになつた。
ホト/\たゝきて入來り御目にかゝるははじめてなれどわたくし事去年きよねんの冬金子をおとしたるは斯々かく/\なりと段々譯を咄し其節請取に罷出ませうとは存じたれども大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みぎ次第しだいにて大陰暦たいゝんれき春夏秋冬しゆんかしうとうせつかゝはらず、一年の日數ひかずさだむるものなれば去年きよねん何月何日なんぐわつなんにちと、今年ことし其日そのひとはたゞとなへのみ同樣どうやうなれども四季しきせつかなら相違さうゐせり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
御米およね臺所だいどころで、今年ことし去年きよねんやう水道すゐだうせんこほつてれなければたすかるがと、くれからはるけての取越苦勞とりこしぐらうをした。よるになると夫婦ふうふとも炬燵こたつにばかりしたしんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たとへてれば去年きよねんの一ぐわつはじめの爲替相場かはせさうばが四十六ドルであつてそれが六ぐわつ三十にちには四十三ドルの三にさがつてるから、わづか六箇月かげつあひだに四りん低落ていらくである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それからたれをそはるともなく次第しだいならおぼえて、去年きよねんあたりちよつとその熱病期ねつびやうきだつたともへる。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
まだ、としかはらない舊年ふるとしあひだに、あゝはるがやつてたことだ。してると、この一年いちねんふたつにわかれて、きのふまでを去年きよねんといはうか。今日けふからのちを、今年ことしといはうか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
小學校生活せうがくかうせいくわつくはしいことべつまうしますまい。去年きよねんなつでした、ぼくひさしぶりで故郷くにかへつてましたが、伸一先生しんいちせんせいとしつたばかり、其精神そのせいしん其生活そのせいくわつすこしもかはりません。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おぢさんはきみたちのおとうさんやおかあさんとおなじやうに貧乏びんぼふだ。そしてきみたちのやうな元氣げんき可愛かあい子供こどもつてゐる。去年きよねんは六つになるスミレといふをんな一人ひとりくした。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
のんださけ勘定かんじやうからですよ。去年きよねんぼんに一どおまへにおごつたことがあるから、けふのははらへと、あののんだくれ のわしやつふんです。するとあんたのはうはうですわねえ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
讀書どくしよかれ病的びやうてき習慣しふくわんで、んでもおよれたところものは、れが縱令よし去年きよねん古新聞ふるしんぶんらうが、こよみであらうが、一やうえたるもののやうに、屹度きつとつてるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
まへ去年きよねんわたし寸白すばこいてゐる時分じぶんうち療治れうぢたに、梅喜ばいきさんの療治れうぢ下手へただが、何処どこ親切しんせつ彼様あんじつる人はないツて、うち小梅こうめ大変たいへんまへ岡惚をかぼれをしてゐたよ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ましてやこの大島田おほしまだをりふしは時好じこう花簪はなかんざしさしひらめかしておきやくらへて串談じようだんいふところかば子心こゞころにはかなしくもおもふべし、去年きよねんあひたるときいま駒形こまかた蝋蠋ろうそくやに奉公ほうこうしてまする
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は白いくさをかみながら立ち上つた。ふと、私はそのくさが、去年きよねんあき私達わたしたちすわつてみつけたときのくさ相違さうゐないとかんがへた。それが一を落してまたを出した。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
去年きよねん夏頃なつごろから稼場かせぎば姿すがたはじめ、川風かはかぜあきはやぎ、手袋てぶくろした手先てさきこゞえるやうなふゆになつても毎夜まいよやすまずにるので、いまでは女供をんなどもなかでも一ばん古顔ふるがほになつてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
大丈夫だいじやうぶだといふところで、望生ぼうせいに一たい如何どうしたのかとうてると、草刈くさかりながに、子供こどもて、去年きよねんくれ此處こゝ大穴おほあなけたのは、此人達このひとたちだとげたために、いくらお前達まへたちねこかぶつても駄目だめだと
我越後には小正月の(小正月とは正月十五日以下をいふ)はじめ鳥追櫓とりおひやぐらとて去年きよねんより取除とりのけおきたる山なす雪の上に、雪を以て高さ八九尺あるひは一丈余にも、高さにおうじてすゑひろく雪にてやぐら築立つきたて
去年きよねんくれにや味噌みそくつちんではたれえたぜねしほまでつたんだな、れもこえめねえから味噌みそなくつちややうねえな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しばらくして、大手筋おほてすぢを、去年きよねん一昨年おととしのまゝらしい、枯蘆かれあしなかつたときは、ぞく水底みづそこんでとほるとふ、どつしりしたものにえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
連出つれいだせしかば大岡殿コレ品川宿の馬士まご其方は去年きよねん十七屋の飛脚をのせ鈴ヶ森に於て切られし所なんぢは運好うんよくいのちたすかりしが其時の盜人ぬすびとは爰に居る段右衞門と言者いふものならん能々よく/\顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
去年きよねん彼岸ひがんが三月の二十一日なれば今年ことし彼岸ひがん丁度ちやうど其日そのひなり。かつ毎年まいねん日數ひかず同樣どうやうなるゆゑ、一年とさだめて約條やくでうしたること丁度ちやうど一年の日數ひかずにて閏月しゆんげつため一箇月いつかつき損徳そんとくあることなし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
吾等われらとう印度洋インドやうこの孤島はなれじまへだゝつてつても、么麽どうしてこのいわはずにられやう、去年きよねんも、一昨年おとゞしも、當日たうじつ終日しうじつげふやすんで、こゝろばかりの祝意しゆくゐひやうしたが、今年ことし今日けふといふ今日けふ
だからはなれてさへゐれば、まあいんですが、其奴そいつ去年きよねんくれ突然とつぜんましてね
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それ其筈そのはづ実家さと生計向くらしむきゆたかに、家柄いへがら相当さうたうたかく、今年ことし五十幾許いくつかのちゝ去年きよねんまで農商務省のうしやうむしやう官吏くわんりつとめ、嫡子ちやくし海軍かいぐん大尉たいゐで、いま朝日艦あさひかん乗組のりくんでり、光子みつこたつ一人ひとり其妹そのいまうととして
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
れのこと亂暴らんぼうだとひとがいふ、亂暴らんぼうかもれないが口惜くやしいこと口惜くやしいや、なあいてくれのぶさん、去年きよねんれがところ末弟すゑやつ正太郎組しようたらうぐみ短小野郎ちびやらう萬燈まんどうのたゝきひからはじまつて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それはたしか去年きよねん春頃はるごろ池谷いけのやしんらううちでのことで、前日ぜんじつ晝頃ひるごろはじめて翌日よくじつ夕方過ゆふがたすぎまで八圈戰けんせんを五くわいぐらゐかへしたやうにおもふが、をはりにはあたま朦朧もうろうとしてからだはぐたぐたになつてしまつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
我越後には小正月の(小正月とは正月十五日以下をいふ)はじめ鳥追櫓とりおひやぐらとて去年きよねんより取除とりのけおきたる山なす雪の上に、雪を以て高さ八九尺あるひは一丈余にも、高さにおうじてすゑひろく雪にてやぐら築立つきたて
なあに爺樣ぢいさまそつちこつちからつてゑたてたのよ、去年きよねんはそんでも其處そこらへ玉蜀黍位たうもろこしぐれえつくれたつけが、れ、邪魔じやまだともはんねえしなあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いまは、容子ようすだけでもうたがところはない……去年きよねんはるなかごろから、横町よこちやう門口かどぐちの、數寄すきづくりの裏家うらやんだ美人びじんである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
斯て彦三郎は木蔭こかげかくれ居る處に夜駕籠よかごもどりと見えて一人は挑灯ちやうちんを持一人は駕籠かごかつぎ小便を爲ながら何と助十去年きよねん此所このところ獄門ごくもんに懸つた小間物屋彦兵衞那れは大きな間違まちがひ隱居を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みぎごと大陽暦たいやうれき日輪にちりん地球ちきうとをてらあはせて其互そのたがひ釣合つりあところもつて一年の日數ひかずさだめたるものゆへ、春夏秋冬しゆんかしうとう寒暖かんだん毎年まいとしことなることなく何月何日なんぐわつなんにちといへば丁度ちやうど去年きよねん其日そのひおな時候じこうにて
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
おもしたとて今更いまさらうなるものぞ、わすれて仕舞しまあきらめて仕舞しまへと思案しあんめながら、去年きよねんぼんにはそろひの浴衣ゆかたをこしらへて二人ふたりしよ藏前くらまへ參詣さんけいしたることなんどおもふともなくむねへうかびて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その時分じぶん宗助そうすけは、つねあたらしい世界せかいにばかりそゝがれてゐた。だから自然しぜん一通ひととほり四季しきいろせて仕舞しまつたあとでは、ふたゝ去年きよねん記憶きおくもどすために、はな紅葉もみぢむかへる必要ひつえうがなくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……去年きよねんはるごろまでは、樹蔭こかげみちで、戸田街道とだかいだう表通おもてどほりへ土地とちひとたちも勝手かつて通行つうかうしたのだけれども、いまは橋際はしぎは木戸きど出來できて、くわん構内こうないつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちゝ一昨年をとゝしうせたるときも、はゝ去年きよねんうせたるときも、こゝろからの介抱かいはうよるおびたまはず、るとてはで、がへるとては抱起だきおこしつ、三月みつきにあまる看病かんびやう人手ひとでにかけじと思召おぼしめしのうれしさ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふるくから、ひとつた有名いうめい引手茶屋ひきてぢやや。それが去年きよねん吉原よしはら火事かじけて、假宅かりたく營業しやうばいをしてたが、つゞけて營業しやうばいをするのには、なほしをしなくてはならぬ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
去年きよねん向島むかふじま花見はなみとき女房にようぼうづくりして丸髷まるまげつて朋輩ほうばいともあそびあるきしに土手どて茶屋ちやゝであのつて、これ/\とこゑをかけしにさへわたしわかなりしにあきれて、おつかさんでござりますかとおどろきし樣子やうす
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たまらねえ、去年きよねん沙魚はぜからびたあたまばかり、こゝにも妄念まうねんがあるとえて、きたいてそろつてくちけてら。わらびどうにつけてうよ/\と這出はひだしさうだ、ぺつ/\。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いきほひよく引入ひきいれしがきやくろしてさておもへばはづかしゝ、記憶きおくのこみせがまへいまには往昔むかしながらひと昨日きのふといふ去年きよねん一昨年をとゝし同商中どうしやうちゆう組合曾議くみあひくわいぎあるひ何某なにがし懇親曾こんしんくわいのぼりなれし梯子はしごなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
去年きよねんことである。一雨ひとあめに、打水うちみづに、朝夕あさゆふ濡色ぬれいろこひしくる、かわいた七月しちぐわつのはじめであつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せい凱歌かちどきこゑいさましく引揚ひきあげしにそれとかはりて松澤まつざは周章狼狽しうしやうらうばいまこと寐耳ねみゝ出水でみづ騷動さうどうおどろくといふひまもなくたくみにたくみし計略けいりやくあらそふかひなく敗訴はいそとなり家藏いへくらのみか數代すだいつゞきし暖簾のれんまでもみなかれがしたればよりおちたる山猿同樣やまざるどうやうたのむ木蔭こかげ雨森新七あめもりしんしちといふ番頭ばんとう白鼠しろねづみ去年きよねん生國しやうこくかへりしのち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
去年きよねん御坊様おばうさま親子連おやこづれ順礼じゆんれい間違まちがへてはいつたといふで、はれ大変たいへんな、乞食こじきたやうなものぢやといふて、人命じんめいかはりはねえ、おツかけてたすけべいと、巡査様おまはりさまが三にんむらもの十二人じふにゝん
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
去年きよねんくれのやつがぼんしてるぢやないか。だらしなくみたがつてばかりるからだ。」「は、今度こんど今度こんどは……」「おかぶつてら。——くれにはきつれなよ。」——そのくせ
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんなことからおさんも、去年きよねん……當座たうざ、かりに玉川たまがはとしてく……其家そのいへ出入ではひりにけたやうだつたが、主人あるじか、旦那だんならず、かよつてるのが、謹深つゝしみぶかつゝましやかな人物じんぶつらしくて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
去年きよねんおつかさんがなくなつたからね……」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)