しづか)” の例文
新字:
昨夜ゆうべもすがらしづかねぶりて、今朝けされよりいちはなけにさまし、かほあらかみでつけて着物きものもみづからりしを取出とりいだ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
片足かたあしは、みづ落口おちくちからめて、あしのそよぐがごとく、片足かたあしさぎねむつたやうにえる。……せきかみみづ一際ひときはあをんでしづかである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しづかさんのみよりのものでもあらうか、さうなら君は御無事で奥州秀衡の館に昔の様にして居られますと教へてやらうといふ歌だが
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
そよとだに風なき夏の曉に、遠く望めば只〻朝紅あさやけとも見ゆべかんめり。かぜしづかなるに、六波羅わたり斯かる大火を見るこそいぶかしけれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ランプもけぬ卯平うへいせま小屋こや空氣くうきくろ悄然ひつそりとしてんだやうである。勘次かんじあししてもどつては出來できるだけしづかぢる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
書斎へ来て新聞を見ようとして、自身の事の出て居るのに気が附いた鏡子は、三四種の新聞をうしろしづかの机の上へそのまゝ載せた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
げ是々皆なのしう先々まあ/\しづかにせられよ此れ處か未々まだ/\まけがある是を惣内殿貴方あなた覺えが有うなと投出なげいだ姫路ひめぢ革の三徳を見て惣内はヤア是はと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、ばたばた近寄ちかよつて夏繪なつゑ敏樹としきしづかにさせながら、二人ふたり兩方りやうはうからいだきよせたままはち動作どうさながめつゞけてゐた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わたくしだまつて點頭うなづくと夫人ふじんしづか立上たちあがり『皆樣みなさまのおみゝけがほどではありませんが。』とともなはれてピアノだいうへのぼつた。
すでぼつした。イワン、デミトリチはかほまくらうづめて寐臺ねだいうへよこになつてゐる。中風患者ちゆうぶくわんじやなにかなしさうにしづかきながら、くちびるうごかしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二人ふたりはそれでだまつた。たゞじつそと樣子やうすうかゞつてゐた。けれども世間せけんしんしづかであつた。いつまでみゝそばだてゝゐても、ふたゝものちて氣色けしきはなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼はいかにもしづかさうに轉ばされてゐる赤兒を振り返つて、同情を求める樣に人々の顏を見廻した。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
どんよりくもつてり/\小雨こさめさへ天氣てんきではあるが、かぜまつたいので、相摸灣さがみわんの波しづか太平洋たいへいやう煙波えんぱゆめのやうである。噴煙ふんえんこそえないが大島おほしまかげ朦朧もうろうかんでる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
〔譯〕心しづかにして、まさに能く白日を知る。眼明かにして、始めて青天を識りすと。此れ程伯氏ていはくしの句なり。青天白日は、常に我に在り。宜しく之を座右ざいうかゝげて、以て警戒けいかいと爲すべし。
「おねがひだから、しづかにしてゐてくんな」とたのみました。しづかになつたやうでした。すると、こんどはあぶやつぎん手槍てやりでちくりちくりとところきらはず、肥太こえふとつたうしからだしはじめました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
あいちやんはおどろきのあまり、いかさけび、其等それらはらけやうとして、どてうへに、ねえさんのひざまくらたのにがつきました、ねえさんはしづかに、かほはらつてりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其のうちに娘はなまめかしいきぬてながら、しづかに私のはたを通ツて行ツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あしたの琴はしづかなり
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
四方よも波風なみかぜしづかにして、世はさかりとこそは見ゆれども、入道相國が多年の非道によりて、天下の望みすでに離れ、敗亡の機はや熟してぞ見えし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
銀鞍ぎんあん少年せうねん玉駕ぎよくが佳姫かき、ともに恍惚くわうこつとしてたけなはなるとき陽炎かげろふとばりしづかなるうちに、木蓮もくれんはなひとひとみな乳房ちゝごとこひふくむ。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うまといふやつはあの身體からださけの二はいくちいれてやるとたちまちにどろんとして駻馬かんばでもしづかる、博勞ばくらう以前いぜんはさうしてわるうまんだものである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あげ泣出なきいだすゆゑ越前守殿は言葉ことばしづかにコリヤ/\三吉最少もつと前へ出よ何も怕事こはいことはなしなくな/\サア/\好物いゝものを遣はさうと饅頭まんぢうを紙にのせて與へられ是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鏡子かねこつれは文榮堂書肆の主人の畑尾はたをと、鏡子の良人をつとしづかの甥で、鏡子よりは五つ六つ年下の荒木英也ひでやと云ふ文学士とである。畑尾は何かを聞いた英也に
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しばらしづか聽耳きゝみゝててゐたぼくはさうつて、友人いうじんはうかへつた。いつのにかかれひざうへには丸顏まるがほをんな牡丹ぼたんのやうなわらひをふくみながらこしかけてゐる。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
親友しんいう送出おくりだして、アンドレイ、エヒミチはまた讀書どくしよはじめるのであつた。よるしづかなんおとぬ。ときとゞまつて院長ゐんちやうとも書物しよもつうへ途絶とだえてしまつたかのやう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
くらくらんで附添つきそひの女子をなごとも郡内ぐんない蒲團ふとんうへいだげてさするにはや正躰しやうたいゆめるやうなり、あにといへるはしづか膝行いざりりてさしのぞくに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其上そのうへ御米およねわかをんな有勝ありがち嬌羞けうしうといふものを、初對面しよたいめん宗助そうすけむかつて、あまりおほあらはさなかつた。たゞ普通ふつう人間にんげんしづかにして言葉ことばすくなにめただけえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
せめての腹愈はらいやしには、わが鐵拳てつけんをもつてかれかしら引導いんどうわたしてれんと、驅出かけだたもと夫人ふじんしづかとゞめた。
その場所ばしよまつたくぼくつたのである、後背うしろがけからは雜木ざふきえだかさかさねておほひかゝり、まへかなひろよどみしづかうづまいながれてる。足場あしばはわざ/\つくつたやうおもはれるほど具合ぐあひい。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しづかにうごく星くづを
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
けむりしづかに、ゆる火先ほさき宿やどさぬ。が、南天なんてんこぼれたやうに、ちら/\とそこうつるのは、くもあかねが、峰裏みねうら夕日ゆふひかげげたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やしろもりそとしろ月夜つきよである。勘次かんじ村落外むらはづれのいへかへつたとき踊子をどりこみな自分じぶんむかところおもむいて三にんのみがしづかにはにぽつさりとつたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とき丁度ちやうど時過じすぎ。いつもなら院長ゐんちやう自分じぶんへやからへやへとあるいてゐると、ダリユシカが、麥酒ビール旦那樣だんなさま如何いかゞですか、と刻限こくげん戸外こぐわいしづか晴渡はれわたつた天氣てんきである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
殿とのだになくばこゝろしづかかなるべきか、いな、かゝることおもふまじ、呪咀じゆそことばとなりてむべきものを。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もよほしけるが三日もくれはや四日となりにける此日は早天さうてんより長閑のどかにて四方晴渡はれわたり海上青疊あをだたみを敷たる如くあをめきわたりければ吉兵衞も船頭せんどう船表ふなおもてへ出て四方をながなみしづかなる有樣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
吾等われらこれより一定いつてい職務しよくむがあるので、暫時しばらく失敬しつけい君等きみらのちしづか休息きうそくたまへ、わたくしは八すぎふたゝかへつてて、晩餐ばんさんをばともいたしませう。』とのこして何處いづくともなく立去たちさつた。
けれども座敷ざしきがつて、おなところすわらせられて、垣根かきね沿ふたちひさなうめると、此前このまへときことあきらかにおもされた。其日そのひ座敷ざしきほかは、しんとしてしづかであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はちえず三にん存在そんざい警戒けいかいしながらも、一しんに、敏活びんくわつはたらいた。あたまつち突進とつしんする。あしさかんつちをはねのける。それはしづかしたあかるいあき日差ひざしなかなみだあつくなるやうな努力どりよくえた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
流れゆく水しづかにて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まだ暮果くれはてずあかるいのに、れつゝ、ちらちらとひともれた電燈でんとうは、つばめさかなのやうにながして、しづか谿川たにがはつた。ながれほそい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さからつてもならぬからとて義母はゝづからあたへられし皮蒲團かはぶとんもらひて、まくらもとをすことほざかり、かぜにしてはしらきは默然もくねんとしてちゝむかひ、しづかひとふたことばまじへぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それにくともなく耳をかたむけながら、青木さんはしづか煙草たばこをふかし、おくさんははりを休めたまま、たがひにうつとりと今までの空さうあとつてゐたが、その空さうはなぜかだんだんにかげうすめてつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しづかこゑで、なぐさめるやうにまどからつたが、一言ひとことからつめたくなりさうに、めうみて、唯吉たゞきちさびしくいた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……はなし騷々さう/″\しい。……しづかにしよう。それでなくてさへのぼせて不可いけない。あゝ、しかし陰氣いんきると滅入めいる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なだらかにながれて、うすいけれどもたひらつゝむと、ぬまみづしづかつて、そして、すこ薄暗うすぐらかげわたりました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
屋號やがう樓稱ろうしようかは。)と、(まつ。)とあゐに、紺染こんぞめ暖簾のれんしづかに(かならず。)とかたちのやうに、むすんでだらりとげたかげにも、のぞ島田髷しまだえなんだ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みづつたとはこと停車場ステエシヨンわりしづかで、しつとりと構内こうない一面いちめんれてる。赤帽君あかばうくん荷物にもつたのんで、ひろところをずらりと見渡みわたしたが、約束やくそく同伴つれはまだない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女持をんなもち銀煙管ぎんぎせるで、時々とき/″\にはし、そらくもをさしなどして、なにはなしながら、しづか煙草たばこくゆらす。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
金鍔きんつば二錢にひやく四個よんこあつた。四海しかいなみしづかにしてくるまうへ花見はなみのつもり。いやうもはなしにならぬ。が意氣いきもつてして少々せう/\工面くめんのいゝ連中れんぢうたれ自動車じどうしや……ゑんタクでもい。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
恍惚うつとりとものおもはしげなかほをしてをなよ/\とわすれたやうに、しづかに、絲車いとぐるま𢌞まはしてました。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)