そう)” の例文
私は嬉しかった。早速此持重説じちょうせつを我物にして了って、之を以て実行にはやる友人等を非難し、そうしてひそかに自ら弁護する料にしていた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
夫人、御安心なさい、あなたにお目にかゝった程の者は、誰かあなたの真面目なそうして勇敢な霊魂たましいを尊敬せぬ者がありましょう乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お前さんは此処ここの勝手を知っていると云うなら、後生ごしょうだから僕のうちまで行って来てれないか。そうして、僕がここに居るから迎いに来てれと……。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
奉「長二郎、此の帳面の通り其の方手間料を受取ったかそうして柳が其の方へ嫁の口入くにゅうをいたしたか何うじゃ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
遊廓の話、茶屋の話、同窓生と一処いっしょになってドシ/″\話をして問答して、そうして私は夫れを又ひやかして
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
其れで会費を納めぬ会員の方が多数であるけれども催促がましい事を無い。そうして会費を納める人も納めぬ人も分け隔て無く其作物さくぶつを批判し添削して遣つて居る。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
そうして婦人おんなひざをついて、のしかゝるやうにして、びんあいから真白な鼻で、お辻の顔のなかば夜具やぐひっかついで膨らんだ前髪の、まゆのかゝり目のふちのやや曇つて見えるのを
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼女はとどまって、そうして忍ぶべく決心した。彼女の苦しいつらい境遇にえようと決心した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「老人夫婦に息子が一人——もっとも息子は美しくてそうして素晴らしく気高くて、それに何んでも此隊商へは拉薩の市から加わった筈だが……兎に角そういう一家族が隊商のうちに居ないかね!」
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると、私は退屈するから、平地へいちに波瀾を起して、すねて、じぶくッて、大泣に泣いて、そうしてお祖母ばあさんに御機嫌を取って貰う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そうして薪の売主は、衆議院議員選挙権を有って居る、新聞位は読んで居る男である。売る葺萱ふきがやの中にくずをつめ込んでたばを多くする位は何でも無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「若旦那が𤢖に……。まあ、そうしてうしたの。」と、お葉はにわかに真面目になった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうして毎級第一番の上席を三ヶ月しめて居れば登級とうきゅうすると云う規則で、会読以外の書なれば、先進生が後進生に講釈もして聞かせ不審もきい至極しごく深切にして兄弟のようにあるけれども
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
外人とそうして看護婦とは、一見物凄く思われるような、非常に厳粛な表情をして、銀の盆の心臓を守り乍ら、室の衝き当たりに出来ているう一つの室の戸を開けて、静に其中へ這入って行った。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
無礼者奴ぶれいものめがズカズカ部屋へ入って来た、そうして雪江さんの笑いが止らないで、ちっとも要領を得ない癖に、訳も分らずに、一緒になってゲラゲラ笑う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そうして葛城が米国へ向け乗船した二年と三月目の明治四十二年の七月六日、横浜出帆の信濃丸で米国に向うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
トムは一昨日吉岡家の門前で、のお杉ばばあに吠え付いた。そうしてその晩に殺された。自分は昨日我家の門前で、同じくお杉婆を突倒つきたおして気絶させた。そうしてその晩に父が行方不明になった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)