-
トップ
>
-
利發
父にまで
遠慮がちなれば
自づから
詞かずも
多からず、一
目に
見わたした
處では
柔和しい
温順の
娘といふばかり、
格別利發ともはげしいとも
人は
思ふまじ
達しける萬事
利發の
取廻しゆゑ
重役衆には其樣に
計ひ下役人へは
賄賂を
贈り
萬事拔目なきゆゑ上下
擧つて吉兵衞を
六
號室の
第五
番目は、
元來郵便局とやらに
勤めた
男で、
氣の
善いやうな、
少し
狡猾いやうな、
脊の
低い、
瘠せたブロンヂンの、
利發らしい
瞭然とした
愉快な
眼付、
些と
見ると
恰で
正氣のやうである。