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時過
時は
丁度四
時過ぎ。
毎もなら
院長は
自分の
室から
室へと
歩いてゐると、ダリユシカが、
麥酒は
旦那樣如何ですか、と
問ふ
刻限。
戸外は
靜に
晴渡つた
天氣である。
九歳十歳ばかりの
其の
小兒は、
雪下駄、
竹草履、それは
雪の
凍てた
時、こんな
晩には、
柄にもない
高足駄さへ
穿いて
居たのに、
轉びもしないで、
然も
遊びに
更けた
正月の
夜の十二
時過ぎなど
墓原へ
出たのは十二
時過、それから、あゝして、あゝして、と
此處まで
來た
間のことを
心に
繰返して、
大分の
時間が
經つたから。
二人は
何時もの
通り十
時過床に
入つたが、
夫の
眼がまだ
覺めてゐる
頃を
見計らつて、
御米は
宗助の
方を
向いて
話しかけた。