主人しゆじん)” の例文
それから數日間すうじつかん主人しゆじんうち姿すがたせなかつた。内儀かみさんは傭人やとひにん惡戯いたづらいてむしあはれになつてまたこちらから仕事しごと吩咐いひつけてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
隨分ずゐぶん厭味いやみ出來できあがつて、いゝ骨頂こつちやうやつではないか、れは親方おやかた息子むすこだけれど彼奴あいつばかりはうしても主人しゆじんとはおもはれない
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あのとき愚老ぐらう不審ふしんおもひました。岸和田藩きしわだはんのお武士さむらひ夜分やぶん内々ない/\えまして、主人しゆじん美濃守みののかみ急病きふびやうなやんでゐるによつててくれとのおはなし
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
じつくもつかむやうなはなしだが、まんが一もと旅亭やどや主人しゆじんんでいてると、果然くわぜん! 主人しゆじんわたくしとひみなまではせず、ポンと禿頭はげあたまたゝいて
じつおやの如くうやまひ給ひしが其後は將監々々と御呼およびなさるゝゆゑ加納將監も是よりして徳太郎君を主人しゆじんの如くにうやまひかしづき養育やういくなし奉つりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
でね、これくと、ひとい、やさしい、哥太寛こたいくわん御新姐ごしんぞが、おゝ、とつて、そでひらく……主人しゆじんもはた、とつて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平常いつもやういぬがゐるとかつたんですがね。生憎あいにく病氣びやうきなので、四五日前にちまへ病院びやうゐんれて仕舞しまつたもんですから」と主人しゆじん殘念ざんねんがつた。宗助そうすけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところが家來けらいたちは主人しゆじんおろかなことをそしり、たまりにくふりをして、めい/\の勝手かつてほうかけたり、自分じぶんいへこもつたりしてゐました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
もしこの家扶かふ下座敷したざしきにゐたまゝであつたならば無論むろん壓死あつししたであらうが、主人しゆじんおもひの徳行とくこうのために主人夫妻しゆじんふうふとも無難ぶなんすくされたのであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
(三)だい二の横穴よこあな數人すうにん合葬がつそうしたるは主人しゆじんおよ殉死者じゆんししやれたりと解釋かいしやくせず。身分みぶん格別かくべつ隔絶かくぜつなき武人ぶじんの、同日どうじつ戰死者せんししや合葬がつそうしたるもの考證かうしようす。
自分じぶん主人しゆじん慾張よくばりで、ろくなものを自分じぶんにも自分じぶんどもにもべさせません、よく王樣わうさま御威嚴ごゐげんをもつてしかつていたゞきたい。と、それからつぎには……
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
天下てんかたからといふものはすべてこれを愛惜あいせきするものにあたへるのが當然たうぜんじや、此石このいしみづかく其主人しゆじんえらんだので拙者せつしやよろこばしくおもふ、然し此石の出やうがすこはやすぎる
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
伯孫はくそんはゆうべの應神天皇おうじんてんのう御陵ごりようところつてましたら、自分じぶんつてゐたうまは、御陵ごりようまへにある埴輪はにわ土馬つちうまあひだにをつて、主人しゆじんをまつてゐたので、またびっくりしましたが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
へえ今日こんにちは。先「なんだ、人が書物かきものをしてる所へどうもバタ/″\けちやア困るぢやアないか。小「へえ、うち主人しゆじんが先生へこれげてれろとまうしましたからつてまゐりました。 ...
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
前年ぜんねんすゑわたしたづねて来たのが、神田かんだ南乗物町みなみのりものちやう吉岡書籍店よしをかしよじやくてん主人しゆじん理学士りがくし吉岡哲太郎よしをかてつたらうくんです、わたし文壇ぶんだんに立つにいては、前後ぜんご三人さんにん紹介者せうかいしやわづらはしたので、の第一が吉岡君よしをかくん
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ニャン君 ご主人しゆじんの おへやで仕事しごとだ 仕事だ 早くきて手つだつておくれよ
かれ容貌ようばうはぎす/\して、何處どこ百姓染ひやくしやうじみて、※鬚あごひげから、ベツそりしたかみ、ぎごちない不態ぶざま恰好かつかうは、宛然まるで大食たいしよくの、呑※のみぬけの、頑固ぐわんこ街道端かいだうばた料理屋れうりやなんどの主人しゆじんのやうで、素氣無そつけなかほには青筋あをすぢあらは
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
時々とき/″\、もっとよいくらしがしたいといふ氣持きもちがおこらなくもありません。それはおほくは家族かぞくのものたちが、主人しゆじんうつたへる場合ばあひあるひはさういふ心持こゝろもちをかほあらはしてゐる場合ばあひおこつて氣持きもちなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
勘次かんじには主人しゆじんうち愉快ゆくわいはたらくことが出來できた。かれ體躯からだむし矮小こつぶであるが、そのきりつとしまつた筋肉きんにく段々だん/″\仕事しごと上手じやうずにした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これからまたれいとほ出掛でかけなければなりませんから」とげると、主人しゆじんはじめていたやうに、いそがしいところめた失禮しつれいしやした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其方儀主人しゆじんつま何程なにほど申付候共又七も主人のつき致方いたしかた有之これあるべき處主人又七にきずつけあまつさへ不義ふぎの申かけを致さんとせし段不屆至極ふとゞきしごくに付死罪しざいつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むかふの主人しゆじんもおまへ姿すがためてるさうにいたぞと、ろくでもなきすりごと懶怠者なまけもの懶怠者なまけものだ、れは懶怠者なまけもの活地いくぢなしだとだいそべつて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほか布袋屋ほていやふ——いまもあらう——呉服屋ごふくやがあつたが、濱野屋はまのやはう主人しゆじんが、でつぷりとふとつて、莞爾々々にこ/\してて、布袋ほてい呼稱よびながあつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
春枝夫人はるえふじんにすぐれて慈愛じひめるひと日出雄少年ひでをせうねん彼等かれらあひだ此上こよなくめでおもんせられてつたので、たれとて袂別わかれをしまぬものはない、しか主人しゆじん濱島はまじま東洋とうやう豪傑がうけつふう
馬鹿ばかだな、苟且かりにも主人しゆじんが呼んだら、なに御用ごようでもりますかと手を突いてふもんだ、チヨツ(舌打したうち)大きな体躯なりで、きたねえ手のあかを手のひらでぐる/\んで出せばくらゐ手柄てがらになる
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
滅多めつたわらつたこともない但馬守たじまのかみ今日けふこと機嫌きげんのわるい主人しゆじんが、にツこりとかほくづしたのを、侍女じぢよこつな不思議ふしぎさうに見上みあげて、『かしこまりました。』と、うや/\しく一れいしてらうとした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
從者じうしや主人しゆじんおなやうなのだ。いよ/\あやしい、今度こんどまたむかつて。
主人しゆじん挨拶あいさつかく明日あすのことにするからといつただけだといふ返辭へんじである。勘次かんじはげつそりとしてうちかへると蒲團ふとんかぶつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それをしことでした」とこたへた。すると主人しゆじんそのいぬブリードやら血統けつとうやら、時々とき/″\かりれてことや、色々いろ/\ことはなはじめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
正午頃まひるごろだいホテル、秋冷あきひやゝかにしんとしたなかへ、騷々さう/″\しさ。病人びやうにん主人しゆじん、フトまどからしたのぞくと、きふまゆひそめて
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むにめたきいた引裾ひきすそながくゑんがはにでゝ、用心口ようじんぐちよりかほさしいだし、たまよ、たまよ、と二タこゑばかりんで、こひくるひてあくがるゝ主人しゆじんこゑ聞分きくわけぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其方儀主人しゆじん庄三郎養子又七つま熊と密通致し其上そのうへとほ油町あぶらちやう伊勢屋三郎兵衞方にて夜盜やたう相働あひはたらき金五百兩ぬすみ取り候段重々ぢゆう/\不屆ふとゞきつき町中まちぢう引廻ひきまはしの上淺草あさくさに於て獄門ごくもん申付くる
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくし大笑おほわらひにわらつてやらうとかんがへたが、てよ、たとへ迷信めいしんでも、その主人しゆじんうへおもふことくまでふかく、かくも眞面目まじめものを、無下むげ嘲笑けなすでもあるまいと氣付きづいたので
それは瓢簟山ひやうたんやま地形ちけいである。此地形このちけい主墳しゆふん周圍しうゐ陪塚ばいづかつくるをゆるさぬ。すなは主人しゆじんほうむつたつかちかくに、殉死者じゆんししやつかつくるだけの餘地よちいので、むを山麓さんろく横穴よこあなつくつたといふのせつである。
また退治たいぢるのを、「たのもしいわ、わたしたちの主人しゆじんにはそれが出來できないの。」と感状かんじやうあづかつた得意とくいさに、にのつて
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
料理人の方では最上の料理をはして、しかられたものだから、其次そのつぎからは二流もしくは三流の料理を主人しゆじんにあてがつて、始終められたさうだ。此料理人を見給へ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こゝろ變化へんくわするものなり、雪三せつざう徃昔そのかみ心裏しんりうかゞはゞ、糸子いとこたいする觀念くわんねん潔白けつぱくなること、其名そのなゆきはものかは、主人しゆじん大事だいじ筋道すぢみちふりむくかたもかりしもの
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
之等これらたん弄古的ろうこてき採集家さいしふかなるのみ、珍世界ちんせかい主人しゆじんたるのみ。
黒人くろんぼ給仕きふじみちびかれて、燈籠とうろうかげあらはれたつけね——主人しゆじんよう商賣あきなひものをはこせつは、盜賊どろばう用心ようじんきつつ……穗長ほながやりをねえ、こんな場所ばしよへはつけないから
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
廿歳はたちといふもいまなるを、さかりすぎてははな甲斐かひなし、適當てきたう聟君むこぎみおむかへ申したきものと、一專心せんしんしうおもふほかなにもし、主人しゆじん大事だいじこゝろらべて世上せじやうひと浮薄ふはく浮佻ふてう
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つてからも三四だい主人しゆじんかはつたのであつた。
眞個まつたくことばちがはないもんですから、主人しゆじんも、きやくも、たゞして、のいはれをかうとつたの。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けとおつしやれば起證きせうでも誓紙せいしでもおこの次第しだいさしあげませう、女夫めをとやくそくなどとつても此方こちやぶるよりは先方樣さきさま性根せうねなし、主人しゆじんもちなら主人しゆじんこわおやもちならおやひなり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
備中びつちう一時あるとき越前ゑちぜん領土巡検りやうどじゆんけんやくを、主人しゆじん義景よしかげよりうけたまはり、供方ともかた二十にんばかりをれて、領分りやうぶんたみ状態じやうたいさつせんため、だゝる越前ゑちぜん大川おほかは足羽川あすはがはのほとりにかゝる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たみ此家このやに十ねんあまり奉公ほうこうして主人しゆじんといへどいまかはらず、なにとぞ此人このひと立派りつぱあげてれも世間せけんほこりたきねがひより、やきもきとむほど何心なにごヽろなきおそのていのもどかしく
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうじて主人しゆじんうちにあるときと、そとでしのちと、家内かない有樣ありさまは、大抵たいてい天地てんちちがひあるが家並いへなみさふらふなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その主人しゆじんに一ねん馴染なじみりの奉公人ほうこうにん少々せう/\無心むしんかぬとは申されまじ、此月末このつきずゑかきかへをきつきて、をどりの一りやう此處こゝはらへばまたつき延期のべにはなる、くいはゞよくたれど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
白井しらゐさんの家族かぞく四人よにん、——主人しゆじんはまだけないいへまもつてこゝにはみえない——わたしたちと、……濱野はまのさんは八千代やちよさんが折紙をりがみをつけた、いゝをとこださうだが、仕方しかたがない。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
じつなんです。わたし主人しゆじんひますのが、身分柄みぶんがらにも似合にあはない、せゝツこましいひとでしてね。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あと四にん本道ほんだう休茶屋やすみちややくと、和井内わゐない主人しゆじん股立もゝだちいて、わかれをげたのであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)