“そう”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ソウ
語句割合
22.6%
17.3%
左様7.5%
5.3%
5.0%
4.3%
3.8%
3.8%
2.7%
左右2.6%
2.2%
1.8%
1.3%
1.2%
1.1%
0.9%
0.9%
0.9%
0.9%
0.7%
0.6%
0.6%
0.6%
0.6%
0.5%
0.5%
0.5%
0.5%
然様0.4%
0.4%
0.4%
其様0.4%
0.4%
0.4%
0.4%
0.4%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.1%
0.1%
0.1%
左樣0.1%
0.1%
0.1%
二艘0.1%
0.1%
0.1%
其樣0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
皆は三そうの舟にのっていた。三艘ともたがいに追い抜こうとして間近につづいていた。人々は舟から舟へ、快活な冗談を言い合った。
「深山君の勉強には敬服するが、少し身体からだを粗末にし過ぎるよ、君のように頭ばかり発達すると、人類が生理的に滅亡するそうだぜ」
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
外したのは確に失敗でございますね……だって左様そうじゃありませんか、恋仇同士をたった二人、室に残してお置きになったら、議論を
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
床には、彼の風雅癖を思わせて、明人みんびと仇英きゅうえいの、豊麗ほうれい孔雀くじゃくの、極彩色ごくさいしき大幅が掛けられ、わざと花を生けない花瓶は、そう代の磁だった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
このはなし但馬守たじまのかみが、與力よりきからいて、一そう玄竹げんちくきになつたのであつた。それからもうひとつ、玄竹げんちく但馬守たじまのかみよろこばせた逸話いつわがある。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
目安箱の上書がこうそうして、かえでの密議となり、元京都所司代であった松平輝高てるたかは、召されて将軍家から内々に秘命をうけた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宋人そうひと彭乗はうじやうさく墨客揮犀ぼくかくきさい鄂州がくしうそう无夢むむしかばね不埋うづめず爪髪つめかみのびたる義存ぎぞんに同じかりしが、婦人の手になでられしより爪髪のびざりしとぞ。
畑の次手ついでに、目の覚めるような真紅まっかたでの花と、かやつりそうと、豆粒ほどな青い桔梗ききょうとを摘んで帰って、硝子杯コップを借りて卓子台ちゃぶだいに活けた。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうさんは髪の毛の薄いためにどこへもえんづかない覚悟をしてゐた。が、髪の毛の薄いことはそれ自身お宗さんには愉快ではなかつた。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
故に、万一主人摂津守が釈然しゃくぜんと解けて、左右そうなく降伏に出られた場合は、どうかご助命の儀だけは伏しておねがい申しておく
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と思うと身をかがめて、そうまなこをやり過ごした闇へ——蝋色ろいろさやは肩より高く後ろへらしてススススと追いすがったが音もさせない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目をとじて、彼は心の隅々までを、そうざらいしていた。すると、忽然こつぜん彼自身かれじしんにすら驚かれるような本心が、大きく彼の意識にのぼった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私の家に関する私の記憶は、そうじてこういう風にひなびている。そうしてどこかに薄ら寒いあわれな影を宿している。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夫人、御安心なさい、あなたにお目にかゝった程の者は、誰かあなたの真面目なそうして勇敢な霊魂たましいを尊敬せぬ者がありましょう乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大きい方は二行に並んですわった八人の楽女が横笛、立笛、そうしょう銅鈸どうばつ琵琶びわなどをもって、二人の踊り女の舞踊に伴奏する。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
耳の穴から石菖せきしょうのような根づよい黒毛がそうをなして突出している。いささか国事の難を託するに足る人かとおもった。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
され共東天やうやく白く夜光全くり、清冷の水は俗界のちりを去り黛緑たいりよくの山はえみふくんて迎ふるを見れば、勇気いうき勃然ぼつぜん為めに過去の辛苦しんくを一そうせしむ。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「私はしん閔王びんおうむすめでございましたが、このそうの国に迎えられてきて、二十三年間、独りでおる者でございます」
黄金の枕 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そうじてうちつゝむはほかほまれ、金玉きんぎょく物語ものがたりきん鈎子はさみがねかすれば、にも立派りっぱ寶物たからもの
さもあらばあれ、われこの翁をおもう時は遠き笛のききて故郷ふるさと恋うる旅人のこころ、動きつ、またはそう高き詩の一節読みわりて限りなき大空をあおぐがごとき心地す
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そうじゃねえよ、いろ/\深いわけがあって身を投げようとする処を助けたんだ、妙じゃアねえか、両人ふたりを助けて船へ乗せると、互に顔を見合わせて、オヤ万年町のお嬢さんか
其のころ雀部ささべそう次といふ人、足利あしかが染の絹を交易するために、年々京よりくだりけるが、此のさと氏族やからのありけるをしばしば来訪きとぶらひしかば、かねてより親しかりけるままに
そして、咲耶子を道のきるところまでいこんで、ここぞと、気合きあいをあわせて、二そうしょに彼女の胸板むないたいていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分はまだ一個のそう、家も二十軒あったのが、娘が来て一日二日、ついほだされて逗留とうりゅうした五日目から大雨が降出ふりだした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほかでも無い、あの流星と云うものは何んだか気味の悪いもので、それが落ちたとおぼしき場所へは、余程の勇士でも其夜そのよぐに行くのはいやがると云う、そうして昔からの口碑いいつたえにも
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
またもやしずかにあいたので、監禁をゆるされた二人はそうそうに階段のあがり場へ逃げ出した。
「そうだ。俺にはまだ左腕もあれば両脚もあるし、硬い歯の生えている口もあれば、太いくびもあるというんだ。その意気はそうとするが、こればかりはねえ」
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
唐の黄巣こうそうが乱をし金陵を攻めんとした時、弁士往き向うて王の名はそう、それが金に入ると鏁となるとおどしたのですなわち引き去った(『焦氏筆乗』続八)とあると同日の談だ。
「どうぞ、然様そういう訳でございますれば、……の御帰りになりまする前までに、こなた様の御力を以て其品を御取返し下さいまするよう。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それがためには、潜水服に似たものを着、そして潜水かぶとに似たものを頭に被り、空気そうを背負わなければならなかった。それだけではない。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
結婚式を十二そうで(新宿の先の)やったのですって。東京での、よ。そのとき私をぼうとしてすっかり仕度していて、お久さんの発議でやめたのですって。来て貰うのも気の毒と。
「いいのよ、其様そうしてお置きなさいよ、源ちゃん最早もうお寝み、」と客の少女は床なる九歳ここのつばかりの少年を見て座わり乍ら言って、其のにこやかな顔に笑味を湛えた。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
縁を切っても片時も忘れるひまは有りません故、或日用達ようたしに参って帰りがけ、旧来居ります與助よすけと云う奉公人を連れて、そうっと忍んで参り、お累のうちの軒下に立って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お春は静かに次のへと退ったがしばしして、秋の空を思えとや、紫紺に金糸銀糸きんしぎんしもて七そうを縫った舞衣まいぎぬを投げかけ金扇きんせんかざして現われました。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
小僧こぞう、来い。いまおれのとこのちょうざめの家に下男げなんがなくてこまっているとこだ。ごちそうしてやるから来い。」ったかと思うとタネリはもうしっかり犬神いぬがみ両足りょうあしをつかまれてちょぼんと立ち
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そうの僚船がいて来る。一杯に帆が張られてある。船首へさきに突っ切られる波の穂が、白衣の行者でもはしるように、灰色の海上で踊っている。陸は見えない、どっちも水だ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
原病そうは不明だが、最後は肝臓に転移して肝臓癌で死んだ。祖父も父の兄弟もみな癌で死んだ。父は癌は遺伝しない。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「——さればこそ、わが家においても、さきには金剛山の寄手にも加わり、一そう、二倉とあるかぎりな蓄備ちくびの稲も税物ぜいもつにささげ、また去年もぜに一万貫、この一月にも五千貫と、仰せつけのまま課税はずいぶんさし出しておる」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
辺鄙へんぴにはなお残れるにや、江戸にはこの流名きこゆることなし……とあるとおりに、月輪軍之助の祖月輪将監しょうげんは、根岸兎角ひらくところの微塵流から出てのちに、北陬ほくすうにうつり住んで別に自流をそう
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
じゅめぐること三そう
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、天はそうくだされました」その一つがいとも悲しそうにいった。
不周山 (新字新仮名) / 魯迅(著)
然し恵心は如何にも謙虚の徳と自信のそうとの相対的にあった人で、加之しかも毫毛ごうまつの末までも物事を曖昧あいまいにして置くことの嫌いなような性格だったと概解しても差支無いかと考えられる。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
秋にそうゆかばや末は小松川こまつがわ 芭蕉翁
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その車もよく空いてゐたので眞中所の窓際まどぎはせきこしおろし、そう外にはなつた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
……『古今註こきんちゅう』に、『鶴は千歳せんざいにしてそうとなり、二千歳にしてこくすなわ玄鶴げんかくなり。白鶴はっかくもまた同じ。死期を知れば、深山幽谷しんざんゆうこくにかくれてみずから死す』
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
三吾太祖の意を知るや、何ぞげん無からん、すなわいわく、し燕王を立てたまわば秦王しんおう晋王しんおうを何の地に置き給わんと。秦王そう、晋王こうは、皆燕王の兄たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
の太祖の言は、まさに是れ太祖が胸中の秘を発せるにて、はやくよりこの意ありたればこそ、それより二年ほどにして、洪武三年に、そうこうていしゅくていしんたんの九子を封じて
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、下には孫立が、一そうを構えて待ちうけていたから、朝奉はいよいよ逃げ戸惑い、ついに女曲輪おんなぐるわの境まで走ッてそこの深い石井戸へ身を投げてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青粘土あおねんどみたいに沈んでいるが、まなこは鯉の金瞳きんどうのごとく、黒漆こくしつのアゴひげをそよがせ、身のたけすぐれ、よく強弓をひき、つねに持つ緋房ひぶさかざりの一そうも伊達ではないと、城内はおろか
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がいむらさきしやべて四十里しじふり歩障ほしやうつくれば、そうにしきへてこれ五十里ごじふりる。武帝ぶていしうとちからへて、まけるなとて、珊瑚樹さんごじゆたか二尺にしやくなるをたまふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつ河陽かやう金谷きんこく別莊べつさういとなむや、花果くわくわ草樹さうじゆ異類いるゐ禽獸きんじうひとつとしてあらざるものなし。とき武帝ぶていしうと王鎧わうがいへるものあり。驕奢けうしや石崇せきそう相競あひきそふ。がいあめもつかまれば、そうらふもつたきゞとす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼく鼻緒はなをつて仕舞しまつてようかとおもつてる、本當ほんとうよわつてるのだ、と信如しんによ意久地いくぢなきことへば、左樣そうだらうおまへ鼻緒はなをたちッこはい、いやれの下駄げたはいゆきねへ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
智惠無ちゑなしのやつ大鍋おほなべ四邊ぐるりれッくらい無駄むだがついてるではいか、れへまわして砂糖さとうさへあまくすれば十にんまへや二十にんいてよう、何處どこでもみん左樣そうするのだおまへとこばかりではない
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その後、生え出でたる爪は一種奇怪なる形を有し、その両側にかたつむりの角のごとき二そうを見るに至った。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
足跡には三そうの跡をとどめ、音声はのこぎりを引くがごとき響きであると申しておる。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
退けばすなわ緇衣しい香烟茶味こうえんちゃみ、淡然として生を終り、栄国公えいこくこうおくられ、そうを賜わり、天子をしてずから神道碑しんどうひを製するに至らしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
子の父のそうはしるは、おのずかられ情なり、是れ理なり、礼にあらず道にあらずとさんや。諸王をして葬に会せざらしむるみことのりは、果して是れ太祖の言にづるか。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
渡舟は、一、二艘そうしかない。順々に人が山のように盛られて対岸へ運ばれた。鹿之介と苦労を共にして来た三十余名の郎党のなかに、彼の妻や幼い子も、埋もれるように船の中に乗せられていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つるそうらへ/\」と、各地に呼び売りする行商人となっておりましたから、その呼び声を取ってツルメソと言われたのです。
一商家(米家五兵衛)に休。日午なり。駅中に石を刻して蛭子神ひるこのかみを造りて街頭に立つるあり。(宰府辺にいたるまで往々有り。)駅を離れて六本松の捷径を取り小礫川せうれきせんそうて行く。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
エ、何、其樣そうでもありませんが。——一人困つた奴が居ましてな。よく強淫をやりアがるんです。成る可く身分の好い人のかみさんだの娘だのをいくんです。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
半分は給仕に向っての様に「何うも此の節は婦人服の裳の広いのが流行る為に時々粗そうが有りまして」
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
老格熟達の風を尊ぶ古人たちの間では、四十歳をこえるともう自らそうといったり翁と自称したりしている例はたくさんにある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人民はただ政府のそうするところに向かいて奔走するのみ。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ぼくは今もそう者にしていさぎよくたゝか關根せきね名人の磊落性らいらくせいむし愛敬あいけいし、一方自しつつ出でざるさか田三吉八だんに或る憐憫れんみんさへかんじてゐる者だが、將棋せうきだけはわかい者にはてないものらしい。
けいそう阿甥あせい阿姪あてつ、書生など三階総出の舞台の中央にすつくと突立つゝたつ木強漢(むくつけをとこ)。其れ韈(くつした)をお穿きなさい。韈は穿きぬ。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
先の頃始終指なんかをはらしてた頃はそうまででなかったけれど今日は大変こわかった。
そうすれば琴韻清越きんいんせいえつ、多年干戈剣戟かんかけんげきうちにも、なお粗朴なる洗心と雅懐がかいを心がけていた丞相その人の面影をしのぶに足るといわれている。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがマタ・アリを大々的に利用したのだ。娼婦しょうふ型の美女が、微笑するスパイとして国境から国境を動きまわる。戦時である。歴史的なそう話にまでなってしまった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
戦国の頃『荘子』が〈いまだかつて牧を為さずしてそう奥に生ず〉といえるを『釈文』に西南隅未地といえれば羊を未に配当したは後漢に始まったでないといい
そこで次男のそうを立てようとしたが、長子を廃するのは国乱の始めなりと、俄然、紛論が起って、沙汰止みとされ、やむなく礼にしたがって、次男を除こうとしたところ、蔡夫人
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼一たび死す、水戸老公はあたかも放たれたる虎の如し、その幕閣よりとおざかるに比例して朝廷と密着し、一孔生じて千そう出で、遂に容易ならざる禍機を惹起せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
呉の大才魯粛ろしゅくを凡人の中から抜いたのは、そのそうです。呂蒙りょもうを士卒から抜擢ばってきしたのはその明です。于禁うきんをとらえて殺さず、その仁です。荊州を取るに一兵も損ぜなかったのは、その智です。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すっと抜くと、てのひらに捧げて出て、そのまま、欞子窓れんじまどの障子を開けた。開ける、と中庭一面の池で、また思懸けず、船が一そう、隅田に浮いた鯨のごとく、池の中を切劃しきって浮く。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうの外は見渡す限り、茫々とした月夜つきよの水ばかりだ。その時の寂しさは話した所が、天下にわかるものは一人もあるまい。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それからまた、我々われ/\の住むでゐる、社會には、何故人間をこさへる學校と人間を押籠おしこめて置く監獄とが存在してゐるのであろう。また何が故に別そうつてゐる人と養育院やういくゐんに入る人と。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
魚鳥に七箇日の忌のそうろうなる事。さもや候らん。えみ及ばず候。地体はいきとしいけるものは。過去の父母にて候なれば。くうべき事にては候わず。又臨終には。酒魚鳥そうかいひるなどは。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一昨日おととい別段気にもとめなかった、小さなその門は、赤いいろのそう類と、暗緑のつがとでかざられて、すっかり立派に変っていました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
看板通りの異国情調に富んだ舞台面で、出て来る人物も、皆西洋人臭いふんそうをしていた。僕は思った、「これは素敵だ、流石さすがにRはいいものを見せてれた」
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
第二種(疾病編)疫、痘、ぎゃく、卒中、失神、癲癇てんかん、諸狂(そう性狂、うつ性狂、妄想狂、時発狂、ヒステリー狂等)、髪切り病、恙虫つつがむし
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
むちして広苑ひろにわの芝生をはしらすこと三そう、柳を百歩へだたって駒足をひたと停め、心ゆくばかり弦をひきしぼってちょうッと放った。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名香めいこうこく、宝剣一そう、婦女三十人、その婦女はみな絶世の美女で、久しいものは十年もとどまっている。容色おとろえた者はどこへか連れて行かれて、どうなってしまうか判らない。
此のまゝそうッと寝かして下さい。一昨日から何処の座敷に行っても、私身体の塩梅あんばいが悪いからッて、皆な、そう言って断っているの……明日の朝ねえ……はあッ神経衰弱になって了う。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
布衣ほいの妻が、良人の身代りに、邪恋の男のやいばで死んだ——というだけなら、市井しせいの一些事さじ。何も院をあげて、そうめくにもおよばないが……問題は、武者所にある。武者所のみだれに