そう)” の例文
難渋な小前こまえの者はそのことを言いたて、宿役人へ願いの筋があるととなえて、村じゅうでのそう寄り合いを開始する。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私の家に関する私の記憶は、そうじてこういう風にひなびている。そうしてどこかに薄ら寒いあわれな影を宿している。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
親の代から住みついているという「いも屋のそうさん」もはっきりした記憶がない、——八年まえだったか九年まえだったか、と惣さんは思いだそうとして話す。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この日城攻め合戦剛猛の事にし、そうじて万事大吉なりとあるは、その猪突の勇に因んだものだ。
そうざい料理れうりもごた/\するし、おんもりするところいやだし、あゝ釣堀つりぼり師匠しゝやうところかうぢやアないか。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そう八郎、助太刀を致した」とその若武者はいった。その男は、まぎれもない、同藩の佐原惣八郎であった。甚兵衛は頭を一振り振って、初めて意識の統一を取り返した。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其節は主税之助も屹度きつと請合うけあひ私ども兩人ならびそう右衞門等證人同樣其せきまかり在候所主税之助實子すけ五郎出生の後は先平助遺言ゆゐごんもどり我が子に家督かとくつがせんと種々しゆ/″\惡謀あくぼうかまへ藤五郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうじてかかる場合、たといそれがしが其家譜代の郎党であって、忠義かねて知られたものにせよ、斯様の事を迂闊うかつに云出さば、却って逆に不埒者ふらちものに取って落され、辛き目に逢うは知れた事
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
京大法科の佐々木そう一博士は、蜜柑を食べるのに、人とちがつた食べ方をする。
召されたる御馬大黒おほぐろそう御人数二十七人。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くばり居たりしに當家の用人ばんすけ十郎建部たてべがう右衞門山口そう右衞門の三人は先殿平助の代より勤めことに山口惣右衞門は藤五郎の傅役もりやくにて幼少えうせうより育てあげ己は當年七十五歳になり樂勤らくづとめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『日吉社神道秘密記』に、〈大行事権現、僧形猿面、毘沙門弥行事、猿行事これに同じ、猿田彦大王、天上第一の智禅〉。『厳神鈔』に大行事権現は山王のそう後見たり、一切の行事をなすとづ。
二十五、六日のころには一同は加州侯の周旋で越前の敦賀つるがに移った。そこにある三つの寺へそう人数を割り入れられ、加州方からは朝夕の食事にさかなを添え、昼は香の物、酒も毎日一本ずつは送って来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
願ひ奉つる因ては何なりとも有合の御肴おさかなをさし上候はんと只管ひたすら詫入わびいりければ武士は忽ち顏色をやはらげ是は/\御亭主の挨拶あいさつ却つていたいるそうじて其方そなたの如く理を分て云るれば某し元より事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)