そう)” の例文
平次は仕事にまぎれて、十二そうの榎長者の一件を、忘れるともなく忘れて居りましたが、又思はぬ人の出現で、その印象を新にしたのです。
結婚式を十二そうで(新宿の先の)やったのですって。東京での、よ。そのとき私をぼうとしてすっかり仕度していて、お久さんの発議でやめたのですって。来て貰うのも気の毒と。
「親分も知つて居なさるでせう、十二そうえのき長者——新宿から角筈へかけて、一番大地主で、家には鎌倉の執權しつけんとかの、お墨附を持つて居る」
「十二そうの近所に、楢井ならゐ山左衞門といふ大名主があるが、苗字めうじ帶刀たいたうまで許された家柄いへがらで、主人の山左衞門は三月ばかり前にポツクリ亡くなつた——」
「よし、十二そうまで遠いが、日のあるうちには着くだらう。行つて見ようか、八」