そう)” の例文
風が傷口からふきこむと、いかにも悲しそうな音楽をそうして、この気のどくなまつがみずからいたみをうったえる声のように聞かれた。
目安箱の上書がこうそうして、かえでの密議となり、元京都所司代であった松平輝高てるたかは、召されて将軍家から内々に秘命をうけた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食堂から寝室しんしつおごそかにやっていく時には、元気げんきのいい行進曲マーチそうした。時によっては、二人ふたりおとうとといっしょに行列ぎょうれつをつくった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
その手篤てあつい看護がこうそうしたのか、それとも竹見の友情が天に通じたのか、ハルクはすこし元気を取り戻したようであった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その後あの曲をそうする毎に、人智の及ばぬ異變いへんがあり、お前の父親一色清五郎殿が、嚴重な封をしてこの私に預けたのだ。
今日までの成跡せいせきを以て見ればいまだ失望の箇条もなく、先ずついやしたる財と労とにむくいけの功をばそうしたるものというべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
秋からの努力が多少効果をそうしたので、はげみがついている。なお新年早々お殿様のお目にかかったとき、特別にありがたいお言葉を頂戴した。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかしこの説明せつめいこうそうせなかつた。子供こどもにはむかし寒山かんざん文殊もんじゆであつたのがわからぬとおなじく、いま宮崎みやざきさんがメツシアスであるのがわからなかつた。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
壮二君の子どもらしい思いつきが、ぐうぜんこうそうしたのです。賊が、わなをはずそうともがいているあいだに、四ほうから人々がかけつけました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかるに九九少納言信西せうなごんしんぜいがはからひとして、呪咀じゆその心にやとそうしけるより、そがままにかへされしぞうらみなれ。
兵士へいし軍楽ぐんがくそうしますのはいさましいものでございますが、の時は陰々いん/\としてりまして、くつおともしないやうにお歩行あるきなさる事で、これはどうも歩行あるにくい事で
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
政府はほとんど全国の兵をげ、くわうるに文明精巧せいこう兵器へいきを以てして容易よういにこれを鎮圧ちんあつするを得ず、攻城こうじょう野戦やせんおよそ八箇月、わずかに平定へいていこうそうしたれども
してこの類の病気には信仰がいちじるしく功をそうしたろうけれども、黴菌ばいきんから起こる病いのごときに至っては、宗教が入りんではかえって療治りょうじ邪魔じゃまになることが多い。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
茶番ちやばんをやる水兵すいへいもある、軍樂ぐんがくそうする仲間なかまもある、武村兵曹たけむらへいそう得意とくいに、薩摩琵琶さつまびわ河中島かはなかじま』の一段いちだんかたつた。このをとこに、此樣こんかくげいがあらうとは今日けふまで氣付きづかなかつた。
そして御殿ごてんの一しつに、うつくしいおひめさまがんでいられて、毎日まいにちうたをうたい、いい音色ねいろをたてて音楽おんがくそうせられ、そして、まどぎわによりかかっては、とおくのそらをながめられて
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とつぎには安場の作戦が奇功をそうし、スクイズプレーでまた一点を取った。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
方々でいろいろな音楽もそうされました。晴れた空には月が澄みきっていました。燈火あかりは一切ともすことが許されませんでした。お城全体が、月の光りと音楽と踊りといいにおいとでき返るようでした。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
がくそうしはじむる。男女なんにょりあうて舞踏をどる。
信雄のお人好しが功をそうするやいなと、危うんでいたことだったが、かくも現実主義に、こうも迅速に、それまで態度を保留していた勝入入道が
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なさけないことだなあ」とマチアがため息をついた。「このけものさえ音楽がきなら、どんなにもどうどうと、凱旋がいせんの曲をそうしながらはいって行けるのだけれど」
一日中で一番陽氣のさかんな時、例へば正うまこくと言つた時、四方を開け放ち、皆樣を銘々のお部屋に入れ、火の元の用心までも嚴重に見張つて、心靜かにそうしたなら
堀口生は先生から一本まいったが、黒板の広告は充分に効果をそうした。以来正三君に
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かえってわれわれの判断が誤りやすい、すなわちわれわれの忠告はこうそうしない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そのきょに乗じた諸戸の思い切ったやり口が、見事にこうそうした訳である。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、豪奢ごうしゃをこらした城内の一室へ迎え入れたのです。多くの、後宮の女には、粉黛ふんたいをさせ、珠をかざらせ、がくそうし、ばんには、山海の珍味を盛って。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁度その時は、通り過ぎるから自動車もなかったので、彼女は当然柾木の車に走り寄った。いうまでもなく、柾木の偽瞞ぎまんこうそうして、彼女はその車を、辻待ちタクシーと思い込んでいたのである。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
われわれの訓戒が功をそうすることはおぼつかなく思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
剣持けんもち役の南遠江守をうしろに、八ようの車から降りて入場する大納言尊氏、また、副将軍直義のすがたに、人々は一せいに乱声らんじょう(ときの声に合せて急テンポにがくそうす)
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この出来事において、明智の方にはむべき油断があった訳ではない。ただ、賊が、警察よりも、福田氏よりも、明智小五郎よりも、十歩も二十歩も先んじて、きょいて奇功きこうそうしたに過ぎないのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
諫言はたびたびそうしてあるがお用いのふうもないのだ。といってこの趨勢すうせいを坐視してはいられない。
ひとたび旗を中原ちゅうげんに立ててからの彼の父信長という人は、いずこに戦っても、一戦果せば直ちに上洛じょうらくして禁門に戦果をそうし、国のよろこびあれば歓びを闕下けっか伏奏ふくそう
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足利もさんざんな敗相はいそうだったが、こう師直もろなおの迂回作戦と、細川顕氏あきうじの突撃が功をそうしてから、顕家の麾下きかは分断され、みちのく以来の家士百八人も個々討死してしまい
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正成がおもてをおかして、みかどへ直々じきじきに強烈な諫言をそうしたのは、つい二月ごろのことである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、鐘巻一火かねまきいっかたまへ、凱歌がいかそうしてひきあげてきたはいいが、それほどまで争奪そうだつ焦点しょうてんとなっていた、かんじんな咲耶子その者のすがたが、いつのまにかうしなわれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道誉は時々、その騎馬を、輦輿れんよの横へ並べて来ては、馬上のまま輿の内へそうしていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義貞は衛門まで進んで出陣のそうをよそながらお告げした。と、その門内からだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、廉子は後日、いたましげにそうしていたが、じつは追手にせまられた混乱中、その廉子が船上から波間へ突きおとしたものであった一瞬を、運悪く行房だけがふと見ていたのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄蕃允の場合についていえば、まだ戦わぬ序において、彼は、敵と対峙たいじの「相」の期間に、秀吉の「マギレ」をつかみ、よくその「隙」をいて中入りの奇功をそうしたものといえる。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……がしかし、朝廷へそうするにしても、恩賜の馬まで失ったとは申し上げ難い。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あきらかに功をそうしているものらしく……城下に来ておる徳川方の部隊と、北畠家の武者たちとは、互いに、冷たい眼で、行動を監視し合い、城中の士は同じ城内にありながら、何となく
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かしこみて そうし仰ぐ
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、そうした。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)