其上そのうへ)” の例文
さうときにはかれきふおもしたやうまちる。其上そのうへふところ多少たせう餘裕よゆうでもあると、これひと豪遊がういうでもして見樣みやうかとかんがへることもある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
アンドレイ、エヒミチはせつなる同情どうじやうことばと、其上そのうへなみだをさへほゝらしてゐる郵便局長いうびんきよくちやうかほとをて、ひど感動かんどうしてしづかくちひらいた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
置捨に致たるに相違有まじ其上そのうへしまの親住吉町吉兵衞よりの歎願書たんぐわんしよも是ありそれも序に讀聞せよと云るゝに又々目安方めやすかたの者右の書付かきつけ讀上よみあげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
月光げつくわうそのなめらかなる葉のおもに落ちて、葉はながら碧玉へきぎよくあふぎれるが、其上そのうへにまた黒き斑点はんてんありてちら/\おどれり。李樹すもゝの影のうつれるなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
下部かぶ貝塚かひづかが、普通ふつうので、其上そのうへ彌生式やよひしき貝塚かひづかかさなつてるとか、たしかそんなことであつた。いま雜誌ざつし手元てもといのでくはしくはしるされぬ。
独逸どいつ名高なだかい作者レツシングとふ人は、いたつて粗忽そそつかしいかたで、其上そのうへ法外ばかに忘れツぽいから、無闇むやみ金子かねなにかゞくなる
たゞ此斥候このせつこう報告書ほうこくしよともづくべきものは、たん地震波ぢしんぱ種々しゆ/″\形式けいしきのみであるから、これを書取かきと其上そのうへにそれをることを必要ひつようとする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其上そのうへ仕事しごとをさするにあらず、日夜にちやまゝにあそばせて、食物しよくもつ望次第のぞみしだいうみのもの、やまのもの、ふにまかせてあたへむに、かなし理由いはれきはずなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うちはういく面白おもしろかつたかれないわ』とつぶやいて、最早もうこれでおほきくもならなければちひさくもなれず、其上そのうへねずみうさぎ使つかはれるんなら。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
と。(一五)なにもつしようせられたる。(一六)太史公たいしこういはく、箕山きざんのぼりしに、其上そのうへけだ許由きよいうつかりとふ。
其上そのうへものになりさうだツたら何卒どうか怠惰屋なまけや弟子でしといふことにねがひたいものです。さうなるとわたしはうでも出來できるだけのおれいは致します積りで……
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
根太ねだたヽみ大方おほかたち落ちて、其上そのうへねずみの毛をむしちらしたやうほこりと、かうじの様なかびとが積つて居る。落ち残つた根太ねだ横木よこぎを一つまたいだ時、無気味ぶきみきのこやうなものを踏んだ。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
目下弁護事務にてすこぶる有望の事件を担当し居り、この事件にして成就じやうじゆせば、数万すまん報酬はうしうを得んこと容易なれば、其上そのうへにてすべて花々しく処断すべし、何卒なにとぞ暫しの苦悶を忍びて
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
月滿御前つきまろごぜんまをすべし。其上そのうへ、此國のぬし八幡大菩薩は卯月うづきにうまれさせたまふ。娑婆世界さばせかいの教主釋尊しやくそんも、又卯月八日に御誕生なりき。いま童女どうによ、又月は替れども、八日にうまれ給ふ。
其上そのうへわたくし懇意こんい船乘せんどうさんにいてますと、今度こんど航海かうかいには、弦月丸げんげつまる澤山たくさん黄金わうごん眞珠しんじゆとが積入つみいれてありますさうな、黄金わうごん眞珠しんじゆとがなみあら海上かいじやうあつまると、屹度きつとおそろしいたゝりいたします。
もとより奧樣おくさま派手はでつくりに田舍いなかものゝ姉者人あねじやひとがいさゝかたるよしはけれど、中學校ちうがくかう試驗しけんまへ夜明よあかしをつゞけしころこのやうなことふて、このやうな處作しよさをして、其上そのうへには蕎麥掻そばがきの御馳走ごちそう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ざうする菊塢きくうの手紙には、うめ一枝いつしゑがきて其上そのうへそのの春をおわかまをすといふ意味の句あり、また曲亭馬琴きよくていばきんめいしつしてのち、欝憂うさを忘るゝためにおのれと記臆きをくせし雑俳ざつぱいかきつらねて、友におくりしうち
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
それが昨年さくねんの六ぐわつ三十にちに四十三ドルの三、すなはち一わりさがつたのは何故なぜであるか。累年るゐねん輸入超過ゆにふてうくわいちじるしく、對外貿易たいぐわいぼうえき改善かいぜんされない、其上そのうへ昨年さくねん上半期かみはんき輸入超過ゆにふてうくわは二おく八千萬圓まんゑんになつてる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
ベンヺ だまってゐたら、其上そのうへに、なに爲出しいださうもれぬわい。
なにしろ小六ころくうちるとめるよりほかみちはあるまいよ。あと其上そのうへことだ。いまぢや學校がくかうへはてゐるんだね」と宗助そうすけつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あかりあかるき無料むれう官宅くわんたくに、奴婢ぬひをさへ使つかつてんで、其上そのうへ仕事しごと自分じぶんおもまゝてもないでもんでゐると位置ゐち
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あいちやんは洋卓テーブル周圍しうゐのこらず見廻みまはしましたが、其上そのうへにはちやほかなにもありませんでした。『さけくッてよ』とあいちやんが注意ちういしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なにはしかれくるまうづまりますまで、るとしませう。其上そのうへは、三にんがかり五にんがかり、三井寺みゐでらかねをかつぐちからづくでは、とても一寸いつすんうごきはしませぬ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其上そのうへ氣象上きしようじようおほきな異變いへんについてはたん豫報よほうばかりで解決かいけつされないこと、昭和二年しようわにねん九月十三日くがつじゆうさんにち西九州にしきゆうしゆうける風水害ふうすいがい慘状さんじようてもあきらかであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
立て下りけりあとには彼の十歳ばかりなる三吉小僧のみ彌々いよ/\一人殘され其上そのうへはやくれて白洲へはあかりがつき四邊あたり森々しん/\としてなにとやら物凄ものすごく成しかば三吉は聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其上そのうへ近年は世の中の物騒ぶつさうなのにれて和上の事を色々いろ/\に言ふ者がある。最も在所の人の心を寒からしめた馬鹿々しい噂は、和上は勤王々々と云つて諸国の浪士に交際つきあつてる。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
うもわたくしはらつて歩かれませぬ、其上そのうへ塩梅あんばいわるうございまして。とふから仕方しかたなしに握飯むすび二個ふたつぜにの百か二百ると当人たうにんは喜んで其場そのば立退たちのくといふ。これ商売しやうばいになつてました。
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかいま塲合ばあひなにはずに辛抱しんばうしてつたが、印度洋インドやう炎熱えんねつが、始終しじう其上そのうへやうてらしてるのだからたまらない、その晝食ちうしよくとき一口ひとくちくちにした無邪氣むじやき少年せうねんは、たちまそのにく海上かいじやうして
玄子げんしとははやしりて、えだきたり、それをはしらとして畑中はたなかて、日避ひよけ布片きれ天幕てんとごとり、まめくきたばにしてあるのをきたつて、き、其上そのうへ布呂敷ふろしきシオルなどいて
この一令孃ひめありとこヽろくすものなく、るは甚之助殿じんのすけどのばかりなる不憫いぢらしさよ、いざや此心このこヽろふではして、時機あはよくは何處いづこへなりとも暫時しばしともなひ、其上そのうへにてのさくまた如何樣いかやうにもあるべく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うちでは御米およね宗助そうすけせるはる羽織はおりやうやげて、おしかはりに坐蒲團ざぶとんしたれて、自分じぶん其上そのうへすわつてゐるところであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ほかものらはさいはひにれを坐布團ざぶとんにして其上そのうへ彼等かれらひぢせ、其頭そのあたまえてむかあはせになつてはなしてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
品物しなものわびしいが、なか/\の御手料理おてれうりえてはるし冥加みやうが至極しごくなお給仕きふじぼんひざかまへて其上そのうへひぢをついて、ほゝさゝえながら、うれしさうにたわ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其上そのうへはらつとぐに、野郎やらう大馬鹿おほばか惡體あくたいはじまるので、是等これら大地主おほぢぬしくせであるが、あま感心かんしんしたふうではい、とドクトルもおもふたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其方儀主人しゆじん庄三郎養子又七つま熊と密通致し其上そのうへとほ油町あぶらちやう伊勢屋三郎兵衞方にて夜盜やたう相働あひはたらき金五百兩ぬすみ取り候段重々ぢゆう/\不屆ふとゞきつき町中まちぢう引廻ひきまはしの上淺草あさくさに於て獄門ごくもん申付くる
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうしてふかうみそこはこのしつそう直接ちよくせつ其表面そのひようめんまでたつしてゐるか、あるひ表面近ひようめんちかすゝんでてゐて、其上そのうへ陸界りくかい性質せいしつのものでうすおほふてゐるくらゐにすぎぬと、かうかんがへられてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
好事魔こうじまおほしとはよくひとところで、わたくしその理屈りくつらぬではないが、人間にんげん一生いつせう此樣こん旅行りよかうは、二度にど三度さんどもあることでない、其上そのうへ大佐たいさ約束やくそく五日目いつかめまでは、三日みつかひまがある、そこで
なれどもおいやならばおいやにて、むしろ斷然さつぱり目通めどほりもいややなれば此處こヽねかし、とでも發言ありて、いよ/\るまじきことらば其上そのうへ覺悟かくごもあり、くまでのおもなんとしてもゆるはずなけれど
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此器械このきかいだいにして其上そのうへまた一工夫ひとくふういたした人がある
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其上そのうへやまか、をんなにほひか、ほんのりとかほりがする、わし背後うしろでつくいきぢやらうとおもつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其上そのうへ平岡の留守へ行きてゝ、今日こんにち迄の事情を、特に経済の点に関して丈でも、充分聞き出すのは困難である。平岡がうちにゐる以上は、詳しいはなしの出来ないのは知れ切つてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其上そのうへめづらかなるくまの皮を頂戴ちやうだいしましたよ、敷皮しきがはを。
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さて其上そのうへに下着を着て胴着を着て合着を着て一番上が謂はずとも知れ切つて居る上着なり。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其上そのうへちゝに対して何時いつにない同情があつた。其かほ、其こえ、其代助を動かさうとする努力、凡てに老後の憐れを認める事が出来た。代助はこれをも、父の策略とは受取り得なかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よい/\の、いぬの、ばゞの、金時計きんどけいの、淺葱あさぎふんどしの、其上そのうへに、子抱こかゝへ亭主ていしゆには、こりや何時いつまでもせられたら、くらまうもれぬぞと、あたふた百花園ひやくくわゑんげてる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
始めはそれを左程にも思はなかつたが、近頃では不愉快と云ふよりも寧ろ、行きにくい度が日毎に強くなつてた。其上そのうへ留守の訪問がかさなれば、下女に不審を起させる恐れがあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はじめのうちは一まはりふとつたやうにおもはれてかゆさがたまらなかつたが、しまひにはげつそりせたと、かんじられてづきづきいたんでならぬ、其上そのうへ用捨ようしやなく歩行あるうちにも入交いりまじりにおそひをつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
美禰子はこたへなかつた。あめなかれながら、博物館まへひろい原のなかに立つた。幸ひ雨は今した許である。其上そのうへ烈しくはない。女は雨のなかに立つて、見廻みまはしながら、向ふのもりした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これは界隈かいわい貧民ひんみんで、つい茗荷谷みやうがだにうへる、補育院ほいくゐんとなへて月謝げつしやらず、ときとすると、讀本とくほんすみるゐほどこして、其上そのうへ通學つうがくするの、ぐらしの親達おやたち父親ちゝおやなり、母親はゝおやなり
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
秋晴と云つて、此頃は東京のそら田舎いなかの様に深く見える。かう云ふそらしたきてゐると思ふ丈でもあたま明確はつきりする。其上そのうへ野へれば申し分はない。気がび/\してたましい大空おほそら程のおほきさになる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)