あを)” の例文
御酒ごしゆをめしあがつたからとてこゝろよくくおひになるのではなく、いつもあをざめたかほあそばして、何時いつ額際ひたひぎはあをすぢあらはれてりました。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
繩目なはめまゝにて跑踞かしこまる同人妻せん與惣次もつゝしん平伏へいふくなし何れも遠國片田舍の者始めて天下の決斷所けつだんしよへ召出されあをめの大砂利おほじやり敷詰しきつめ雨覆あめおひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
片足かたあしは、みづ落口おちくちからめて、あしのそよぐがごとく、片足かたあしさぎねむつたやうにえる。……せきかみみづ一際ひときはあをんでしづかである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かききなお百姓ひやくしやう子供こどもあをかきましたが、つてべてたびしぶさうなかほをして、べかけのをてゝしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しばらくしてあをけむり滿ちたいへうちにはしんらぬランプがるされて、いたには一どうぞろつと胡坐あぐらいてまるかたちづくられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ペアレットはストロムボリにてたまたとしようしてゐる。そのおほいさは直徑ちよつけい一米程いちめーとるほどであつてあをひかつたものであつたといふ。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
つまあをざめた顔色かほいろやうやはなのためにやはらぎ出した。しかし、やがて、秋風あきかぜが立ち出した。はな々はを落す前に、そのはならすであらう。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
ふゆ何事なにごともなく北風きたかぜさむくにつた。やまうへあきらかにしたまだらゆき次第しだいちて、あとからあをいろ一度いちどいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
初鮏は光り銀のごとくにしてすこしあをみあり、にくの色べにをぬりたるがごとし。仲冬の頃にいたればまだらさびいで、にくくれなうすし。あぢもやゝおとれり。
知人しりびとひでもすると、あをくなり、あかくなりして、那麼あんな弱者共よわいものどもころすなどと、是程これほどにくむべき罪惡ざいあくいなど、つてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二人ふたり少年せうねんとまつたいへは、隣村りんそんにもだたる豪家がうかであつた。もんのわきにはおほきなひいらぎが、あをそらにそヽりたつてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
あいちやんは爪先つまさき立上たちあがり、きのこふちのこくまなくうちはしなくもそのたゞちにおほきなあを芋蟲いもむし出合であひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
村端むらはづれの溝にせりの葉一片ひとつあをんではゐないが、晴れた空はそことなく霞んで、雪消ゆきげの路の泥濘ぬかるみの処々乾きかゝつた上を、春めいた風が薄ら温かく吹いてゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひらけたる所は月光げつくわうみづの如く流れ、樹下じゆか月光げつくわうあをき雨の如くに漏りぬ。へして、木蔭をぐるに、灯火ともしびのかげれて、人の夜涼やれうかたるあり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
北野きたのはづれると、麥畑むぎばたけあをなかに、はな黄色きいろいのと、蓮華草れんげさうはなあかいのとが、野面のづら三色みいろけにしてうつくしさははれなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
由三はうるさゝうに謂ツて、そとを見る。あをい空、輝く日光にツくわう……其の明い、静な日和ひよりを見ると、由三は何がなし其の身が幽囚でもされてゐるやうな感じがした。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
〔譯〕毀譽きよ得喪とくさうは、しんに是れ人生の雲霧うんむ、人をして昏迷こんめいせしむ。此の雲霧を一さうせば、則ちてんあをしろし。
平生へいぜい田畑のあを々した気色ばかながめて居るものが折々にぎやかな都へ出ることですから見るものが珍らしく、小さな魂はみんな一ツへ集つた心地がして居りました。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
廣庭ひろにはむいかまくちからあをけむ細々ほそ/″\立騰たちのぼつて軒先のきさきかすめ、ボツ/\あめ其中そのなかすかしてちてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それからまつのように一年中いちねんじゆうかはらず青々あを/\しげつてゐるのがあるかとおもふと、さくらのようにはるからなつにかけてはあをしげつてゐるが、あきすゞしいかぜきはじめると
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつ以來いらい數日間すうにちかんは、あをそらと、あをなみほかなに一つもながめたことのない吾等われらが、不意ふいこのしま見出みいだしたときうれしさ、つばさあらばんでもきたき心地こゝち、けれどかなしや
そして、いままでその背景はいけいをなしてゐたそらは、そのあをさは、刻々こく/\ひかりうみしつゝあつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
むかし管玉くだたまのことをたかだまといつたのですが、それは竹玉たけだまといふ意味いみであつて、このあを碧玉へきぎよくもちひたのは、ちょうど青竹あをだけつて使つかつたのをまねたからだといはれてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ああ、すべてちからなし。——さらにさらにいたましきはかかるあを薄暮くれがたはげしき官能くわんのう刺戟しげき
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
十本じつぽんばかりのあをいはんのきの木立こだちうへに、すこあをざめてぎらぎらひかつてかかりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
チッバ あをさいどの、最初さいしょ同伴つれだって足下おぬしぢゃ、冥土あのよくも一しょにおきゃれ。
文久錢ぶんきうせんともふべきおあしんだのです、恰度てうどわたくし其節そのせつ其塲そのばりましたが、なに心得こゝろゑませんからたゞあわてるばかり、なに振舞ふるまいのあツたときですから、大勢たいぜいひとりましたが、いづれもあをくなり
窓際まどぎは紫檀しだんたくはさんでこしおろし、おたがひつかがほでぼんやり煙草たばこをふかしてゐると、をんな型通かたどほ瓜子クワスワツアはこんでくる。一人ひとり丸顏まるがほ一人ひとり瓜實顏うりさねがほそれ口紅くちべにあかく、耳環みゝわ翡翠ひすゐあをい。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そして自分じぶん部屋へやはひると、ふるびたあをいビロードの椅子いすこしをおろして、そのひざをもんだり、いたさをこらへてすこしでもげやうとしたり、または罨法あんはふしてそつとのばしたりなどした。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
けふもまたしづかにむと夏山なつやまあをきがなかに入りつつぞ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
夢見ゆめみごこちの流盻ながしめや、かねひゞきあをびれに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ずやへさきにあをみね
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
甲羅かうらにはぢけるあをかき
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
あをかつたよう
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
兎角とかく一押いちおし、と何處どこまでもついてくと、えんなのが莞爾につこりして、馭者ぎよしやにはらさず、眞白まつしろあを袖口そでくち、ひらりとまねいて莞爾につこりした。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのたびに、榎木えのきと一しよになつて、パラ/\パラ/\ちてましたが、どれもこれも、まだあをくてべられないのばかりでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さうするとむきつたあとまめ陸穗をかぼかつしたくちつめたいみづやういきほひづいて、四五にちうちあをもつはたけつち寸隙すんげきもなくおほはれる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
せよと言ひながら腰の一刀引拔ひきぬきつゝ身構みがまへなせばわるものどもは打笑ひ何の小癪こしやくあをさい息杖いきづゑとりのべ打てかゝるを此方はさわがず切拂ひ又打込を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
水中すゐちゆうよりあをき火閃々ひら/\ともえあがりければ、こは亡者まうじや陰火いんくわならんと目をとぢてかねうちならし、しばらく念仏して目をひらきしに、橋の上二けんばかりへだて
あをみづうへには、三十石船さんじつこくぶねがゆつたりとうかんで、れた冬空ふゆぞらよわ日光につくわうを、ともからみよしへいツぱいにけてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
室内しつないには螺旋ねぢゆかめられた寐臺ねだい數脚すうきやく其上そのうへにはあを病院服びやうゐんふくて、昔風むかしふう頭巾づきんかぶつてゐる患者等くわんじやらすわつたり、たりして、これみんな瘋癲患者ふうてんくわんじやなのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうなると、今迄は気がかなかつたが、じつに見るに堪えない程醜くいものである。毛が不揃むらびて、あをすぢ所々ところ/″\はびこつて、如何にも不思議な動物である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たい容顏きりようほうなれども、いかにもいかにもの田舍風いなかふう午房縞ごぼうじま綿入わたいれにろんなく白木綿しろもめんおびあを毛布けつとひざしたに、まへこゞみにりて兩手りようてかしらをしかとおさへし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
火山かざん噴出物ふんしゆつぶつ固體こたいほかおほくの氣體きたいがある。水蒸氣すいじようき勿論もちろん炭酸瓦斯たんさんがす水素すいそ鹽素えんそ硫黄いおうからなる各種かくしゆ瓦斯がすがあり、あるものはえてあをひかりしたともいはれてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
しかこのは、無論むろん空腹くうふくまゝれて、ゆめも、始終しじう食物しよくもつことゆめみるといふ次第しだい翌日よくじつになるとくるしさはまた一倍いちばい少年せうねん二人ふたりいろあをざめて、かほ見合みあはしてるばかり
そらあをかつた。それはきつ風雪ふうせつれた翌朝よくてうがいつもさうであるやうに、なにぬぐはれてきよあをかつた。混沌こんとんとしてくるつたゆきのあとのはれ空位そらぐらひまたなくうるはしいものはない。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
太陽たいやうが、ちやうど一本いつぽんのはんのきのいたゞきにかかつてゐましたので、そのこずゑはあやしくあをくひかり、まるで鹿しかむれおろしてぢつとつてゐるあをいいきもののやうにおもはれました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
鳥屋の店先であをぶくれの若者が、パタ/\あがいてゐる鷄をつかんで首をおツぺしよるやうに引ンねぢツてゐることや、肉屋の店に皮を剥がれたまゝの豚がかぎに吊されて逆さになツてゐることや
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
みきあをくつる/\した、おほきいあをぎりの若葉わかば黄色きいろがかつた緑色みどりいろです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
黒髪くろかみのかげの根付ねづけたまは、そらへとんでいつてはあをひかつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)