心得こゝろえ)” の例文
わしはその前刻さつきからなんとなくこの婦人をんな畏敬ゐけいねんしやうじてぜんあくか、みち命令めいれいされるやうに心得こゝろえたから、いはるゝままに草履ざうり穿いた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もしみぎのような性質せいしつ心得こゝろえてゐると、こゝろ落着おちつき出來できるため、危急ききゆう場合ばあひ機宜きゞてきする處置しよち出來できるようにもなるものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ミハイル、アウエリヤヌヰチも猶且やはり初中終しよつちゆう、アンドレイ、エヒミチを訪問たづねてて、氣晴きばらしせることが自分じぶん義務ぎむ心得こゝろえてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
じゆく家族的かぞくてき組織そしきであるから各人かくじん共同きようどうものである、塾生じゆくせい此處こゝ自分じぶんいへ心得こゝろえ何事なにごと自分じぶん責任せきにんつてらねばなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
此所こゝならば度々たび/″\たが、大發掘だいはつくつはせずにるのだ。今日けふつてもいかとふと、大丈夫だいじやうぶだ。原田文海はらだぶんかい心得こゝろえとると大呑込おほのみこみ。
もつとも、支那人しなじん麻雀マアジヤンしたしい仲間なかま一組ひとくみたのしむといふやうに心得こゝろえてゐるらしいが、近頃ちかごろ日本にほんのやうにそれを團隊的競技だんたいてききやうぎにまですゝめて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
宗助そうすけたのんだ産婆さんば可成かなりとしつてゐるだけに、このくらゐのことは心得こゝろえてゐた。しか胎兒たいじくびからんでゐた臍帶さいたいは、ときたまあるごと一重ひとへではなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わしが見てねえでは歯骨はつこつなにわかるまい。金「ナニ知つてるよ、ちやんと心得こゝろえてるんだ、彼方あつちけ、かねえとなぐけるぞ、かねえか畜生ちくしやう。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「新吉原江戸町二丁目丁字屋半藏抱遊女ふみ事丁山 とみ事小夜衣 其方共主人へ右之通り申渡しおき候間心得こゝろえとして聞置きけおく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
水車みづぐるま川向かはむかふにあつてそのふるめかしいところ木立こだちしげみになかおほはれて案排あんばい蔦葛つたかづらまとふて具合ぐあひ少年心こどもごころにも面白おもしろ畫題ぐわだい心得こゝろえたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それもとき場合ばあひによつたもので、のべつに勝氣かちき振廻ふりまはしてもりますまい、そのうちにもをんな勝氣かちきなかへつゝんで諸事しよじ心得こゝろえたらいかもれませぬけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
カピ妻 心得こゝろえました、むすめこゝろ明日あすはやたゞしましょ。今宵こよひ悲嘆なげきとらはれて、閉籠とぢこめてのみまする。
こは心得こゝろえぬ事也とて心あたりの処こゝかしこへ人をはしらせてたづねさせけるにその在家ありかさらにしれず。
不意にせ加はつたものの中に、砲術の心得こゝろえのある梅田源左衛門うめだげんざゑもんと云ふ彦根浪人もあつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
エモンを字のごとくイモンと読んできぬけたもん心得こゝろえ小説家せうせつかがあつたさうだが、あるわか御新造ごしんぞう羽織はをり幾枚いくまいこしらへても、実家じつかもんを附けるのを隣の老婢ばあやあやしんでたづねると
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
硯友社けんいうしや沿革えんかくいては、他日たじつすこぶくはしく心得こゝろえこゝにはわづか機関雑誌きくわんざつし変遷へんせん略叙りやくじよしたので、それも一向いつかう要領えうりやうませんが、お話をる用意が無かつたのですから、這麼こんなこと御免ごめんかふむります
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彌次連やじれん其中そのなかからだい一にわたくし飛掛とびかゝつてた一にんは、獨逸ドイツ法學士はふがくしとかいふをとこ隨分ずゐぶん腕力わんりよくたくましい人間にんげんであつたが、此方こなた多少たせう柔道じうだう心得こゝろえがあるので、拂腰こしはらひ見事みごときまつてわたくしかち、つゞいてやつ
空想くうそうつくりながらこれまでにつくげたのだから、その作者さくしやちから十分じゆうぶんあつたことがわかります。このひと學者がくしやであり文學者ぶんがくしやですから、言葉ことばのあやを十分じゆうぶん心得こゝろえて、すこしのむだもしないでゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
われはおのれ生涯しやうがいのあまりきよくないこと心得こゝろえてゐる、みちかたはら菩提樹下ぼだいじゆか誘惑いうわくけたことつてゐる。たま/\われにさけませる会友くわいいうたちの、よく承知しようちしてゐるごとく、さういふもの滅多めつた咽喉のどとほらない。
殿とのよツくきこし、呵々から/\わらはせたまひ、たれぢやと心得こゝろえる。コリヤ道人だうじんなんぢ天眼鏡てんがんきやうたがはずとも、草木くさきなびかすわれなるぞよ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わがくにごと地震國ぢしんこくおいては、地震ぢしん出會であつたときの適當てきとう心得こゝろえ絶對ぜつたい必要ひつようなるにもかゝらず、從來じゆうらいかようなものがけてゐた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其外双方さうはう付添つきそひの役人共みぎの通り申わたせしにより其むね心得こゝろえよと申渡されける實にや大岡殿の裁斷さいだん明鏡めいきやうに物をうつすが如く後世こうせい才量さいりやうたゝへるもむべなるかな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
へえーこれおどろつた、左様さやうとは心得こゝろえはなは御無礼ごぶれい段々だん/″\なんともどうも、これ恐縮千萬きようしゆくせんばん……何卒どうぞれへ/\すみやかにおとほりを願ひます、何卒どうぞれへれへ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此方こちらしんからつくでもりやうにつては面白おもしろくなくえることもあらう、いさむさんだからとてとほもの道理だうり心得こゝろえた、利發りはつひとではあり隨分ずいぶん學者がくしやでもある
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
學問がくもん社會しやくわいるための方便はうべん心得こゝろえてゐたから、社會しやくわいを一退しりぞかなくつてはたつすること出來できない、學者がくしやといふ地位ちゐには、あまおほくの興味きようみつてゐなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
湯原ゆがはら温泉宿をんせんやど中西屋なかにしや女中ぢよちゆうである! いまぼくふでつてうち女中ぢよちゆうである! 田舍ゐなか百姓ひやくしやうむすめである! 小田原をだはら大都會だいとくわい心得こゝろえ田舍娘ゐなかむすめ! このむすめぼくつたのは昨年さくねんなつ
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
とちの(本字は橡なり)食方しよくはう翁にきゝしをこゝに記して凶年きやうねん心得こゝろえとす。
乳母 はい/\、心得こゝろえました。それこそかしこ御分別ごふんべつぢゃ。
此頃このごろからだがだるいとえておなまけさんになんなすつたよ、いゝえまるおろかなのではございません、なんでもちやんと心得こゝろえります。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地震ぢしん出會であつた一瞬間いつしゆんかんこゝろ落着おちつきうしなつて狼狽ろうばいもすれば、いたづらにまど一方いつぽうのみにはしるものもある。平日へいじつ心得こゝろえりないひとにこれがおほい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すれば師匠感應院の後住ごぢうにせんと村中相談一けつしたり左樣に心得こゝろえべしと申渡せば寶澤はうたくつゝしんで承はり答へけるは師匠感應院の跡目あとめ相續致し候樣と貴殿きでん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うかすると、お客さまにこしものを出されるかも知れねえ、うしたらわたくし小道具こだうぐはうとは違ひますゆゑ刀剣たうけんるゐ流違りうちがひでございますから心得こゝろえませんが
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしのやうにまはりはこと/″\心得こゝろえちがひばかりで出來上できあがつて、ひとつとして取柄とりえこまものでも、こゝろとしてをかしたつみいほどに、これ此樣このやう可愛かあいらしいうつくしい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宗助そうすけからると、主人しゆじんしよにも俳句はいくにもおほくの興味きようみつてゐた。何時いつ是程これほど知識ちしきあたまなかたくはらるゝかとおもくらゐすべてに心得こゝろえのあるをとこらしくおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
赤蟻あかありかれのモヂヤ/\したひげの中を草場くさはらかと心得こゝろえまはるといふ行體ていたらく
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さあ、これからが名代なだい天生峠あまふたうげ心得こゝろえたから、此方こツち其気そのきになつて、なにしろあついので、あへぎながら、草鞋わらぢひも締直しめなほした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
イヤ先日せんじつかんつてつたところへ、其方そのはうさからつたものだから、つまらん事をまうして気の毒に心得こゝろえ出牢しゆつらうをさした、其方そのはう入牢中じゆらうちうに一作つたから見てれ。シ
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
火山かざん噴火ふんか鳴動めいどう神業かみわざかんがへたのは日本につぽんばかりではないが、とく日本につぽんにおいてはそれがなり徹底てつていしてゐる。まづ第一だいゝちに、噴火口ふんかこうかみたまへる靈場れいじよう心得こゝろえたことである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
代助は固よりそれよりさきすゝんでも、猶素知そしらぬかほ引返ひきかへる、会話の方を心得こゝろえてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鐵拳かなこぶし撲倒はりたふ勇氣ゆうきはあれどまこと父母ちゝはゝいかなるせて何時いつ精進日しやうじんびとも心得こゝろえなきの、心細こゝろぼそことおもふては干場ほしばかさのかげにかくれて大地だいぢまくら仰向あふむしてはこぼるゝなみだ呑込のみこみぬるかなしさ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
心得こゝろえことで……はさんではてるへびの、おなじ場所ばしよに、おなじかまくびをもたげるのも、あへて、咒詛じゆそ怨靈をんりやう執念しふねんのためばかりではないことを。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これしからん、無礼至極ぶれいしごくやつだ、なん心得こゝろえる、これほどの名作めいさくの詩を、詩になつてらんとは案外あんぐわいうも失敬しつけいな事をまうやつだ、其分そのぶんには捨置すておかん、入牢じゆらう申附まうしつける。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
身分みぶんたかからずともまことある良人おつと情心なさけごゝろうれしく、六でう、四でういへを、金殿きんでんとも玉樓ぎよくろうとも心得こゝろえて、いつぞや四てう藥師樣やくしさまにてふてもらひし洋銀ようぎん指輪ゆびわ大事だいじらしう白魚しらをのやうな、ゆびにはめ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幾度いくたび越前街道ゑちぜんかいだう往來ゆききれて、ちんさへあれば、くるまはひとりで驅出かけだすものと心得こゝろえたからである。しかし、上下じやうげには、また隨分ずゐぶん難儀なんぎもした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ヘヽー成程なるほど何日いつに、うもおそりましたことで、しかわたくし一人で拝見はいけんいたしますのもをしいやうで、彼所あれ詰合つめあつ者共ものどもにも一おう見せてやりたく心得こゝろえますが……。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんとせんさて人妻ひとづまとなりての心得こゝろえむすめときとはことなるものとか御氣おきらばけれどかれなばかなしきことまづそれよりも覺束おぼつかなきはふみ御返事おへんじなり御覽ごらんにはなりたりともそのまゝおしまろめたまひしやらかへりて御機嫌ごきげん
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
北八きたはち心得こゝろえたるかほはすれども、さすがにどぎまぎしてはむとほつするところらず、おかみさんかへりにするよ。唯々はい/\。お邪魔じやまでしたとにいさんはうまいものなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
エー若春わかはるの事で、かへつて可笑をかしみの落話おとしばなしはういと心得こゝろえまして一せきうかゞひますが、わたくしは誠に開化かいくわの事にうとく、旧弊きゆうへいの事ばかりつてりますと、学校がつかう教員けうゐんさんがおでで
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
えうするに——くるまちるものと心得こゝろえるのである。しかして、惡道路みちわると、さか上下じやうげは、かならりて歩行あること——
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えへゝゝ御冗談ごじようだんばかり、おからかひは恐入おそれいります、えゝ始めまして……(丁寧ていねい辞儀じぎをして)手前てまへ当家たうけ主人あるじ五左衛門ござゑもんまういたつて武骨ぶこつもので、何卒どうか拝顔はいがんたく心得こゝろえりましたが
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)