遠慮ゑんりよ)” の例文
ふ、牛切ぎうきりの媽々かゝあをたとへもあらうに、毛嬙飛燕まうしやうひえんすさまじい、僭上せんじやういたりであるが、なにべつ美婦びふめるに遠慮ゑんりよらぬ。其處そこ
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのさまれに遠慮ゑんりよらず、やなときやといふがよし、れを他人たにんをとこおもはず母樣はヽさまどうやうあまたまへとやさしくなぐさめて日毎ひごとかよへば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しか卯平うへい老衰らうすゐやうやくのことでけたこゝろそこわだかまつた遠慮ゑんりよ性來せいらい寡言むくちとで、自分じぶんから要求えうきうすることは寸毫すんがうもなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ふくみ何にもないが一ツ飮ふと戸棚とだなより取出す世帶せたいの貧乏徳利干上ひあがる財布のしま干物さしおさへつ三人が遠慮ゑんりよもなしに呑掛のみかけたりお安は娘に逢度さを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんです、遠慮ゑんりよなくうおひなさい、わつしが買つてげませう、何様どんな物がべたいんです、うもなんだツて沢山たんとべられやしますまい。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
こんな質問しつもんふと、小六ころく下宿げしゆくからあそびに時分じぶんやうに、淡泊たんぱく遠慮ゑんりよのないこたへをするわけかなくなつた。やむ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
斯樣かやうにしてみづか遠慮ゑんりよをし、また自分じぶんから抑制よくせいをして共同生活きやうどうせいくわつ妨害ばうがいにならぬやうにと注意ちゆういをしてるのである。すなは放任主義はうにんしゆぎ神髓しんずゐとするところであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
寢息ねいきもやがて夜着よぎえりしろ花咲はなさくであらう、これが草津くさつつねよるなのである。けれどもれては何物なにものなつかしい、吹雪ふゞきよ、遠慮ゑんりよなくわたしかほでゝゆけ!
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
A てよ。對話たいわは『中外ちうぐわい』にせるんだから、そんなはなしすこ遠慮ゑんりよしてかうよ。それよりかモツト葉書はがきくわんする無邪氣むじやき面白おもしろはなしでもないかい。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
モイセイカは今日けふ院長ゐんちやうのゐるために、ニキタが遠慮ゑんりよしてなに取返とりかへさぬので、もらつて雜物ざふもつを、自分じぶん寐臺ねだいうへあらざらひろげて、一つ/\ならはじめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
時々は目をつぶつて遠慮ゑんりよなくおくびをしたのち身体からだを軽く左右さいうにゆすりながらおとよの顔をばなんもなくながめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼女かのぢよくちかたは、すこ内気うちきすぎるほど弱々よわ/\しかつた。そしてそれについて、べつにはつきりした返事へんじあたへなかつたが、わざと遠慮ゑんりよしてゐるやうにもえた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それから二人ふたり種々いろ/\談話はなしをしてうち懇意こんいになり、ボズさんが遠慮ゑんりよなくところによるとぼく發見みつけ場所ばしよはボズさんのあじろのひとつで、足場あしばはボズさんがつくつたこと
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いや、誰も憎いとははんよ。憎いんなら誰に遠慮ゑんりよも義理もあるもんか、とツくにしてしまふさ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
すなは今時こんじ内職ないしよく目的もくてきかゆあらず塩にあら味噌みそあらず安コートを引被ひつかけんがためそろ安縮緬やすちりめん巻附まきつけんがためそろ今一歩をすゝめて遠慮ゑんりよなく言はしめたまへ安俳優やすはいいうに贈り物をなさんがめにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
なに遠慮ゑんりよをしねえでびるほどやんなせえ、生命いのちあやふくなりや、くすりらあ、其為そのためわしがついてるんだぜ、なあねえさん。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しな此處こゝるとういふ遠慮ゑんりよをしなければならぬので、すこしはとほくても風呂ふろほかもらひにくのであつたがそのばんはどこにも風呂ふろたなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宗助そうすけ相當さうたう資産しさんのある東京とうきやうものゝ子弟していとして、彼等かれら共通きようつう派出はで嗜好しかう學生がくせい時代じだいには遠慮ゑんりよなくたしたをとこである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちゝにまで遠慮ゑんりよがちなればおのづからことばかずもおほからず、一わたしたところでは柔和おとなしい温順すなほむすめといふばかり、格別かくべつ利發りはつともはげしいともひとおもふまじ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はゝツ。国王こくわうの作つた詩といふから、結構けつこうな物だらうとぞんじて、手に取り上げますると、王「どうぢやな、自製じせいであるが、うまいかまづいか、遠慮ゑんりよなしにまうせ。シ ...
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
たべよ/\手前は一番利口者オヽかしこい奴だサア遠慮ゑんりよせずにたべよ/\と申さるゝに其處そこは子供ゆゑ菓子くわし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うへからなぞは、とおもひながら、せばいゝのに、——それでも草履ざうり遠慮ゑんりよしたが、雪靴ゆきぐつ穿いた奥山家おくやまが旅人たびびとで、ぐい、と踏込ふみこむと、おゝつめたい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
懇意こんいわか青年せいねん心易立こゝろやすだてはな遠慮ゑんりよのない題目だいもくは、是迄これまで二人ふたりあひだ何度なんどとなく交換かうくわんされたにもかゝはらず、安井やすゐはこゝへて、息詰いきづまつたごとくにえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ら、はあらねえともね」おつたは蕎麥そば種子の一ぱいらけたには遠慮ゑんりよもなく一直線ちよくせん不駄げたあとをつけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
れいまをしいたゞいておでと蒔散まきちらせば、これを此娘このこの十八ばんれたることとてのみは遠慮ゑんりよもいふてはず、旦那だんなよろしいのでございますかと駄目だめして
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
アヽ左様さやうかい、汁粉しるこくひたのか、それうも千萬せんばんかたじけないことだ、サ遠慮ゑんりよせずにこれからあがれ、履物はきものわきはう片附かたづけて置け。「へい。「サ此方こつちあがれ。「御免下ごめんくださいまして。 ...
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其方儀吟味ぎんみ致し候處別段べつだん惡事あくじ無之とは申ながら不行屆の儀も有之候故主人方にて遠慮ゑんりよ申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、いづれものにちかいのであるから、またばける、といはれるのをおもんぱかつて、内々ない/\遠慮ゑんりよがちにはなしたけれども、じつは、みゝづくはきである。第一だいいちかたち意氣いきだ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此方こちらから強請ねだつわけではなけれど支度したくまで先方さき調とゝのへてはゞ御前おまへ戀女房こひによぼうわたし父樣とゝさん遠慮ゑんりよしてのみは出入でいりをせぬといふもいさむさんの身分みぶんおそれてゞは
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
生死しようし分目わけめといふ初産ういざんに、西應寺さいおうじむすめがもとよりむかひのくるま、これは大晦日おほみそかとて遠慮ゑんりよのならぬものなり、いへのうちにはかねもあり、放蕩のらどのがてはる、こゝろは二つ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうとした信玄袋しんげんぶくろは、かへりみるにあまりにかるい。はこせると、ポンと飛出とびだしさうであるから遠慮ゑんりよした。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
へてれとらさぬ用心ようじんむかし氣質かたぎいつこくを立通たてとほさする遠慮ゑんりよ心痛しんつうおいたはしやみぎひだり御苦勞ごくらうばかりならばおよめさまなり舅御しうとごなり御孝行ごかうかう御遠慮ごゑんりよらぬはず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
せめては四邊あたりこゝろきて、肩身かたみせまくすくみたらば、いさゝじよするはうもあらむ、遠慮ゑんりよもなくせきめて、落着おちつすましたるがにくしとて、乘客じようかくの一にんまへすゝみて
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
りようもんをばくゞりるに正太しようたかねてもあそびに來馴きなれてのみ遠慮ゑんりよいへにもあらねば、あとよりつづいて縁先ゑんさきからそつとあがるを、母親はゝおやるより、おゝ正太しようたさんくださつた
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのは、ものぐるはしく、面影おもかげしろい、かみくろい、もすその、むねの、ちゝのふくらみのある友染いうぜんを、端坐たんざしたひざかして、うちつけに、明白めいはくに、ゆめ遠慮ゑんりよのないやうにこひかたつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふゆゆきおろしは遠慮ゑんりよなくをきるさむさ、うをといひては甲府かうふまで五みちりにやりて、やう/\𩻩まぐろ刺身さしみくちくらゐ、あなたは御存ごぞんじなけれどお親父とつさんにきい見給みたま
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
片手かたてづまみの大皿おほざらすしは、鐵砲てつぱう銃口すぐちそろへ、めざすてきの、山葵わさびのきいたあかいのはとくのむかし討取うちとられて、遠慮ゑんりよをした海鰻あなごあまいのがあめのやうに少々せう/\とろけて、はまぐりがはがれてる。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
古風こふうるがそでふりふもさ、こんな商賣しやうばいいやだとおもふなら遠慮ゑんりよなく打明うちあけばなしをるがい、ぼくまたまへのやうなではいつそ氣樂きらくだとかいふかんがへでいてわたことかとおもつたに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
楚々そゝとしてつものおもはしげに、たゞ一人ひとりなぎさ辿たど美女びぢよつて、遠慮ゑんりよなく色目いろめづかひをして、目迎めむか見送みおくつて、うだとれい本領ほんりやう發揮はつきしたのがはじまりである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼくれかくらしければと、おもふまヽを遠慮ゑんりよもなく可愛かあいさ、左樣さうおもふてくださるはうれしけれど、其樣そのやうのこと他人ひとふてたまはるなよ、芝居しばゐ花見はなみかぬのはわたしのきにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……「れたに遠慮ゑんりよがあるものかツてねえ、……てね、……ねえ。」とあまつたれる。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たせてきてもかりしを供待ともまちちの雜沓ざつたふ遠慮ゑんりよして時間じかんはやめに吩咐いひつけかへせしものなんとしての相違さうゐぞやよもやわすれてぬにはあらじうちにても其通そのとほ何時いつまでむかさずにはかれまじ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みのらしたのではない。案山子かゝしひとつが、みゝれて遠慮ゑんりよのないくちけた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
坊主ばうずねえか、無住むぢうだな。ひど荒果あれはてたもんぢやねえか。蜘蛛くもやつめも、殿樣とのさまはうには遠慮ゑんりよしたとえて、御家來ごけらいかほしんにふけやがつた。なあ、これ、御家來ごけらいへば此方人等こちとらだ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うで思案しあんにもあたはず、しほれかへる甚之助じんのすけ人目ひとめ遠慮ゑんりよなきをうらやみて、こヽろそらになれどつち箒木はヽき面倒めんだうさ、此身このみりしもゆゑかは、つれなき令孃ひめ振舞ふるまひ其理由そのわけぐれず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
聞人きくひとなげに遠慮ゑんりよなき高聲たかごゑふく相槌あひづちれい調子てうしに、もう一トはたらきやつてけよう、やすさんは下廻したまはりをたのみます、わたしはも一此處こゝいて、今度こんどはおくらだとて、雜巾ぞうきんがけしつ/\とはじめれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへさんは稼人かせぎにんだ、いそがしからう、此處こゝいよ。いゝえ遠慮ゑんりよをするんぢやない。はじめからさかくるまからりるつもりではひつたんだ。ともさんとれて、れでるのをすんぢやないから。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ずつとお月樣つきさまのさすはうへ、さ、蒲團ふとんれ、蒲團ふとんへ、うもたゝみきたないので大屋おほやつてはいたが職人しよくにん都合つがふがあるとふてな、遠慮ゑんりよなにらない着物きものがたまらぬかられをひて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それもたゞ五六人ごろくにん病人びやうにんつた。あとへむらさきがついてりたのである。……どぢやう沼津ぬまづつた。あめふりだし、まだ眞暗まつくらだから遠慮ゑんりよをしたが、こゝでむらさき富士驛ふじえきひたい、——そのわかをんなりた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遠慮ゑんりよをされるとくゝるほどに何事なにごとだまつて年上としうへこともの奧樣おくさますつとお羽織はをりをぬぎて、千葉ちば背後うしろより打着うちきたまふに、人肌ひとはだのぬくみ氣味きみわるく、麝香じやこうのかをり滿身まんしんおそひて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)