そう)” の例文
どうも、そうさんもあんまり近頃ちかごろ御出おいででないし、わたし御無沙汰ごぶさたばかりしてゐるのでね、つい御前おまへこと御話おはなしをするわけにもかなかつたんだよ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そうさんは髪の毛の薄いためにどこへもえんづかない覚悟をしてゐた。が、髪の毛の薄いことはそれ自身お宗さんには愉快ではなかつた。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ひとへに生涯のそうと願ふべきである我が狸洲先生(かれは狸洲と號した)に、ずゐぶん御無禮だつたことがやがて後悔として殘るやうな氣がした。
足相撲 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「一体これはそうさんの時計です。近頃私が宗さんから貰ったんです。多分正太さんも宗さんから借りて来たんでしょう」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一に私意を以て邪詖じゃひことばを出して、枉抑おうよくはなはだ過ぎたり、世の人も心また多く平らかならず、いわんやその学をそうする者をやと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
当代とうだい人気役者にんきやくしゃそうろうていると、太鼓持たいこもちだれかに一いわれたのが、無上むじょう機嫌きげんをよくしたものか、のほほんとおさまった色男振いろおとこぶりは、ほどものをして
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
私はこれを子供のように思い、つ住居の家も近処きんじょで朝夕往来して交際は前年の通り、そうさん/\といって親しくして居ましたが、元来がんらいこの太郎の母は神官の家の妹で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
龔廷賢きょうていけんそうとする治法を施したのである。曼公、名はりつ杭州こうしゅう仁和県じんわけんの人で、曼公とはそのあざなである。みん万暦ばんれき二十四年のうまれであるから、長崎に来た時は五十八歳であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
江州に一畸人きじんがいます。自分とは古い知りあいで、苗字みょうじたい、名をそうといい、長くその地で牢節級ろうせっきゅう(牢人の役長)をつとめておるところから、通称、たい院長とよばれておる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
るかツて、えらいのがます、故人こじん高島屋たかしまや彦三郎しんすゐます、はんらうや、仲蔵なかざうなどもて、それに今度こんど訥升とつしやうそうらう這入はいつて大層たいそう芝居しばゐります。岩「成程なるほど此方こつちはうい。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
老子らうし隱君子いんくんしなり。老子らうしそうそうしやうり、段干だんかんほうぜらる。そうちうちうきうきう玄孫げんそんかん孝文帝かうぶんていつかふ。しかうしてかい膠西王卬かうせいわうかう(一六)太傅たいふる。
前の担任のそう先生には事情を申し上げておきましたが、新しく誠一を受け持ってくださる先生にも改めて私の父としての考えを聞いていただき、それについて先生のご意見を伺いたいと思いまして
ロザリオの鎖 (新字新仮名) / 永井隆(著)
そう先生ですか」
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おやそうさん、少時しばらく御目おめゝらないうちに、大變たいへん御老おふけなすつたこと」といふ一句いつくであつた。御米およね其折そのをりはじめて叔父をぢ夫婦ふうふ紹介せうかいされた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかして寛厚はそうかざるも、其の惻隠そくいんの意に至っては、各条に散見せりと評せしめ、余威は遠く我邦わがくにに及び、徳川期の識者をしてこれを研究せしめ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
翁はご承知のとおり画事の上では、大癡をそうとしていた人です。ですから大癡の画という画はいやしくも人間じんかんにある限り、看尽みつくしたと言ってもかまいません。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ソコで私は今度中津にかえっても宗太郎をば乳臭にゅうしゅうの小児と思い、相替らずそうさん/\で待遇して居た処が、何ぞはからん、この宗さんが胸に一物、恐ろしい事をたくらんで居て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もと越後新潟の人で、抽斎と伊沢蘭軒との世話で、そう対馬守つしまのかみ義質よしかたの臣塩田氏の女壻じょせいとなった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
薬研堀やげんぼり不動様ふどうさまへ、心願しんがんがあってのかえりがけ、くろじょうえりのかかったお納戸茶なんどちゃ半合羽はんがっぱ奴蛇やっこじゃそうろうごのみにして、中小僧ちゅうこぞう市松いちまつともにつれた、紙問屋かみどんや橘屋たちばなや若旦那わかだんな徳太郎とくたろう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
季唐はもとより徽宗きそう以来の大家たいかではあり、晩年にも長巻や大作を描いて、いよいよ北宋画のそうたる巨腕を示したが、その門から出た蕭照も、年もうて名声を博し、その作品は、李唐以上に
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
... しんもつきみす、じんけんや』と。(三〇)左右さいう(三一)これへいせんとほつす。(三二)太公たいこういはく、『義人ぎじんなり』と。たすけてらしむ。武王ぶわうすでいんらんたひらげ、天下てんかしう(三三)そうとす。
そうさんおこつちや不可いけませんよ。たゞ叔父をぢさんのつたとほりをはなすんだから」と叔母をばことわつた。宗助そうすけだまつてあとをいてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
慶滋保胤かものやすたね賀茂忠行かものただゆきの第二子として生れた。兄の保憲やすのりは累代の家の業をいで、陰陽博士おんようはかせ天文てんもん博士となり、賀茂うじそうとして、其系図に輝いている。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
T先生の話によれば、僕等を教へた先生たちは大抵たいてい本所ほんじよにゐないらしい。僕は比留間ひるま先生に張り倒されたことを覚えてゐる。それからそう先生に後頭部を突かれたことを覚えてゐる。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
苾堂は詩を以て梁川星巖やながはせいがん柏木如亭かしはぎじよてい及五山と交つた。書は子昂すがうそうとし江戸の佐野東洲の教を受けたらしい。又をも學んで、崋山くわざん門下の福田半香、その他勾田臺嶺まがたたいれい高久隆古たかひさりゆうこ等と交つた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「ここに連れているのは弟分の楊林ようりん。そして拙者は……苗字みょうじたい、名はそう
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
るにして、(一一一)そうたひらげられてせしもの七十餘家よか
「おやそうさん、しばらく御目にからないうちに、大変御老おふけなすった事」という一句であった。御米はそのおり始めて叔父夫婦に紹介された。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
揚州の守将王礼おうれいと弟そうと、監察御史かんさつぎょし王彬おうひんを縛して門を開いてくだる。高郵こうゆう通泰つうたい儀真ぎしんの諸城、また皆降り、北軍の艦船江上に往来し、旗鼓きこ天をおおうに至る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一中節いつちうぶし師匠ししやうになることはとうとうおそうさんには出来なかつた。お宗さんはあの震災のために家も何も焼かれたとかいふことだつた。のみならず一時は頭の具合ぐあひも妙になつたとかいふことだつた。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
千金の堂陲どうすいに坐せずとのことわざもある事なれば、好んで超邁ちょうまいそうとして、いたずらに吾身の危険を求むるのは単に自己のわざわいなるのみならず、また大いに天意にそむく訳である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一 おそうさん
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「そりゃ、あの時、そうさんが若干いくらか置いて行きなすった事は、行きなすったが、それはもうありゃしないよ。叔父さんのまだ生きて御出おいでの時分から、御前の学資は融通して来たんだから」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)